これまでトレーニングについてはほぼ持久力トレーニングの話しかしませんでした。しかし、トレーニングにもさまざまな種類があります。そういった持久力トレーニング以外のトレーニングは必要ないのでしょうか。これは私個人的な意見になりますが、瞬発力を鍛えるトレーニングやバランス力向上を主目的としたトレーニングなどは有効だと考えられますが、自重を使ったトレーニング以外は必要ないと考えています。念のために書いておきますが、自重を使ったというのはその名の通り自分の体重を利用したトレーニングのことで、例えば腕立て伏せや腹筋、背筋などがあげられます。また重りを持たないランジやスクワットなどもここに入ります。

 そして、他に一般的に認知されている代表的なトレーニングとしてウエイトトレーニングが挙げられますが、これは行っても得られる効果は非常に限定的だと思われます。フットバッグの体の使い方が複雑すぎて、局所的に筋肉を鍛えることに重点を置くウエイトトレーニングは、フットバッグとかみ合わないと思われるからです。
その理由として、近年になってトレーニング理論の進展により、トレーニング効果についてこれまで考えられてきた筋肉の発達の仕方が実は違っていたことが分かってきたからです。

 筋力トレーニングについては2000年を前後として大きな理論の変化があったのですが、これがまだ意外と知られていないように感じます。ここで一つ質問をしますが、スロートレーニングや加圧トレーニングというものを聞いたことは無いでしょうか。
 読んで字の通りですが、スロートレーニングは既定の動作を行う時になるべくゆっくりと行う事で筋肉に高い負荷をかける方法。加圧トレーニングは局所の血流をある程度阻害することで、軽い重量でも高い負荷になるように考えられたトレーニングです。これらが考え出されたのには、今では覆されてしまったある理論が有ります。
 それは、人が身に着けられる筋力の比率(速筋と遅筋の比率)は生まれつき決まっており、鍛え方によって左右されることは無い(あるいはとても小さな違いしか生まない)というものです。この考え方に立てば、筋力トレーニングとして正しい方法はどんな方法であれ、より筋肉により負荷をかけられる方法という事になります。そういった考え方を背景に、スロートレーニングや加圧トレーニングは考案されたと私は考えています。

 ですが今はこの考え方は覆されており、トレーニングによって発達する筋肉はトレーニングの手法によりある程度変化することが分かってきたのです。人の筋肉は速筋と遅筋のどちらにも属さないような中間的な特性を持つ筋肉があり、それがトレーニングによってどちらにもなる可能性が有ると分かったのが大きな理由の一つであり、更には長期間専門的なトレーニングを行うと、速筋が遅筋化したり逆に遅筋が速筋化するような現象すら観察されたからです。その為現在では、今までのようにただ筋力を身につければよいという訳ではなく、それぞれの競技特性に合った手法で筋力を身に付けなければならないと考えられています。
 因みに、この考え方をこの変化以前から早期に提唱し訴え続けてきたのが、メジャーリーガーのイチロー選手や100m日本記録保持者の伊東浩司選手が取り組んだ初動負荷トレーニングです。
 初動負荷トレーニングは実際にスポーツの場で行われる動作と同じように鍛えなければならないという、「動作ありき」の考え方を初期より徹底しています。そして、必要でない筋力を身に着ける事は無駄であるばかりでなく、パフォーマンスを低下させるケースすらあると発言しています。
 初動負荷理論を提唱するワールドウイングの代表者の小山氏は、イチロー選手の初動負荷トレーニングマシンを設置するために訪れたアメリカで、当時ホームラン記録を塗り替えたマーク・マグワイア選手について記者に聞かれてこう答えたそうです。「彼は腕の筋肉を付けすぎている。腕の筋肉を落とせばもっと記録が伸びるのではないか」と。アメリカの記者はみなあっけにとられたそうです。
 むろん、初動負荷トレーニングが正しいトレーニング法なのかどうかはまだ今後も様々検証が必要ですが、イチロー選手や伊東選手が発揮したパフォーマンスを考えれば、少なくとも従来より提唱されてきた手法よりも、高いパフォーマンスを望める可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

 ここでフットバッグの動きを見てみると、大きな力を発揮しなければならない場面はほぼありません。むしろパワーの大きさよりもスピードの方が重要な場面が圧倒的に多いです。少なくとも、重いウエイトを利用したトレーニングが必要なシーンはほぼないと言ってよいでしょう。これが、筋力トレーニングは自重を用いたものまでとする理由です。むしろ自身の重心のコントロールや動く速度を無段階的にコントロールできる能力などの、自らの身体を精密にコントロールする能力を磨いた方がより有益であろうと考えています。
 少なくとも、筋力アップすれば動きが良くなるなんて単純なものではない事だけは確かです。むしろ、筋力アップしたことにより自らの身体をコントロールする能力が低下する危険すらあります。
 これはあくまで現時点での理論を踏まえた上での個人的な考えではありますが、参考にしていただければと思います。