これまでで、毎日練習するよりかは週に2回程度は休息日を設けた方が良いことを説明しました。ですが、疲労回復のために適切な行動をとらなければ、そのようなサイクルで練習やトレーニングは続けられなくなるでしょう。今回は、疲労回復のためにどのように過ごせば効果的かを解説します。
 そのためには、3つポイントがあります。適切な栄養を取る、まとまった質の良い睡眠をとる、休息日に非常に軽めの運動をするの3つです。

(1)栄養について
 栄養については日々バランスの良い食事を行う事が非常に大切ですが、負荷の高い練習をした日と休息日にはさらに加えて取った方が良い栄養素が有ります。それは糖質とタンパク質です。また、この二つが重要ではありますが、糖質が最優先です。
 強度の高い練習をすれば、当然体内の糖(グリコーゲン)は大量に消費された状態です。回復のみならず生命維持活動において糖を使用しないという事はあり得ない為、なるべく早く補給する必要があります。特に強度の高い練習を行った当日は、通常の食事だけではなく練習直後に補助的に補給した方が良いでしょう。タンパク質も同様で。負荷の高い練習は相応に筋肉にダメージを及ぼすので、修復するために多めのタンパク質を取る必要があるでしょう。但し、練習直後に糖質とタンパク質を素早く補給するというのは通常の食事ではかなり難しいので、サプリメントを利用する方が手っ取り早いですし楽です。
 サプリメントとしては、市販のプロテインを取れば十分でしょう。あれには糖質も含まれている上。吸収速度もかなり早いですし。プロテインについては別記事でまたある程度詳しく取り上げます。もっとも、あくまでサプリメントはその名の通り補助なので、通常の食事をおろそかにしないように注意してください。
 なお、糖質についてはすぐに枯渇するため補給する事が重要ですが、あまり身体に溜め込めないという事に注意して下さい。糖質がエネルギー源となるからと言って、たくさんとってもグリコーゲンの貯蔵量はほとんど増えません。これはどんなにトレーニングをし、持久力を身に着けたとしてもです。一応筋肉量が増えればその分筋に貯蔵できるグリコーゲン量が増えると考えられますが、ほぼ誤差のレベルだと考えてよいと思います。
 そして、体に貯蔵できる量以上の棟(余剰分)は、脂肪に変わってしまいます。なので、強度の高い練習をしているのだから、エネルギーをたくさん取らねばと大量に棟を摂取しても、回復にはほとんど役に立たず自分の体重増加につながるだけというわけです。ですので、高い強度の運動を行う人は一般の人よりも多めにとる必要はありますが、極端にその量を増やす必要はないという事です。
 因みに、市販の体重計やウェアラブル端末等で計測したのであまり信頼性のある数値ではありませんが、私の1日の基礎代謝が1800kcal位、強度の高い運動とトレーニングを行った場合の消費calが大体1800~2000kcal程度でした。という事は、食事において大体3600kcal~3800kcalの食事をとらなければならないと考えられます。この辺りについては、ネットで日本体育協会が非常に参考になる資料を公開しているので、是非一読しください(参考:アスリートの栄養摂取と食生活(リンク先はpdfファイルです)、日本体育協会)。
 大体目安としてこの半分を糖質が占めることが望ましいと言われているので、必要な量は1800kcal。糖質1g=4kcalなので、1日にとる糖質量は1800÷4で450gとなります。1日3食と考えれば1食あたり150gの糖質が適切な量となります。主食外からの摂取量が20gほどあるとされているので、主食から取るべき量は130g程度。お米1合が150gで(炊き上げ前の重量)炭水化物含有量が約77%で計算すると115g程度ですから、基準にやや足りない程度。但し、プロテインなどのサプリメントである程度補給することを考えれば、1食あたり大体お米換算1合分の炭水化物を取れば十分と言えそうです。お茶碗で考えれば2杯分程度でしょうか。これ以上摂るのは過剰と言えそうです。
 また、実際には糖分の含まれている飲料や間食を0にするのは厳しいので(理想的にはそう取り組むべき)、実際の量はもっと減るでしょう。ですので、目安としてお茶碗に大盛り1杯から普通盛りで2杯程度摂取する、というのがよさそうです。
 これでも疲労が取れなかったり、体重が急激に減ったり、あるいは筋量が落ちるような事態が発生した場合は、糖質の量を増やすべきかどうか検討したほうがいよいでしょう。

