技術を身に着けていく過程で、どのような変遷をたどるでしょうか。
 おそらく厳密な規定はなく、人によって意見が分かれるところもあるでしょうが、私は下記のように分けています。

1.動き方について全く理解できていない状態(想像すらできない)。
2.動き方についてある程度想像できるが、実際には動く事が出来ない。
3.動き方についてある程度想像ができ、体をある程度その通りに動かす事が出来る。
4.動き方についてある程度理解しており、意識すれば概ねその通りに動けるが技は成功させることが出来ない。
5.動き方についてある程度理解しており、意識して動けばごくまれにその技を成功させる事が出来る(初メイクレベル)。
6.動き方についてかなり理解しており、意識すればある程度の精度で成功する。
7.動き方についてかなり理解しており、また動作についてある程度細かく意識するポイントを作る事が出来る。更に、そのポイントを意識することでそこそこの精度で成功する(意識の細分化の開始)。
8.動き方について深く理解しており、また動作についてある程度細かく意識するポイントを作る事が出来る。更に、そのポイントを意識することでかなりの精度で成功する。
9.動き方について深く理解しており、動作の最適化を行える。意識するポイントが多数あるとともに、それらをある程度無意識に並行してこなすことが出る。技自体について意識すればかなりの精度で成功するが、無意識下においてはミスが多い。
10.動き方について非常に深く理解しており、動作の最適化を高い精度で行える。意識するポイントが多数あるとともに、それらの大部分を無意識化できる。但し、その状態においては多少ミスが出る。意識すればほぼ完ぺきに成功する(無意識化)。
11.動き方について非常に深く理解しており、動作の最適化を高い精度で行える。意識するポイントが多数あるとともに、それらの全てにおいて無意識化されている。また、その状態において殆どミスなく成功できる(無意識化と熟練)。

 ある程度細かくなりすぎないように気を付けましたが、大体こんなところでしょう。
 なお、これらは便宜上11段階に分けましたが、それぞれの段階は等間隔ではありません。1~4までは大して苦労なく到達できますが、4と5の間はかなりの隔たりがあります。また、9以降は非常に長い時間と膨大な反復練習が必要で、特に10と11の間はとても大きな隔たりがあります。

 余談ですが、フットバッグのフリースタイルにおいては、10の段階に到達した技でないと実質的に使い物になりません。9に到達している技ならば、一応チャレンジトリックとして取り入れる事は出来るでしょうが、使いどころを限定しないと危険です。なお、8にしか到達していない技は、基本的にどのような状況においても取り入れるべきではありません。
 もし11に到達していない技が全体の3割程度を占めるのであれば、かなりドロップが増えるものと思われます。個人的な感覚として、2ドロップ以内に抑えかつ高いレベルを狙いたいのであれば、フリースタイル全体の85~90%を11に到達したトリックで、8%~13%を10の段階のトリックで、9の段階は0~2%(100コンタクトで2トリックが最大)という割合でしょうか。まあ、これは自身の実力と狙いたい順位の兼ね合いで、大きなリスクを負わなければならない場面もあるのであくまで目安ですが。

閑話休題。
 これらの段階において、大きな転換点となるのは5の段階(初メイク)と10の段階(無意識化)にあるでしょう。
 まず5の段階についてですか、どのような形であれそのトリックを出来た(初メイクした)というのは非常に大きな意味を持ちます。出来ないことが出来るようになるというのは技術的な面からも、精神的な面からも大きな転換点となるからです。
 技術的な面で言えば、5の段階に至るまでは基本的に「新しい動きの習得」がメインとなり、これ以降は「習得した動きの最適化」がメインとなります。
また、精神的な面で言うと、1度でもできたことが有れば、非常に大きな自信につながります。
「何度チャレンジしても出来ない」のと、「チャレンジすれば何回(何百回かもしれませんが)かに1回はできる」というのは天と地ほどの差があります。

