目標を立てることが大切だ、という話はよく聞きますが、目標の立て方についての解説は意外と聞きません。また、どのような目標を立てるのかという事についても、人それぞれで意見が分かれるようです。大きな目標を立てるべきなのか、小さな目標(達成しやすい目標)を立てるべきなのか。
 これについては、「どっちも立てよう」というの現時点で私の見解になります。そもそも、目標を立てるのが1つである必要はありません。ただし、「二兎を追う」ような目標は極力避けるべきではあります。じゃあどういう事かというと、大きな目標達成を一つの道にたとえ、道のりを分割していくという事です。その事について、具体例を用いて順を追って説明します。

(1)まずは1番大きな目標(大目標)を立てる
 まず一番最初に立てる目標は、もっとも大きな目標です。なお、これは後に立てる目標でもいえる事ですが、抽象的なことを目標に立てることはやめましょう。
 例えば、「フットバッグをもっと上手くなる」とか「高いレベルの持久力を身に着ける」とかです。何をどうすれば達成したかが不明確なため、いくらでもごまかしや妥協が入り込む余地があるためです。より具体的にする例として、前者の目標なら「JFCで優勝する」、後者の目標なら「10kmを40分以内で走れるようになる」とかですね。必ずどうしたら達成するか確認可能な目標の立て方をしましょう。
 さて、話を戻します。一番大きな目標と言いますが、これは達成可能かどうかという視点は度外視しましょう。今回は一つ大きく「WFCのフリースタイルで優勝する」と目標を立ててみましょう。これが出来たら次のステップに移ります。

(2)目標達成に必要な能力を考える
 次に、その大目標を達成可能な要件を抽出します。今回はWFCのフリースタイルで優勝することを目標としてあげましたので、その達成のために必要な条件を考えてみます。
 まず、近年の優勝者~3位までのフリースタイル分析すると、コンタクト数100~120、平均add2.7~2.8(総add270~310程度)、1ドロップ以内といったあたりが目安になるでしょう。但し、近年のWFCのジャッジに以前よりもブレがみられるので、多少のマージンを見て、コンタクト数110、平均add2.9、1ドロップ以内位は欲しい所です。
 さて、これで目標達成のために必要な要件をある程度抽出し終えたので、次に移ります。

(3)道のりを分割する
 目標達成のために必要な要件を抽出しましたが、殆どの人にとっては非常に困難な目標になるでしょうし、雲をつかむような話というような人も少なくないはずです。
 という訳で次は、その目標までの道のりを大雑把に見積もったうえで、それよりもかなり手前(理想は中間点位)にポイントを作ります。そしてこのポイントを中目標とします。今回の目標の前段階を考える為に、JFCを活用できないか検討して見ましょう。
 近年のJFCの傾向を見るに、へんもさんと大志さんが圧倒的に強く、その次まではかなりの隔たりがあります。また、2016年の大志さんがWFCで4位に入っていることから、この2人を(出場したと仮定して)上回る内容でJFCを優勝する、というのが良さそうなポイントになりそうです。3位以内だと隔たりが大きすぎて、中間点よりもかなり手前になりそうですので。
 さて、この2人を上回るために必要な難易度を見積もると、おおよそ平均add2.5~2.6、100~110コンタクト、1ドロップ以内なら上回れそうです。

(4)更に分割する。
 中間点のポイントの手前と奥に更に分割してポイントを設定します。フリースタイルの平均addは0.2変わると結構印象が変わる事、中目標と大目標の間が平均addで大体0.4の差があるため、0.2刻みで分割するのが良さそうです。
 今回は平均add2.3、100コンタクト、2ドロップ以内を手前のポイント(少し甘めに設定)、平均add2.7、110コンタクト、1ドロップ以内を奥のポイント(やや厳しめの設定)とします。このうち、手前のポイントが小目標となります。

