さて、大分投稿間隔があいてしまいましたが、44.良い技術の判断基準で示したポイントの3番目、応用範囲が広いという点についての記事です。

 応用範囲が広い技術が良い技術であるという事には殆どの人が同意すると思いますが、じゃあ具体的にはどういう事なのか、という人もいるかと思いますのでフットバッグの例で考えましょう。今回はclipper stallの技術を例にとります。
 初心者の壁ともされるclipper stallですが、その動作として落ちてくるバッグの勢いを吸収する必要があります。この時もっとも単純な方法は、「バッグの落ちる方向に合わせてストール足を動かしながら相対速度を小さくしてストールする」事です。また、足を動かす距離が長い程調整が容易になります。
 しかし、このような方法でストールすると大きな問題が有ります。それは、次のトリックに移るのが難しくなるということです。何故ならば、足を動かす距離が長ければ長い程、動かした足を止める為に必要な出力が大きく必要になるからです。また、大きな動作を行っている状態からすぐに静止するは、やってみればすぐにわかりますがかなり難しいです。
 フリースタイルやフリーシュレッドではclipper stallを行えばそこで終わりではなく、次のトリックに移らなければなりません。ですが、大きなストール動作を行うと、その動作を止めることが難しいために次の動作へ移る事が非常に難しくなるのです。
 特にstepping setの様にデックスが絡むセットはほぼ無理でしょうし、できたとしても安定しないでしょう。大きなストール動作を反動にしてセット出来るduckingがかろうじてという感じでしょうか(それでも望ましくない事に変わりは無い)。
 よって、clipper stallの感覚をつかむために、習得初期の段階においては有効かもしれませんが、後のためを思えばストール足の動作距離を可能な限り短くする必要があります。

 この時に誤解してはいけないのは、確かにストール動作(特に足の動作)を極小化したclipper stallが理想ではありますが、clipper stallが出来ない人も最初から取り組んだ方が良いかというと、一概にそうは言えないという事です。
 勿論そのような動作で感覚を掴めることが理想ではあり最終目標となりますが、出来ない事を出来るようなるという練習段階においては、むしろオーバーな動作の方が感覚を掴みやすいことも多いからです。
 こういう動きが理想だ、と言って非常に高度な感覚が要求される動作をまだ感覚を掴んですらいない人に教えても、殆ど進展が得られないことが少なくありません。感覚的に鋭い人はそれでもある程度練習すれば感覚を掴めることもありますが、やはりあまり効率的ではありません。
 まずは大げさな動作でも良いのでその動作の本質、いわばコツを掴ませて、動作を改善するのはそれからという手順を踏んだ方が、結局は最も効率的なことが多いです。
 今回の例のclipper stallで言えばまずはどのような形でもいいので、落ちてくるバッグの勢いを吸収する感覚を掴みます。そして、徐々にストール足の動く距離を短くするようにし、それと並行してストール足だけでなく全身を使って勢いを吸収するようにします(最初からできていればそれで問題ありません)。
 具体的には、clipper stallに移る直前に軸足に体重を乗せ沈み込む動作のタイミングをストールのタイミングに合わせます。これが出来るようになると、ストール足をほとんど動かさずとも軸足での沈み込みによりバッグの勢いを殺すことが出来るようになり、さらに次のトリックへの連鎖も確保できます。
 また、この沈み込む動作は最初は大げさでも構いませんが、やはりこれも大げさ過ぎると次の動作に移りにくくなってしまいます。ですので、次の動作に移りやすい程度まで沈み込む動作を小さくします。適度に沈み込んだ状態は、動きにくいどころかむしろ次の動作への準備動作になるので、これが出来るようになると連続で次の技に移る事が容易になるでしょう。
 更にこのストールの仕方の感覚を掴んだなら、ビタ止め(ストールした後ストールした体勢で静止する事)をやって、次のセットに反動を極力使わない感覚を掴むとよいでしょう。また、このビタ止めは沈み込み動作が大きすぎると、出来ないか出来ても非常に無理がある体勢になるので、沈み込み動作が適切かどうかを判定するためにも使えます。
 これが出来るようになったら、ある程度習熟しているセットをビタ止めの状態から始動することもかなり有効です。ビタ止め→トリック→ビタ止め→トリックという形で練習できるようになれば、ストールの技術はかなりのレベルに達していると思います。vasekが2008年のフリースタイルの決勝で、clipperビタ止め→ripwalkビタ止めの連続を行っているので、参考になると思います。

 これが応用のきく技術かどうかを考える例の一つです。もっともこういった分析はある程度の感覚を掴まないと難しい面もありますので、それが出来ない段階の技術については次の点を気を付ければよいと思います。

1.最初のセットがtoe系の技ならばtoe stall以外から、例えばleg overやpickup、mirageやillusion等からできるかどうか。
2.最初のセットがclipper系ならばclipper以外から、例えばbutterflyやducking clipper、whirlやdouble downからでも出来るかどうか。
3.最後のストールが次の動作に移りやすいやり方かどうか(但し次の動作とは、技術レベルにもよりますが2ADD以下のトリックやBOP及びpdx illusionを原則除きます)
4.上記の発展系として、ストール後次のトリックでデック系セットのトリックに移れるか
5.セットならばduckingを組み合わせられるか(pixie duckingやstepping duckingなど)
6.オリジナルの技(whirl、double down、dlo等)ならば、duckingから成功させられるか(ducking pdx whirl、ducking pdx dlo等)
7.最後のストールがclipper系ならばclipperを、第1段階としてxbd rakeに変更できるかどうか、第2段階としてswirlに変更出来るかどうか(whirl→whirling xbd rakeやwhirl→whirling swirl等)

 私が主に気を付けるのはこれらの点です。このうち1~4は動作の連続性に関する応用性であり、5~7はトリック単体の難易度に関する応用性です。
 私はこの中でも、特に5と6のセットやオリジナルの技をduckingと組み合わせられるかどうか、という視点は非常に大切にしています。
 どちらもduckingを絡めない技と比べてほぼ完全に上位互換の為に、技術の良し悪しを判断するのにうってつけですし、duckingを絡めると態勢が崩れていたりデックスがクリーンでなかったりする事をごまかせないことが多いからです(そういう技術力だったらそもそも成功しない)。更に、セットの正確性、セットしたバッグの位置の認識、ストール力、リズムの維持等、そのトリックを構成するほぼすべての要素においてより高い技術が求められるので、欠けている技術を発見しやすいというメリットもあります。私は、もしduckingと組み合わせられない場合は、何か技術的に問題があるのではないかと改善点を探るようにしています。
 7もかなり重要だと考えていますが、こちらはduckingとの組み合わせが出来るようになってからという事が多いと思います。特にswirlを付け足すことはどんな技であれ難易度が一気に跳ね上がりますので、おいそれと挑戦できるものではありません。但し、swirlを組み合わせるためにはduckinを組み合わせる以上にクリーンなデックスと適切なデックスポイントが求められるので、ある意味究極の矯正練習になります。ですので、最終的には必ず取り組むことになりますが。
 これらの事から、私はフットバッグを上達するうえで、なるべく早めにducking、xbd rake、swirlの技術を習得した方が良いと考えています。特にduckingはあらゆるトリックにおいて技術力を判断する基準となりうるので、duckingという系統の技術を習得するという以上にメリットがものすごく大きいです。
 またxbd rakeやswirlにおいては、組み合わせられる技においてはかなり技術的に高くないと組み合わせられないので、高等技術にはなりますがその元になるトリックは早めに習得していた方が良いでしょう。
 これらの視点が、技術を高めていく上で少しでも助けになれば幸いです。