3-5 クールダウンの効用

 負荷の高い練習やトレーニングを行ったときに、疲労を回復するには栄養補給と休息が大事である事は以前に述べました。
 クールダウンはその名の通り、運動を行った体を鎮めるために行うもの、言い換えるとスムーズに回復する状態に移行するための行為と言えます。
 ですが、意外とその効用については何となくで理解されている部分も多いと感じるために、きちんと記事にしておきたいと思います。
 クールダウンというと、とてもゆったりとした運動やストレッチを思い浮かべる人が多いかと思います。実際、私が所属していた大学のテニス部では軽いランニングとストレッチを行っていました。
 軽いランニングや同等のゆったりとした運動は、極めて強度の低い有酸素運動という事が出来ます。
 これとストレッチは実は効果が違い、どちらかを行うのではなく両方行う必要があります。

(1)軽いランニング等の低強度の運動(有酸素運動)の効果
 低強度の運動によるクールダウンには二つの効果があります。まず一つ目は乳酸の蓄積を減らすという事です。
 激しい運動を行うと、乳酸系の運動によって生み出された大量のピルビン酸が乳酸に変わり体に蓄積します。これは、有機呼吸でエネルギーを生み出すのが間に合わないため、増え続けるピルビン酸を処理できないためです。
 疲労物質ともいわれる乳酸ですが、実は生み出されてそのままという訳でもありません。実は乳酸はその後再処理され、エネルギー源に代わります。
 以前に乳酸は単なる疲労物質というだけではないというのはこういう事です。つまり、乳酸もエネルギー源として利用できるわけですね。とは言えそれには条件があり、有気呼吸が優位の運動下、つまりは運動負荷が高くない条件での運動が行われる場合です。
 行う練習やトレーニング内容にもよりますが、少なくともフットバッグにおいては乳酸系の運動強度を多く含みます。ですので結果として練習後にどうしても乳酸がある程度たまった状態になるのですが、これをクールダウンを行うことである程度消費するイメージです。
 休息日には完全に休むよりも軽い運動をした方が良いというアクティブレストも、この仕組みがあるからです。
 もう一つの効果は、身体の代謝を回復する代謝優位にするのスムーズに切り替えるという働きです。
 負荷の高い練習やトレーニングは、嫌気呼吸優位となる運動が多分に含まれます。そういった運動をしていれば、当然身体もそれに備えた代謝系を活発に働かせます。
 一方で身体を回復させる代謝は、当然好気呼吸系の代謝で、更に生み出されたエネルギーは主に運動ではなく身体の回復に使われます。
 つまり、強度の高い運動の代謝系と回復するための代謝系が違いすぎて、急には上手く切り替わらないのです。
 そこで、極めて低強度の運動を間にはさむことで、嫌気呼吸優位の代謝系を好気呼吸優位の代謝系に切り替えさせます。
 その後に運動を止めれば、好気呼吸系の代謝が活発になっている為エネルギーを生産する代謝は変える必要が無く、あとは主なエネルギーの使い先が運動から回復に切り替わるだけです。
 こうすることで、いきなり練習やトレーニングを終了して休むよりも、スムーズに回復に移る事が出来るのです。
 つまり低強度の運動を行えば、乳酸の蓄積を最小限に抑える事が出来て、更に乳酸を利用して生み出されたエネルギーが身体の回復にも利用できるという、一石二鳥な仕組みなわけです。
 さして負荷の高い運動を行っていなければあまり実感できませんが、高い負荷の運動を日常的に行うようになると覿面に違ってきます。

