今回は生理学的な観点から持久力について考えます。
そんなに細かい内容までは触れませんが、さわりだけでも知っているとだいぶ違いますので。

まず、呼吸について嫌気呼吸と好気呼吸の説明からしましょう。
通常人がエネルギーを生み出すためには、ATP‘(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)とP(リン酸)に分解する必要があります。

つまり、ATPがエネルギー生産の源となるわけですね。更にそのATPを生産するために、グルコース(ブドウ糖)や脂質が利用されます。ATPを生産する仕組みは非常に大まかに分けると2つあり、酸素を用いない仕組みを嫌気呼吸、酸素を用いる仕組みを好気呼吸と呼びます。
詳しい化学式などについて知りたい方は専門書をあたるか、ウェブ上でも情報がありますので各自で調べてください。
このエネルギーの生産の仕組みについて知る事が、持久力を考えるうえで非常に役に立ちます。
それぞれについて更に解説します。

(1)嫌気呼吸について
嫌気呼吸によるATP生産は、一般的に無酸素運動などと呼ばれる運動で優位になります。また、嫌気呼吸によるATP生産は、更に二つに分ける事が出来ます。
一つはクレアチンリン酸を使用してATPを生産するATP-CP系という仕組み、もう一つは解糖系と呼ばれるグルコースを使用してATPを生産する仕組みです。
前者は最も素早くATPを生産出来爆発的な力を生み出すことを可能にしますが、もっとも持久力に乏しい仕組みです。一般的にはどんなに鍛えても10秒程度しか維持できないと言われています。瞬間的に力を発揮するような運動に向いており、特にウエイトトレーニングなどで重い重量を上げる際や100m走、跳躍種目等の運動時に優位になります。良く筋力トレーニング用のサプリメントでクレアチンが売られていますが、この仕組みを根拠にしているわけですね。
解糖系については、クレアチンを利用したATP生産には一歩ゆずりますが、それでも非常に素早くATPを生産できます。また、一般的に嫌気呼吸によるエネルギー生産はこちらが優位になる事が多いです。しかしこちらもやはり持久力には乏しく、せいぜい30~40秒程度しか維持できないと言われています。最近スポーツ漫画などで「全力で動くのを維持できるのは40秒が限界」という説明が出てきたりしますが、これを根拠にしていると考えられます。
なお厳密にいうと解糖系は好気呼吸の一部でもあります(解糖系で酸素を使用するわけではありません)。

解糖系によりATPが生産されると、その結果としてピルビン酸という物質が生成されます。このとき好気呼吸が優位な運動なら、そのままピルビン酸を利用して更に酸素を利用したATPを生産する仕組みに移ります。もし嫌気呼吸が優位な運動なら、ピルビン酸を利用した好気呼吸によるATP生産が行われず、乳酸が生成されてしまいます。良く疲労物質として語られる乳酸です。実は乳酸は単なる疲労物質というだけではないのですが、こちらについては別記事で詳しく触れます。

(2)好気呼吸について
好気呼吸については、こちらは一般的に有酸素運動などと呼ばれる運動で優位になります。非常におおざっぱにいうと、グルコースや脂質を源として酸素を用いてATPを生産します。
まず先にグルコースの方から説明します。因みに、グルコースを貯蔵するために変化させた物質がグリコーゲンです。厳密にいうと両者は違う物質ではありますが、まあほぼ同じものとして考えて差し支えないかと思います。
グルコースの好奇呼吸は解糖系やATP-CP系と比べるとATPの生産過程が長く複雑であり時間がかかりますが、とても効率の良い生産が可能です。例として解糖系に比べると、同じグルコース1単位から実に20倍近いATPを生産する事が出来ます。
また、脂質を利用してATPを生産する仕組みも好気呼吸に分類されます。
こちらはグルコースを用いた好気呼吸よりも更にエネルギー生産速度が遅いです。但しさらに燃費は良いです。一単位からのエネルギー生産ではグルコースの好気呼吸よりも3倍以上のATPを生産できます。もっとも、1単位と言っても脂肪とグルコースの重さが違うので厳密に比較はできませんが。よく出される例としては同じ1gからのエネルギー生産の比較で、グルコースなら4kcal、脂肪なら9kcalのエネルギーが生産できるとされています。これでも2倍以上燃費がいいですね。
よく「運動を15分~20分程度継続しないと脂肪は燃えない」という言い方がされますが、この反応の遅さを指していると思われます。厳密にいうとこの説は誤りと言っても良いのですが、あまり関係ない話なので詳しくは触れません。
因みに、タンパク質も実はエネルギー源になりうるのですが、これについては体重管理やコンディショニングの回で詳しく説明します。

長くなり過ぎたので分割し、次回に続きます。