低糖質ダイエットに関する記事の最終回として、体重のコントロールについて解説します。なお、本記事は主に競技スポーツを行う上での体重コントロールを主眼に置いていますが、ある程度は一般的な生活を営む人にも応用可能であると思います。

 さて、競技スポーツにおいて自らの体重は大きくパフォーマンスに影響します。よって、自らの体重をコントロールすることがパフォーマンスを高めていく上でも必要となります。しかし、絶対に間違えてはいけないのは、体重をコントロールする(多くの場合減らす)のはあくまでパフォーマンスを上げるための手段であり、それ自体を目的としては本末転倒だという事です。
 特に無理な減量・増量に取り組むと、パフォーマンスの低下、過度なストレスの蓄積、疲労の慢性化、疲労骨折等の慢性的な障害等の誘発が懸念されます。それゆえに、きちんとした管理の基、自らのパフォーマンスを上げるための体重コントロールを身に着ける必要があるのです。

 ここから体重コントロールの話に入っていきますが、体重の増減に関する事項は以下の点に集約されます。
 それは、「食料を摂取することによる同化量とエネルギーの消費量の兼ね合いにより体重は増減する」という事です。そしてこれは単純に脂肪の増減を指すものではありません。同化というのは摂取した栄養素を自らの身体に取り込む事を指しますが、脂肪に限らず糖質をグリコーゲンとして取り組むことや、アミノ酸を筋肉として同化すること等をを含みますし、消費についても脂肪に限った話ではありません。ゆえに、局所的な視点ではなく、身体の仕組みを考えた上でトータルで考える必要があります。
 もっとも、それらを考えた上でも筋肉の増減を除けば、そのほとんどはエネルギー源としての糖質と脂質の摂取と消費に集約されはしますが。もちろんそれを補助するビタミンやミネラル類も同様ですが、やはり影響度が大きいのは糖質と資質の摂取と消費です。
 なお、体重を増加させる点については特に解説しません。フットバッグにおいてはその競技特性上、体重を増やした方が良いケースがほぼ考えられないからです。勿論競技においてはパフォーマンスを保ったまま増量する必要があるケースもあり、そちらもきちんとした管理が大切なのですが、今回は割愛します。
 私はこの原則以外の方法で体重をコントロールできるとは考えていません。因みに世の中には多くのダイエット法が生まれては消えて行っていますが、その全ては結局この原則に沿っているかどうかによって結果が左右されると思います。そしてそれらの殆どが、「~だけやればOK!」みたいな書き方をしており、そういった物ほど問題点を抱えていると考えています。

 さて、結局はエネルギー収支の話になっていくわけですが、その前に筋肉について述べておきましょう。スポーツにおいて全ての動きは筋肉による出力しかない訳ですが、じゃあ筋肉を付ければつけるほど良いかというとそうではありません。何故ならば筋肉は「重い」からです。
 概ね筋肉は脂肪の1.2倍重いと言われています。また、筋肉増加により特定の箇所だけ発達させようとしても、鍛えた個所と拮抗する部位も必然的に鍛えられるうえに、その事により体重そのものが増加すれば、それを支持する脚部や体幹部においても当然負荷が増えるために、ある程度筋肉量が増加するでしょう。
 そして、重いからだというのはそれだけで持久力の消費を増加させます。これはどう考えても好ましくありません。よって必要な筋肉を過不足なく身に着ける事が必要になります。どの程度の筋肉量が理想かはフットバッグの運動特性によりますが、恐らくその点について研究された事は無いと思います。その為、他競技で似たような運動特性のスポーツを探すことが早道となるわけですが、私は800m~1500m走の中距離走とフィギュアスケートが非常に近いと考えています。
 両競技を見れば、特に中距離走の選手は殆どの選手がかなり絞り込まれた体をしており、あまり筋肉量は多くありません。これは、急激な加速を必要としない事、(重量的な)重い負荷がかからない事、有酸素的な持久力を必要とすること等がその要因と思われます。
 つまり、必要な出力を満たす筋肉量を確保した後は、可能な限り体重を絞り余計なエネルギー消費を減らすわけですね。このように、「必要な量だけの筋肉を付ける」事が体重コントロールには欠かせません。そして、フットバッグにおいては特に多くの筋肉を必要としません。因みに中距離走のトレーニングについては非常に資料が豊富なので、参考にする価値が大いにあります。