(2)ストレッチあるいは類似の運動の効用
 ストレッチや類似の運動を行う目的は、低強度の運動とは目的が異なっています(多少重なる部分はありますが)。
 フットバッグに限らず、様々なスポーツにおいて身体の全ての部位が均等に使用されるという事はまずありません。
 必ずどこかに疲労が偏りますし、様々な部位において捻じれや歪み、アライメントのずれなどが発生します。
 この状態を放置すると、筋に余計な負荷がかかり続けたり正常な血流を阻害するなど、回復を遅らせる障害となり得ます。
 その為、そういった偏りや歪みを矯正し、身体の状態を正常に戻すのがストレッチ等の効果です。
 ですので、これは「運動後にこういうストレッチを行えばよい」という事を提示する事が出来ません。
 それは、その日行った運動やその人の運動のくせ等により、いくらでも変化しうるからです。
 ですので、適切にストレッチを行うためには、自分の身体の状態を把握する感覚が欠かせません。
 これはすぐに身につくものではないので、毎日の中で自分の体の内面を感じ取ることを心がけながらストレッチ等を行う事で、徐々に身に着けるしかありません。
 しかし、これが身につけば身体の回復力が高まるだけでなく、怪我しにくい体作りにも非常に役立ちますので、常に意識して行う事を心がけましょう。
 なお、こういった感覚が全くなくてどうしていいか分からない人は、とりあえず股関節回り、腰回り、肩甲骨回りをほぐすことから始めてみるのも手です。
 勿論自分のゆがみにあったストレッチを行えることが理想ですが、上記部位をほぐすとある程度体全体がほぐれ、歪みやアライメンと等を矯正する効果が見込めるからです。体の中心部、そして体の中でも大きな筋肉を緩めることで、連鎖して末端も緩むイメージです。


 以上クールダウンの効果について説明しました。
 前回の記事で述べた練習の第3段階~最終段階は、クールダウンを行わないと継続するのがかなり難しいと思います。
 そうでなくても日々パフォーマンスを落とさずに練習を続けるには欠かせないことなので、面倒くさがらずきちんと行った方が後々自分のためになるかと思います。

3-4 練習計画のステップバイステップ

 さて、これまで練習計画のプランニングについて説明してきたことについて、実際にどのように段階を踏むかをまとめていきましょう。
 因みに以下で述べるプランは、これまでそこそこフットバッグを練習してきたけど、あまり本格的に取り組んでなかった程度の体力レベルからスタートすることを目安としています。
 ですので、例えば1年以上まともに運動もしてなかったような体力レベルの人はもう1段階程度軽い段階(それこそ週2~3回程度)から取り組む必要があるでしょう。

(1)第1段階~フットバッグのみ、あるいはフットバッグ+低強度の持久力トレーニング~
 この段階は、基礎的な持久力を身に着ける事とフットバッグの動きにある程度習熟する(動作の最適化を行う)ことを主眼に置きます。
 フットバッグの動きをある程度効率的に行わないと、どんなに持久力を身に着けてもすぐに練習を続けられなくなってしまうからです。これを言い換えると、専門的体力を身に着けるという事にもなります。
 またこの段階においては、単純にフットバッグを行うだけである程度持久力トレーニングとして効果も期待できます。
 ですので、まずはフットバッグのみを練習し、ある程度身体的に余裕があるなら遅いランニング等のあまり強度の高くない持久力トレーニングを行えばよいでしょう。
 練習は週4回を目安に取り組み、1回の練習時間は大体1時間30分から長くとも2時間程度を目安にスタートします。
 そして、なるべく早く1日の練習時間をある程度の質を保ったうえで、2時間からそれ以上(上限は3時間程度)できるようになることを目指します。。
 練習回数を週4回より少なくすることは非推奨ですが、どうしても疲労が抜けない場合は週3回と週4回を行ったり来たりしながら体を慣らしていきましょう。
 また、この段階で栄養補給やアクティブレストについてきちんと理解し、自分の体を回復させるために必要な行動に慣れて感覚をつかみましょう。
 安定して週4回、最低でも2時間以上の練習を行ったうえで、問題なく週4回の練習がこなせるようになれば、次の段階に移ります。

