今回はクールダウンについて解説します。
 負荷の高い練習やトレーニングを行ったときに、クールダウンあるいは整理体操を行わなければならないと指導されたことがある人は多いと思います。クールダウンというととてもゆったりとした運動やストレッチを思い浮かべる人が多いかと思います。私が所属していた大学のテニス部では軽いランニングとストレッチを行っていました。
 軽いランニングや同等のゆったりとした運動は、極めて強度の低い有酸素運動という事が出来ます。これとストレッチは実は主に期待される効果が違い、どちらかを行うのではなく両方行う必要があります。

(1)軽いランニング等の低強度の運動(有酸素運動)の効果
 低強度の運動には二つの効果があります。まず一つ目は乳酸の蓄積を減らすという事です。激しい運動を行って急に運動を止めると、嫌気呼吸によって生み出された大量のピルビン酸が乳酸に変わり体に蓄積します。これを防ぐために行うのがクールダウンのうち低強度の運動の目的の一つです。
 好気呼吸系の運動が優位であればピルビン酸はそのままクエン酸回路で利用されますし、乳酸も再処理されクエン酸回路に回されます。以前に乳酸は単なる疲労物質というだけではないというのはこういう事です。つまり、乳酸もエネルギー源として利用できるわけですね。休息日には完全に休むよりも軽い運動をした方が良いというアクティブレストもこの仕組みがあるからです。
 もう一つの効果は、身体の代謝を回復する代謝優位にするのスムーズに切り替えるという働きです。負荷の高い練習やトレーニングは、嫌気呼吸優位となる運動が多分に含まれます。そういった運動をしていれば、当然身体もそれに備えた代謝系(嫌気呼吸優位の代謝系)を活発に働かせます。一方で身体を回復させる代謝は、当然好気呼吸系の代謝で、更に生み出されたエネルギーは主に運動ではなく身体の回復に使われます。つまり、強度の高い運動の代謝系と回復するための代謝系が違いすぎて、急には上手く切り替わらないのです。
 そこで、極めて低強度の運動を間にはさむことで、嫌気呼吸優位の代謝系を好気呼吸優位の代謝系に切り替えさせます。その後に運動を止めれば、好気呼吸系の代謝が活発になっている為エネルギーを生産する代謝は変える必要が無く、あとは主なエネルギーの使い先が運動から回復に切り替わるだけです。こうすることで、いきなり練習やトレーニングを終了して休むよりも、スムーズに回復に移る事が出来るのです。
 つまり練習やトレーニング後に低強度の運動を行えば、乳酸の蓄積を最小限に抑える事が出来て、更に乳酸を利用して生み出されたエネルギーが身体の回復にも利用できるという、一石二鳥な仕組みなわけです。さして負荷の高い運動を行っていなければあまり実感できませんが、高い負荷の運動を日常的に行うようになると覿面に違ってきます。

(2)ストレッチあるいは類似の運動の効用
 ストレッチや類似の運動を行う目的は、低強度の運動とは目的が異なっています(多少重なる部分はありますが)。フットバッグに限らず、様々なスポーツにおいて身体の全ての部位が均等に使用されるという事はまずありません。必ずどこかに疲労が偏りますし、様々な部位において捻じれや歪み、アライメントのずれなどが発生します。この状態を放置すると、筋に余計な負荷がかかり続けたり正常な血流を阻害するなど、回復を遅らせる大きな障害となります。その為、そういった偏りや歪みを矯正し、身体の状態を正常に戻すのがストレッチ等の効果です。
 ですので、これは「運動後にこういうストレッチを行えばよい」という事を提示する事が出来ません。それは、その日行った運動やその人の運動のくせ等によりいくらでも変化しうるからです。ですので、適切にストレッチを行うためには自分の身体の状態を把握する感覚が欠かせません。これはすぐに身につくものではないので、毎日の中で自分の体の内面を感じ取ることを心がけながらストレッチ等を行う事で、徐々に身に着けるしかありません。しかし、これが身につけば身体の回復力が高まるだけでなく、怪我しにくい体作りにも非常に役立ちますので、常に意識して行う事を心がけましょう。
 なお、こういった感覚が全くなくてどうしていいか分からない人は、とりあえず股関節回り、腰回り、肩甲骨回りをほぐすことから始めてみるのも一つの方法です。勿論自分のゆがみにあったストレッチ等を行えることが理想ですが、上記部位をほぐすとある程度体全体がほぐれ、歪みやアライメンと等を矯正する効果がある程度見込めるからです。また、以前へんもさんがブログで紹介していたビルケンシュトックのサンダルや他にもコンプレッションウェア等の、正しい身体構造のサポートや矯正を目的としたものを利用するのも一つの方法です。
 但し、そのサポートや矯正する度合いが強すぎるとまた別の問題を生むので、程ほどの物を選んだ方が良いでしょう。特に市販されている膝や腰等のサポーターはサポートする力が強すぎて、日常的に使用するとその周辺の筋肉の退化を招いたりするので、痛みや怪我が無い状態では使用するのは推奨されません。時折怪我の予防のためにサポーターを使用するのが有効だ等という人が居ますが、それに頼りすぎると逆に怪我をしやすい体になってしまうので注意しましょう。

 以上クールダウンの効果について説明しました。
 強度の高い練習やトレーニングを日常的に行うようになってくると、クールダウンを行わないと継続するのがかなり難しいと思います。そうでなくても日々パフォーマンスを落とさずに練習を続けるには欠かせないことなので、面倒くさがらずきちんと行いましょう。