 ここからは、いよいよ本題と言っても過言ではない、エネルギーの消費と摂取に関してです。まず、よくある言説として「脂肪を燃焼すれば痩せる」という事について、これは正しいのでしょうか?これは、ある意味で正しくもあり間違いでもあります。
 確かに、脂肪を燃焼させればその分の脂肪が減るわけであり、一見痩せるように見えます。ですが、この考え方には大きな誤謬が含まれています。それは、そのエネルギーを必要とする活動を行っていなければ脂肪の燃焼自体がすぐに止まる事、そして脂肪を燃焼するという事はグリコーゲンを節約するという事であり、糖質の摂取量によってはそれらが脂肪に変わるという事です。
 順を追って説明しましょう。人は有酸素系の運動の場合、グリコーゲン(糖質)を利用したATP生産と、脂肪酸のβ酸化を利用したATP生産が有ります。これについてその原料である糖質については1gあたり4キロカロリーのエネルギーが、脂肪については1gあたり9キロカロリーのエネルギーが最終的に生み出せると言われています。
 エネルギーを生産するのは「必要があるから」です。勿論人が生活する以上必ずエネルギーを必要としますが、消費量が増えなければエネルギー生産量は上がりません(そんな無駄な機能を備えている訳がないですよね)。ですので、「この食品(飲料)を取るだけで脂肪の燃焼が促進されて痩せます!」みたいなうたい文句は全てまやかしのような物だと思ってよいでしょう。百歩譲って脂肪燃焼が促進されたとしても、それは糖質を利用していた分が脂質利用に変わっただけで、結局使わなかった糖質が脂肪に変わるだけです。
 つまり、あなたの体重が維持されている状況ならば、その使用エネルギーが糖質から脂質に変わっても、消費エネルギーが変わらない以上体重は維持されるという事です。

 ですが、脂肪を燃焼させるというアプローチ自体は非常に大切な視点となります。何故ならば、人は貯蔵できるグリコーゲン(糖質)の量がそれぞれ決まっており、それは増やすことが出来ないからです。その為に、糖質に頼り切ったエネルギー生産では、どうしてもエネルギー消費を増やすことに限界があります。特に競技スポーツで高い負荷の練習やトレーニングを行うためには、いかに脂肪利用のエネルギー生産を増やすかどうかがカギとなります。
 ゆえに、脂肪を燃焼させるエネルギー生産を活発にしたうえで、それを消費するような運動を行う事が重要となります。その手法については以前の持久力に関する一連の記事にて解説しているので、詳しくはそちらを参照してください。本記事では割愛します。

 ここで再度確認しますが、摂取したカロリーと消費したカロリーを比較し、前者が明らかに多ければ体重は増加し、後者が明らかに多ければ減少します。明らかにと述べたのは、人は自分の体重を維持するような働きを持っているためです。その働きにより多少のブレは調整されるために、ある程度の差までは体重は増減せずに維持されます。
 競技スポーツを行っているならば消費エネルギーはかなりの量となっているはずです。内容にもよりますが、2000キロカロリーを超えた内容の練習あるいはトレーニングになっていることも珍しくないでしょう。基礎代謝もかなりのレベルにあると考えられるので、恐らくトータルでは4000キロカロリー前後あるいはそれ以上のエネルギー消費となっていることも十分考えられます。脂肪の代謝についてもかなりのレベルにあると考えられます。
 このような状態において体重をコントロールをするのは細心の注意を必要とします。消費エネルギーを増やすにせよ食事の量を調整するにせよ、疲労の蓄積やオーバートレーニングを招くリスクが格段に上がるからです。しかしながら、体重を減らす余地がある程度ある(男性なら体脂肪率が15%・女性で20%程度以上)場合は、以下の点を見直すことで体重を減らすことが出来ると予想できます。なお、ここで糖質について考慮していないのは、何度も説明してきた通り糖質の貯蔵量はトレーニング等により増減させることができないからです。よって、エネルギー収支をマイナスにすることで削減できる体重は、そのほとんどが蓄積した脂肪ということになります。