(2)第2段階~専門的な持久力トレーニングを段階的に取り入れる~
 この段階では、フットバッグだけを行う事にプラスして、専門的な持久力トレーニングに取り組み始めます。
 持久力トレーニングは、嫌気呼吸的な持久力も当然含みますし、嫌気呼吸を短い休息で断続的に反復する持久力(≒短い休息で回復する力)も含みます。
 考えられるトレーニングは100m~300m程度の短距離走、100m~200mのインターバルトレーニング、低強度のランニング(心拍数120~140程度で1時間程度)、高強度のランニング(心拍数140~160程度で30分~45分程度)等です。
 一番必要な道具が少なく、またある程度場所を問わず行えるという事で陸上の走る系のトレーニングを例に出していますが、もちろん他の方法(例えば自転車トレーニングなど)でも問題ありません。
 週4回の練習の内、フットバッグのみを行う日を2回、フットバッグ+トレーニングの日を2回が目安となるでしょうか。
 場合によってはトレーニングのみの日を設けても構いませんが、あまり推奨されることではありません。
 どうしてもフットバッグを行う場所や時間が確保できないときに、代替的に行うくらいの意識で問題ないと思われます。
 なお、週4回の練習だと2日連続で練習する日が必ずどこかにありますが、その1日目にトレーニングを入れないようにして下さい。
 特にトレーニングを取り入れた初期段階においてはかなり身体にダメージを負う事が予想されるので、翌日に休息日が無いとかなり危険です。
 また、短距離走やインターバルトレーニングは、これまで取り組んだことが無いのならかなり軽め(それでも負荷は高いですが)に行いましょう。
 回数的には、5回を目安にすればよいと思います(それでも負荷が高すぎる場合は3回に減らしても良い)。
 具体的なトレーニングの行い方は別記事である程度詳しく取り上げます。まずは持久力を鍛えるというよりも、トレーニングの行い方になれるくらいの感覚でちょうど良いくらいだと思います。
 後は自分の体と相談しながら、少しずつ量を増やしていきます。一気に数を増やすことはお勧めできません。
 例えば100mのインターバル5本になれたら、次は6本に増やしてみる、というような具合です。
 この時、フットバッグのみの練習は2時間30分~3時間、フットバッグ+トレーニングの場合合計で3時間程度(フットバッグ2時間+トレーニング1時間)というの一つの目安になるでしょう。
 そういった形で徐々に自らの持久力を高めていき、インターバルトレーニングで100mを10本あるいは200mを5本程度こなせる、ランニングにおいて30分間でキロ5分程度で走ってもそれなりに余裕がある程度まで達したら、次の段階に移って良いと思います。
 なお、この段階において自らの身体の変化に対する感覚を磨いておきましょう。
 例えば負荷の高いトレーニングを行った後に、自分の体がダメージをどれくらい負うのか、その状態ではどのような感覚になるのか。
 体の中で疲労が偏ってはいないか、偏っているとすればどのようにその疲労を抜くのか。
 体がきついと感じているのは、本当に身体的なダメージが深いのか、それとも単に苦しいトレーニングから逃げたがっているだけなのかなど等。
 それらの感覚の精度を高めなければ、今後取り組む5勤2休の練習プランで効果的な内容を行うのは難しいですし、ましてやその中で強度の高いトレーニングを行うのは至難の業です。
 トレーナーなどが居てきちんと体の状態とトレーニングの負荷を管理してくれるなら話は別ですが、それは非常に難しいと思われますので、自分でしっかりと自分の状態を精度よく判断できるようになる必要があります。

(3)第3段階~5勤2休に慣れる~
 この段階に達しているという事は、持久力を含めた体力レベルがそれなりに高い段階まで上がってきていることを示しています。5勤2休のプランに取り組める準備が整ったと考えて良いでしょう。
 以前にも述べましたが5勤2休の内訳は、2日練習して1日休み、3日練習して1日休みというペースが一つの基準となります。
 休息日の前日はフットバッグ+持久力トレーニング、それ以外の日はフットバッグのみという形が基本です。
 なお、1日の練習時間は目標としては1日2時間30分~3時間が目安ですが、移行したばかりの時期は短くすることも選択肢として有りです。それでも、2時間程度は行う必要がありますが。
 また、あまりにもつらいと感じる場合は、週4回+トレーニングのサイクルと行ったり来たりしたり、あるいは一時的に週5回でトレーニングは無しにするなどの対応も考えられます。
 5勤2休の練習プランは、自分の体をきちんと管理する意識が無いと続けられません。また、機械的に2日練習1日休み、3日練習1日休みのサイクルを繰り返せばよいというものでもありません。
 自分の体を的確に把握し、場合によっては休息日を1日増やし練習を週4回に減らしたり、あるいは練習回数を減らさないまでも強度を落としたりと柔軟な対応が必要になります。
 これは前段階で言及した自らの身体の感覚がある程度育っていないと難しいです。
 まだこのあたりの感覚が不安な人は、基本的に安全側に練習内容をシフトさせる方が無難です。
 結果的に練習内容の質が低下するだけなら自分の成長速度が多少遅くなるだけで済みますが、もしオーバートレーニングに陥いったり怪我をしたりすると、大きな停滞を生むことになります。
 それで済めばましな方で、場合によっては取り返しのつかない状態(競技継続が不可能など)に陥る可能性すらあります。
 特に一人で練習のプランニングから栄養管理まで行わなければいけない現状では、どうしても全ての面で完璧を期すというのは難しい面があります。
 殊更に、5勤2休に取り組み始めた初期においては、過剰なくらい自らの身体に注意を払いましょう。
 練習の強度については、場合によっては前段階で取り組んでいた内容から落としても構いません。
 それで5勤2休に慣れ、その上で徐々に練習とトレーニングの強度を上げてゆきましょう。

