特徴:Torque、Osis、クリッパー系統のストールの技術、コーディネーション能力

 Lon Smithも全体的に非常にレベルの高い選手なのですが、特にTorqu系統の技術と、Osisを含むクリッパー系統のストールの技術が恐ろしく高いと感じます。彼のPdx Torqueを見るたびに「実はPDX Torqueは難しくないんじゃね?」と思ってしまいます。まあ、当然勘違いなわけですが(笑)。
 クリッパー系統(Osisを含む)のストールの技術については、とにかくどんな状況でも足にバッグが触れさえすればストール出来るんじゃないかと思う程に安定しており、その独特のリズムと共に非常に参考になるプレイヤーだと思います。但し、彼のシュレッドのリズムは個性に起因する要素も多いと感じる事と、余程コーディネーション能力に秀でていなければ実現できないので、形だけ真似をしようとしてもほぼ不可能でしょうし、その必要もありません。
 特にosisを振り回してストールする癖のある人は、一度Lon SmithのOsisを研究することをお勧めします。Osisできちんとバッグも足の動きも止め、次の動きに無理なく移れるようしっかり体勢も含めコントロールされているという意味で、Lon Smithの右に出るものはいないのではないでしょうか。

Lon Smithの特異性に関する考察
 Lon Smithは他のプレイヤーと比較し、トップレベル層においてすら特殊なシュレッドをするプレイヤーだと私は認識しています。彼の特異性は複数要素が絡み合っていると思うのですが、その中でもとくに重要な要素がコーディネーション能力だと思います。これは日本語だと中々良い訳が無い言葉なのですが、協調あるいは調整能力が近い言葉でしょうか。
 大リーガーのイチロー選手がハンドアイコーディネーションが優れていると評されたことが有るので聞いた事がある人もいるかもしれません。これはハンド(手)とアイ(目)をコーディネート(調整)する能力という事で、視覚情報に合わせてバットをコントロールする能力がずば抜けている、という使われ方をしていました。
 Lon Smithの特異性は、バッグと自らのリズムの調整を瞬時に行える点と、その調整の幅が非常に広いという点にあると考えています。
 通常、人は一定のリズムで行動するとき集中力が高まりやすく、一定のリズムで行動しているときにリズムが狂うと集中力を乱したりミスを犯しやすくなると言われています。では、このリズムのずれの許容度はどれくらいなのでしょうか?私は、概ね0.1秒のずれが有れば殆どの人が知覚すると考えています。
 そんなにわずかな差が感じ取れるのかと思うかもしれませんが、例えばプロゲーマーや格闘ゲームの世界大会の上位入賞者は60fps(秒間60コマ)の世界において1フレーム(約0.017秒)の遅延すら明確に知覚すると言われていますし、2フレーム(約0.033秒)なら一般人でもかなりの人が知覚できると言われています。
 これらの検証は静かな部屋で全く動かずコントローラーと画面の動きに集中している状態での話なので、一概にスポーツの現場に適用できる話でもありませんが、それでも0.1秒程度ならば十分に知覚すると考えて良いと思います。
 ですが、0.1秒のずれすら許さないほど正確なリズムを人が刻めるかというとかなり難しいと思います。と言いますか、現実的には不可能でしょう。そこで求められる能力が、僅かなずれを調整しながら自分のリズムを崩さないというコーディネーション能力なのですが、当然この能力には個人によって幅が有ります。
 私が見る限り、この能力に特に秀でているプレイヤーが、Vasek Klouda、Johny Suderman、そしてLon Smithです。Lon Smithはこの能力をベースに、左右差の殆どないスキルを駆使し、更にデックスセット系統の技(いわゆるシャッフル)とそれ以外のトリックで極端にタイミングを変える事でリズムの変化を生み、加えてスピンやダッキング系統のトリックにおいて僅かにスピードを変える技術を持っているために、更に変化にバリエーションがついているように見られます。
 しかし、いくらコーディネーション能力が優れていると言っても、頻繁にリズムが変化する中で安定性を保つのは至難の業です。それを、前述した圧倒的なストール技術で成立させているわけです。おそらく、どれか一つの要素が欠けても成立しないと思われますので、それゆえに誰も真似する事の出来ない独自のスタイルを構築していると言えるでしょう。身体感覚の分離もかなり優れていると思うのですが、この点についてはJohny Sudermanについて解説する際に詳細に述べたいと思います。
 コーディネーション能力は鍛えられない事は無いと思いますがかなり難しいと感じるために、そこにあまりこだわりすぎない方が良いと感じています。むしろ、それは自分の特性の一つだととらえ、自分に合ったスタイルを構築する方が建設的でしょう。
 コーディネーション能力が高ければリズムの変化を比較的苦にしないので変化に富むシュレッドが出来るでしょう。また、リズムが崩れた際にも立て直す能力に秀でているという事も出来ます。ですが、これには当然尋常ではないレベルのストール能力が求められますし、それを備えた上でも安定性という点ではやはり厳しい面が有ります。リズムを一定に保てば安定性は増しますが、そうなるとコーディネーション能力はそこまで生かされない事になります。
 コーディネーション能力が高くなければリズムの変化を大きくするのは厳しいでしょうが、逆に言えば一定のリズムを保ちやすく安定したシュレッドを行えるという事を意味します。もっともリズム変化には乏しいので、自分で意識して変化を付けないと非常に単調なシュレッドに見えてしまう可能性が有ります(ちなみにこの方向性でレベルの高いシュレッダーがJindra SmolaやAnnsi Sundbergが挙げられると思います)。
 結局これは其々の個性に属する領域が大きく、そこをきちんと把握すれば長所にも短所にもなる(もっと言えば長所と短所は表裏一体)という事です。憧れのシュレッダーは真似したくなるものですが、真似をすることが意味をなさない事、特に自分の特性を無視するような真似の仕方は控えるべきです。

1.Paradox Torques World Record by Skyler Lon Smith Footbag 2016

タイトルの通りPDX Torqueのワールドレコードです。PDX Torqueの研究には欠かせない動画です。

2.Jorden Moir, Lon Smith, Jim Penske, 2007 World Footbag Clips

2007年のワールズのフリーシュレッドです。Lon Smithは一番最初に出てくるプレイヤーです。因みに2番目のプレイヤーがJorden Moir、3番目のプレイヤーがJim Penskeです。Lon Smithは単独である程度の長さのある動画が少ない為、このような動画かあるいはサークルコンテストの動画で探すことになると思います。本動画はLon Smithのみならず後の二人のシュレッドも非常にレベルが高く見ごたえのある動画です。しかし、動画を見る限りこの3人プラスGordon Bevierを加えた4人のサークルのはずですが、一人だけハブられたGordon Bevierがちょっと不憫(笑)。

3.Turn It Out Drills Shred by Skyler Lon Smith Footbag ShredOn 2017

短い動画ですが、画質も良く見やすい動画です。ワンシュレッドでも見どころは多くあります。

4.SLS Challenge 100 Contacts Guiltlessly Footbag Skyler Lon Smith “ShredOn” 2017 June

タイトルの通りの内容ですが、BOPが少なく色々と参考になる動画です。

5.Lon Smith Vegas Special

これもやや短いですが、Las Vegas Jamのフリーシュレッドだと思われます。

以上です。紹介しようと思ってたLon Smithが出ているサークルコンテストの動画が軒並み消されていて、紹介できなかったことが悔やまれます。特に2008のUS OPENと2015のLas Vegasのサークルはかなり見ごたえがあるのですが残念です。