・砂糖、ブドウ糖液糖などの糖類を含む飲料を原則取らないようにする。
・砂糖入りの間食の禁止。運動前の糖質補給はおにぎり、砂糖を含まないパン類等から摂る。
・揚げ物の量を減らす。目安としては2~3日に1食程度が理想。無理な場合は1日に1食程度に抑える。
・食事を見直し、前述の内容を考慮したうえで1日の摂取エネルギー量を1日の消費エネルギーマイナス400キロカロリー程度に抑える。
・有酸素系運動の軽い負荷(心拍数にして140~160程度)の運動を現在の練習・トレーニングメニューを変更せずに追加する。

 この位でしょうか。競技スポーツに取り組み高い負荷のトレーニングを行っていれば、追加できるトレーニングはかなり限られますし、無理に追加すればオーバートレーニングや慢性的な障害を招きかねません。食事についても同様で、大幅に取る量を減らせば必要な栄養が足りずに、疲労回復が遅れてしまう可能性が高まります。
 よって調整する部分は、必然的に間食の類や糖質と脂質を過剰に取る可能性があるものの調整、後は有酸素運動で軽めなもの程度に絞られることになります。特に砂糖類の摂取を減らすことができれば、脂肪を利用したエネルギー生産能力を高める効果も期待できます。
 これらをトータルし、一日のエネルギー収支が平均300~400キロカロリー程度マイナスになれば、1ヶ月で約1キロ程度の体脂肪を削減出来る事になります(300キロカロリー×30日÷9キロカロリーで1kg、400キロカロリー×30日÷9キロカロリーで約1.3kg)。個人的には、これ以上のペースで減量する事は推奨しません。また、人の体は機械的に同じような働きをするわけではありません。ですので、食事も体調の変化に合わせて柔軟に対応するべきです。
 特に食事を減らした直後には細心の注意を払い、疲労が抜けないと感じたら食事量を戻すようにして下さい。そして少しずつ体を慣らすことで、長期的な視点で体重を減少させることが必要になります。そもそも競技スポーツを行っていればかなり体は絞り込まれているはずで、大幅な減量が必要な人は殆どいないと思いますので、減量は個人差はあれど現体重の5%程度というのが現実的なラインになるでしょう。
 それでもある程度体脂肪率があると仮定して、成人男性で体重70kg体脂肪率が16%程度の人なら脂肪は11.2kgある事になりますが、体脂肪を減らすことで5%減量するならば3.5kg減らすことになります。
減量後の体重は66.5kgで脂肪の量は7.7kg、体脂肪率は約11.5%程度となります。5%というとかなり少なく感じる人もいるかと思いますが、結果を見れば大体これくらいが現実的だと納得するのではないでしょうか。
 これ以上の減量が必要となる競技レベルにおいては、もはや減量という考え自体が必要にならなくなります。目安として、男性で体脂肪率が1桁、女性で体脂肪が15%を切る状態が理想という競技レベルにおいては、そもそも練習やトレーニングメニューの負荷が高すぎて、減量することを考えるまでもなく体重は極限まで絞り込まれるからです。
 また食事の面においても、慢性的な障害を引き起こさない、体重を減らしすぎない(体脂肪の量を減らしすぎない)、疲労を残さないといった観点から、懸命に食べる必要があるレベルとなるので、食べる量を減らすという視点はまず必要とはなりません。
 逆に上記で上げたようなレベルよりも低いレベル、男性で言えば体脂肪が20%前後あるようなレベルにおいては、まず減量を考える前に練習メニューやトレーニングメニューの見直しが必要となるでしょう。競技特性にもよりますが、その様な状態にある時点で練習メニューやトレーニングメニューの負荷が低すぎることが考えられるからです。少なくとも、競技スポーツにおいて高いレベルを目指すというならば、よほど大量の糖質・脂質を取っているのでもなければ、自然に体は絞り込まれていきます。

 これらを踏まえた上で、もし自分の体重の1割以上を減量する必要がある場合においては、自分の「体重維持の壁」のラインを探ってください。人の体は、基本的に体重を維持しようと働きます。それでもエネルギー収支がマイナスならば体重は減少していきますが、ある時点で体が危険(飢餓状態)であると感じ、体重をこれ以上減らさないように強固に反応します。具体的には基礎代謝量を低くしたりするなどを行いエネルギー消費を抑え、体への同化量を何とか増やそうとするのです。
 この壁は人によって違いますが、概ね維持されていた体重の1割程度の減量が目安と言われています。ちなみに私は大体体重の7%~8%程度です。この壁に突き当たると、減量するはずの生活を行っていても体重の減少がストップします。この時に大切なのは、無理に体重を落とそうと更に運動を増やしたり食べる量を減らしたりしてはいけないという事です。
 この状態から無理に減量してしまうと、体が完全に緊急事態だと判断します。短期的には減量するかもしれませんが、かなり高い確率で大きなリバウンドが待っているでしょう。ではどうするかというと、減量するはずの生活をしっかり続け、自らの競技のパフォーマンスを高める取り組み(要は普段通りの練習)を続ける事です。
 そういった生活を続けると、やがて体がその状態になれまた自然に体重が減少していきます。繰り返しになりますが、無理な減量は厳禁なのです。