 次に、技術を無意識に出来るかどうかについては、技術の安定に大きく関わる為に非常に重要なポイントとなりますが、普通に練習していてはまず身につかない為、ここがその技術(トリック)を「使いこなせる」分水嶺になると考えています。
 因みに、私はこの2つのポイントを、トリックが「出来る」と表現する2つの段階として使っています。第1段階を初メイク、第2段階を無意識化ということです。
 但し、技術の無意識化には非常に多くの専門的な反復練習を必要とします。上記の9から10の段階に至るためには、おそらく1~9に至るまでの過程に費やした練習量以上の反復が必要となるはずです。更に、10から11に至るためにはそれ以上に膨大な練習が必要となり、更に技術の難易度に応じて必要な練習量が指数比例的に増えると思います。
 明確に意識して練習を行わない限り、特に難易度の高いトリックについては(目安として5ADD以上)殆どの人は9か10の段階までしかたどり着けないでしょう。また、4addのトリックまではある程度無意識に安定させられる練習量は割と現実的な量だと思いますが、5addを無意識に安定して出来るようになるには相当な量の反復が必要になると思います。
 因みに4ADDと5ADDの間で大きな差が出来る要因は、セット+BOPの構成でたどり着ける限界が殆どの場合4ADDだからです。セット以降のトリックをBOPで行い5ADDに到達するには、セットを複数組み合わせるか(spinning ducking、pixe ducking、pixie atomic等)ダブルデックスのセット(barraging、double pixie等)にするか、セットにパラドックスを絡める(nuclear、pdx quantum等)必要があるためです。
 もっとも、私自身は5addのトリックでそのレベルに達した技術が無いので、そこはテニスでの経験を元にした想像でしかありませんが、当たらずとも遠からずなはずです。但し、全般的な傾向として、手順が多い動作や複雑な動きをする動作は、基本的に無意識化するのが難しいというのはどの競技でも共通だと思います。
 また、技術を無意識に安定させるために必要な練習量は、難易度に比例関係だとちょっと感覚的に合わないです。その為に指数比例的な関係だと表現しました。

 なお、以前にも触れましたが、動作を無意識化する際に、良い動きだけでなく悪い動きを無意識化してしまう可能性もある(無意識化された動きが常に良いとは限らない)点は注意が必要です。そうなると修正が非常に厄介なので、常に自分の動作を最適化する意識を持ち続けなければなりません。
 とはいっても、自分がまだ到達していないレベルの動きをどう判断すればいいのかという疑問はあるでしょう。その為にいくつかの方針を定めそれにしたがって判断するべきなのですが、それについては次回の記事にて解説します。

 ちなみに、動作において意識の細分化(チェックポイントの作成)を行わずに無意識化できるのではないか、と考える人がいるかもしれませんが、たとえできたとしても非推奨です。なぜならば、細分化できないと動作の最適化が行えないからです。
 無意識化され熟練した技術においても、感覚のずれや動作の狂いなどが生じることは珍しいことではありません。その際に、細分化し多数のポイントを作ったうえで無意識化しているのであれば、それらの無意識化されたポイントを意識化してチェックし、修正後再度無意識化するという流れで技術を見直すことができますが、細分化されていなければそういった修正が全くききません。ですので、まずは意識できるポイントを増やしていき、その上で少しずつ無意識化する工程を踏まないと、全く応用性のない技術が出来上がってしまう危険があります。

補足
 以前技術の高度化と安定化について書いた際に、高度化と安定以については別の概念であると述べました。これは、複数の技術について系統で考える際はその通りなのですが、単一の技術についてのみに考えれば、最終的な到達目標は安定化になります。
 例えば、whirl系統という複数の技術で考えた時はwhirlを安定させることとPS whirlやmulletが出来るようになる事が出来るようになる事は基本的に別(無関係ではない)ですが、PS whirlという単体の技術だけで考えれば、出来るようになった後は安定化しか残されていないという事です。
 まあ、動作の改善などである程度高度化する必要もありますが、基本的には安定化をどうするかという事が焦点となります。
 また、複数の技術で考える場合は、ある程度高度化がなされた技術に関しては、簡単な方の技術については安定化させて問題ありません。
 例えばwhirlしか出来ない段階でwhirlばかりやってpdx whirlやsymposium whirlに挑戦しないことは問題ですが、whirlwindやmaelstromが出来るようになったのならば、whirlやpdx whirlをどんなに安定させても殆ど悪影響は有りません。
 以上補足でした。