(2)睡眠について
 基本的に身体のダメージを回復する主な時間帯は、睡眠時という事になるでしょう。その為、どんなに質の良い練習を行い食事をきちんととったとしても、睡眠の量と質が悪ければ回復は遅れます。人の成長ホルモンの分泌の関係から、夜の10時までに就寝できることが理想ですが、それが難しい場合少なくとも12時前には就寝しましょう。
 必要な睡眠時間は人によってある程度幅があると言われていますが、強度の高い練習を行っているならば最低限6時間は睡眠を取らなければなりません。但しこれはあくまで緊急避難的な考えであり、本来的には7時間~8時間とるサイクルにしないと、殆どの人が身体的に耐えられないでしょう。しかし、大幅に生活習慣を変えると大きなストレスがかかるため、徐々に変えていく方が無難です。
 もっとも、6時間を切るような睡眠時間は一般的な人間(短眠者ではないという意味)が強度の高い練習を行う際には非常に危険なので、どんな都合が悪かろうが強制的かつ即時に6時間は確保しましょう。もしそれが無理だというならば、競技者として生活を送ることをあきらめるよう勧めます。また、先にも述べた通り6時間というのはあくまで経過措置でしかなく、少なくとも1か月から遅くとも2か月以内には7時間~8時間の睡眠を確保するようにしてください。これは、「絶対に譲ってはいけない一線」であり、優先順位で言えば最優先すべき項目です。
 それすら確保できないというのは、「物事に優先順位を付けて判断する事が出来ない」か「競技者として生活することが許される立場にない」かどちらかでしょう。どちらにせよ、その様な状態で競技者として高みを目指そうとしても、自分や周囲に不幸しか生まないと思います。

(3)休息日に軽めの運動をする
 これは結構よく言われることなので知ってる人も多いかと思いますが、疲労を取るためには完全に休養を取るよりも軽い運動をした方が良いと言われています。いわゆるアクティブレストというやつですね。
 軽い運動というのがピンとこない人が居るかもしれませんが、要はとても運動強度の低い有酸素運動を15分から30分程度行いましょうという事です。軽い強度というのは心拍数が100~120程度、目安としては普通に会話しても問題ない程度に軽い運動という事になるでしょうか。一番分かりやすい例としてはとてもスピードの遅いランニングだと思います。なお、ランニングなら速度の変化を極力行わず一定のスピードで走り、勾配があまりないコースを走りましょう。
 あるいはウォーキングでも構わないと思われます。体力が低い場合には軽いランニングすら結構な負荷になる事もありますので、その場合にウォーキングは非常に適した運動となるでしょう。

 以上3点説明しました。これらは非常に当たり前のことのように思えるかもしれませんが、「当たり前のことを当たり前にやる」ことが意外とできないものです。
 ですが、強度の高い練習やトレーニングに取り組むようになると、この位は良いだろうと少し妥協をすることが、自分のパフォーマンスに大きく響くようになります。これは何も試合に限った話ではなく、普段の練習においてもということです。そもそも、普段の練習のために自分の体調をきちんと整えておかないと、練習の質が著しく落ちてしまいます。
 それだけならまだましですが、オーバートレーニングに陥ったり慢性的な傷害を抱えてしまうと、長期間にわたり練習やトレーニングを休むことを余儀なくされ、最悪の場合競技の続行が不可能になる可能性もあります。自分の体はよくわかっていると思うかもしれませんが、高い強度の練習やトレーニングを行っているととても気づきにくくなってしまいます。体力レベルが一般人よりも高く、更に痛みや疲労への耐性も高くなっているので、「無理がきいてしまう」んですね。
 身体をきちんと管理してくれるトレーナーや栄養士などがいれば話は別ですが、そんな人はプロとして活動しているのでもない限りほとんどいないと思うので、結局自分で管理するしかありません。そして、自己管理はどんなに自分で大丈夫だと思っていても、間違えている可能性は常にあると細心の注意を払わなければなりません。
 また、体温、体重、血圧、心拍数等が以前と比べれば格段に日常的に自分で計測できる環境が整っているので、そういった客観的な数値を毎日計測するなどして、自分の体調の変化に気づきやすい環境を構築してください。そして、それらの数値と自分の感覚をすり合わせ、体調が管理できるようになるとかなりの確率で障害等は防げるようになるでしょう。