(5)小目標を達成するために必要な要素を見積もる。
 小目標を達成するためにはどのような技術が必要かを考えます。この時大切なのは、小目標は中目標や大目標へ至るための過程である事を意識しなければならないという事です。
 例えば、平均2.3addを達成するために、3addや4addの簡単な技を増やして達成しても、あまり伸び代がありません。言い換えれば、それで平均add2.3を達成しても、そこから平均addを伸ばすのが非常に苦しくなります。ある程度2addが混ざっても良いので、5addを取り入れて構成した方が後の為に有用でしょう。
 ここからは、どのような技術が必要なのか具体的に分析していきます。まず、平均add2.3を超えるのですから、2add以下の技は全て安定して出来ること前提です。そして、フリースタイルでは比較的安定しやすくバリエーションも増やしやすいclipper系統の技術が最優先課題になります。
 まずsetの面から考えると、特にstepping系統の技が安定して出来ることは大前提でしょう。duckingやspinningも慣れれば非常に安定しますし、動きのバリエーションを増やす意味でも必須です。また、リズムの変化を演出するためにも有用です。
 toe系の技はclipperと比較してやや安定性にかけますが、これが入っていないとかなり単調な内容となるのでこちらもまた必須です。一番簡単な所ではpixieですが、相応に評価も低いのでもっとバリエーションが欲しい所。fairyもあまり高い評価ではない為、atomicやquantumのトリックをできれば入れたいところです。
 先にset系統の技術を上げましたが、オリジナルの技(ダウンタイムの技)も当然磨かなければ話になりません。まずは必須も必須、butterflyとosisです。セットとの組み合わせから態勢の立て直しやリズム調整などありとあらゆるところで使用します。次いでBOPと呼ばれる3addのレストムーブの残りであるpdx mirage。緊急回避の技としてはあまり使えない為、butterflyやosisよりは優先順位が下がりますが、clipperからtoeに移行する最も基本的なトリックなのでこれも必須でしょう。但し単体で多用するのは印象が悪くなりますので、なるべくblur(blurry mirage)に置き換えたいところです。
 この3種の次に必須となる技術としてはwhirl(blenderを含む)とdouble down系統のトリックになるでしょう。whirlは難易度に比してaddを稼ぎやすくなりますが、その分whirl絡みの高addの技はあまり高く評価されない所は注意が必要です。もっとも、先にあげたBOPと比較すればはるかに高い評価を得られるので、5add以上の技を構成する中心的な技になります。特に1dexで5addを狙えるPS whirlはかなりのねらい目となります。慣れると非常に安定しますし、リズムや動作が独特なのでアクセントとして使う技としても優秀です。
 double down系統の技はwhirlよりも難易度が高いと感じる人が多いと思いますが、評価もまたwhirlより高いので狙いたいところです。但し、paradonやdodよりは、burflyやdown double downの方を優先(steppingと組み合うため)。vasekのようにspinningに移る(リズムを変える)技としてbarflyを挿んだりといった使い方もできます。また、5add以上の技で組み込むと、結構な高評価を狙えるのでこれまた狙いたいところです。特にsuperfly(symposium barfly)はかなり評価が高く、またPS whirlとの差別化要素として優れているので狙いたいところですが、難易度も高いので悩ましい所です。苦手なら取り入れない方が無難でしょう。
 最後に、toe系の技でいくつかオリジナルの3add以上の技を出来ると更に差別化できます。代表的なところでは、dloとeggbeater、そしてdatwでしょう。drifterやtorqueはtoe>clipper(osis)の技なので、変化する技としても使えます。また、これらはdatwを除きtoe限定ではなくclipper始動もでき、pdxも絡められるので、出来るようになると非常にバリエーションが増えます。
 但しこれらはそれなりに難易度も高く、ドロップのしやすさという点でもリスクを伴うので、多用するのは避ける方向となるでしょう。決めの技として効果的な所でワンポイントとして使うという事になるでしょうか。
 これ以外にもさまざまな技が有りますが、ひとまず小目標を達成するには十分でしょう。むしろ、応用すれば大目標ま達成可能な技術郡として考えたつもりです。

(6)先の項目で挙げた技術郡を個別に習得することを最も小さな目標とする
 ここまで来たらやる事はあとわずかで、先にあげた要素をそれぞれ習得していくことを最小の目標とします。そしてその最小目標を立てることが、そのまま練習メニューを考えることに直結します。

(7)目標を達成するまでの期間を具体的に定める
 最後に、先に挙げた目標を達成するための期間を具体的に定めます。そうしないと、自分の取り組みに対する検証とフィードバック、ビジネス用語的に言えばPDCAサイクルをうまく回せないからです。その後に実際の試合までの日数などを考え、どの程度の時間をどの練習に割り振るかを決めていきます。

 このようにして、まずは大きな目標を立て、その手前に中目標を置き、更に小目標をおいて、という具合にどんどん分割していきます。もし小目標だけを立てるだけだと、何のために練習するのかという部分があいまいになる可能性が高まります。また、大目標だけしか立てないと、地図もコンパスも持たず未知の地へ赴くようなもの(慣用句です、スマホ持ってるから大丈夫とか言わないように)で、迷子になる可能性が非常に高いでしょう。
 大切なことは、最初に大きな目標を立てた上で目標をなるべく小さく分割し、その小さな目標を達成し続けることが自動的に中目標や大目標を達成することにつながるかどうかです。繰り返しになりますが、大目標を立てるだけでは「とりあえず立てた目標」という枠から出るのは難しく達成は困難でしょうし、小目標を立てるだけでは大きなことは成し遂げられない可能性が高くなるはずです。
 このような目標の立て方はフットバッグに限らずいろんなところで使えますので、覚えておくと色々と応用が効いて便利です。もちろん、自分なりの目標設定の仕方が身についており、またその達成の手順も考えられる人は特にそのやり方を変える必要はありません。あくまで、目標を立ててもあまり達成できなかったり、大きな成果を得られない場合に、これらの方法を参考にしてみてください。
 結局どんな大きな目標も(特にスポーツにおいては)無数の小さな成果の積み重ねでしかない事を覚えておいてください。ただし、「千里の道も一歩から」は真理だと思いますが、その一歩は千里の一部であべきだということです。千里の道も一歩からと言いながら、千里を歩く気のない一歩はただの一歩でしかないのです。