先の目の前の事に集中するという事に関連して、今回は予測する能力についてちょっと書いておきます。
 フットバッグは直接人と対戦する(お互いのプレーが相互に直接影響を及ぼす)スポーツではないのであまり気にしない人も居るかもしれませんが、スポーツにおいて予測能力はかなり重要な能力となります。
 それは、言い換えれば数秒先あるいはもっと先の未来を見据えながらせめぎ合いを続けるという事です。そしてその方法は逆説的になりますが、「今この瞬間の情報」をどれだけ感じ取る事が出来るかにかかっています。

 テニスで相手の打つコースを予測する事を例にしてみましょう。
 相手が打つコースを予測するというのは実に多く情報が必要となります。自分が直前に打ったボールの球威や回転種類と強さと打ち込んだコース、相手の体勢とボールを捉える打点、セットカウントやゲームカウントと現在のゲームのポイント状況、相手の予測と自分の予測の駆け引き、お互いの精神状態、お互いの調子の良しあし、相手のストロークの得意なコースと不得意なコースの見極め、風向きや太陽の位置、自分のポジショニングとフットワークの能力など等。
 実際にはもっとありますがきりが有りませんし、テニスに関するコラムでもないのでここで止めておきますが、実に多くの情報が予測の精度を高める為に必要になります。そしてそれら多くの情報を考えて処理するのははっきり言って不可能です。必要な情報は膨大な癖に、判断に要する時間は1秒かそれ未満の時間しかないからです。これは何もテニスに限ったことではありません。
 どんなスポーツにおいても、状況が変化しないことなどありえません。秒刻みで状況は常に変化し、その対応いかんで有利不利があっさりひっくり返るのはさして珍しいことではありません。つまり、あらゆる競技において、もちろん余裕があるときには考えて導き出すことは必要ですが、そんな余裕のない時ですらも常に先を予測しなければならないのです。テニスでいえば例えばポイント間において今後の状況の推移を予測することが考えて行う予測、実際にプレーが始まってからは考えることが許されない予測といえるでしょう。そしてフットバッグにおいては、この考えることが許されない状況での予測が大きなウエイトを占めると私は考えています。
 そして特に考えることの許されない予測は、半ば無意識の領域で同時並行的に処理されていきます。その為にはただ今この瞬間の状況を正確に「感じ取る」という事が大切です。
 そしてこのいずれの予測も、未来のことに思いをはせても精度は上がりません(相手の心を読み取れる能力でもあれば別ですが)。むしろ未来の事に目を向ければ、予測の精度はガタ落ちになるでしょう。何故ならば、予測するために必要な今現在の情報から目を背けているからです。

 先にも述べたとおり、フットバッグにおいては自分のプレイが他者に直接影響を与えたり、あるいは他者のプレイが直接自分に影響を与えることはありません(良い演技をしてプレッシャーを与える等間接的な影響はありますが)。ですが、予測の精度を上げ数秒先の未来を戦う事は、演技種目と言えども必要です。
 自分の体勢や持久力、セットの精度、音楽とのシンクロニティあるいはタイミングのずれ、ストールの精度等、感じ取るべき項目は非常に多くあります。
 そして、それらをきちんと感じ取りプレイを続けることで、わずかに先の未来を予測する事が出来ます。そういった取り組みにより予測能力を磨くことで、自分がミスしそうになる状況を未然に防いだり、体勢を崩しそうになるのを立て直したりといった、状況に応じた判断や選択が出来るようになっていきます。
 逆に単に先の事に思いをはせるのは、ただの願望あるいは思い込みでしかなく、むしろ現在のプレイへの集中力を切らすことに繋がり、更には予測精度を著しく落とすことに繋がります。

 予測というのは先の事を予想する事ではなく、今の状況を正確に捉える事で導かれるものだという事を認識していた方が良いでしょう。