 因みに上記に挙げた4つの改善点ですが、もしこの習慣からかけ離れている生活を送っているならば、いきなり大きく変化することは推奨されません。後の記事で詳しく述べますが、人は大きな変化を嫌う生き物であり、それは良い生活習慣に変える事でも同様で、最初は大きなストレスを感じます。
 その様なストレスを無視して大きく変更を行うと、精神的に不安定になったり、ひどい場合には摂食障害を引き起こしたりするケースもあります。そこまでいかなくても、無理に食事量を抑えた結果反動で大量に食べてしまう等のリバウンドを引き起こすことも考えられます。
 特に競技スポーツにおいて高い負荷の練習・トレーニングを行っていると、日常的に大きな負荷が心・体の両面にかかっています。そのような中で食べる事にもストレスをかけるというのは非常に大きなリスクとなります。
 その為に、小さな変化を積み重ねていくことが大切になります。例えば1日2回朝・昼に間食を摂っているとしましょう。まず最初の一歩として、どちらの間食も少しだけ食べる量を減らしてみましょう。例としてチョコレートを食べているのならば、最後の一口を控える、といった具合です。
 その習慣にある程度なれたら更にもう少し減らして……という具合に積み重ねていき、両方とも食べる量が半分くらいになったら、次のステップで朝か昼かどちらかを完全になくします。この時に残った方の食べる量は、場合によっては元に戻しても構いません。そしてその状態にある程度慣れてきたら続けている方の間食も徐々に減らしていき、最終的に無くすという具合です。
 他の習慣についても同様に、いきなり大きく変化させるのではなく、徐々に変化させていく方が結局は近道となることが多いですし安全です。どうしても大きな変化を行わないといけない場合は、とくに精神的な面での変調に細心の注意を払って行ってください。

 ここまで、体重をコントロールする事、とりわけ減量について述べてきました。
 そして、私が書いた事について、拍子抜けした方も多いのではないでしょうか。多少新しい知見を得られた人もいるかもしれませんが、殆どの人は知識として持っていることが大半の内容だったかと思います。けれど、結局体重をコントロールする方法はエネルギーの収支を調整するしかないので、たどり着く結論は似たようなものになるんです。
 因みにこのような方法を説明すると、「それをやれば減量できるのは当たり前じゃないか」と言われる事が時々あるのですが、私はこの言葉が不思議でなりません。いや、当たり前だと分かっているならやればいいじゃないかと。少なくとも競技スポーツに取り組んでいるならば、どれもさほど無茶な要求じゃないと思うのですが。
 なお、もしこれが全くスポーツを行っていないような生活習慣の人ならばもう少し段階を踏む必要はありますが、それでも結局たどり着く方法は似たようなものになります。
 世には無数と言いたくなるほどに様々なダイエット法が有りますが、私はそのほとんどを信用していません。特に、人の代謝の仕組みを置き去りにしているような方法は全く効果が無いどころが、害になる事すらあると考えています。運動もせず、食事も見直さず、楽をして減量が出来るようならば誰も苦労しませんし、ダイエットに失敗する人など出てくるわけが有りません。むしろそういった方法でダイエットが出来る方が生物として大きな欠陥があります(生命維持に著しく不利)。
 まあ、外科的に処置する方法(例えば脂肪や水を吸引する)もありますが、もはや本コラムとの趣旨とはかけ離れているので触れるまでもないでしょう。

 人の体の仕組みがすべて解明されているわけではありませんが、それでもエネルギー生産と消費(出力)に関する仕組みはかなり詳細に解明されています。そして、それらを知っていれば実に理論通りに人の体は反応する物だとつくづく思います。
 よって、体重をコントローする方法も必然的にそれらに則ったものになります。結局、基本に忠実に取り組むことが何よりも近道であり、大切な事なのです。