(4)第4段階~5勤2休で高い負荷の練習及びトレーニングを行う~
 第4段階です。5勤2休の内容で高い負荷の練習やトレーニングを行います。
 フットバッグの練習においては技術的な課題の方が壁になるでしょうが、トリプレス中心のシュレッドやビースト、あるいは単発のトリックでは7ADD以上の練習などが考えられるでしょう。
 持久力トレーニングにおいては300mダッシュを完全休息をはさみながら全力で5本、100mインターバルを20本あるいは200mインターバルを10本およびその組み合わせ、キロ4分~4分30秒程度のペースでのランニングを1時間(ペース変化有り)などがメニューとして考えられます。
 なお、強度が上がるだけで練習スケジュールについては前段階とほとんど同じと考えて構いません。
 更に300m走やインターバルトレーニングにおいては、個々の記録についても高いレベル(300mなら45秒以内、100mインターバルなら最後の1本を16~15秒以内、200mなら最後の1本を36~34秒以内等)にすることを意識します。
 この段階は練習時間そのものがあまり変わらないのですが、練習内容の強度が非常に上がり質の面でかなりの違いが出ます。
 また、確かに非常に高い効果が見込める練習やトレーニングを行えますが、人の身体的な限界に近づいていることを意識しなければなりません。
 ですので、自らの身体の変化に対しても最大限の注意を払う必要があります。
 非常に高い負荷の練習やトレーニングを行うという事は、それだけオーバートレーニングや障害を負う可能性が高まるという事だからです。
 また、免疫力も相応に落ちるため、病気で体調を崩す事にも注意しなければなりません。
 食事や睡眠についてもかなり注意を払う必要があり、感覚としては生活の大部分が練習やトレーニング及びそのコンディショニングを中心に回るようになります。
 様々な点でストレスのかかる生活になるので、身体の管理のみならず精神的なコンディショニングも行う必要があります。

(5)最終段階~5勤2休で練習を行いそのほぼ毎回にトレーニングを追加して行う~
 最終段階です。練習日のほぼ全てでフットバッグ+トレーニングの形となり、更にそこに高強度のトレーニングなどを取り入れます。
 時間的にはフットバッグ2時間30分+トレーニング30分~1時間やフットバッグ3時間+トレーニング30分程度となります。
 また、休日など1日時間が取れる場合には、午前3時間練習+午後3時間練習といったような2部練も必要となるでしょう。
 あくまで連続して3時間を超えるような練習を行うと質が落ちるだけで、間に長めの休息を入れたり栄養補給を行えば、2部練という形で6時間程度の練習時間を確保することは可能です。
 例えば朝9時から12時まで練習、12時から14時まで昼食と休憩、14時~17時まで練習というような具合ですね。
 その中で、もっとも強度の高い内容となる日は休息日の前日に設定します。
 疲労がある程度たまっても5勤2休を崩すことはせず、練習しながら身体を回復させるということが出来るようにならなければなりません(限度はありますが)。
 体力的な面でも技術的な面でも極めて高いレベルにあるために、本人はアクティブレストのつもりで行っている運動が、一般人から見るとガチ練にしか見えない、という事が起こり得ます。それゆえに毎日練習しているように見えるのですが、実際には休息日をはさんでいるのです。
 他のメジャーな競技ならば、アマチュアの最上位レベルから、実業団所属やプロとして活動しているレベルまでここに含まれます。それだけ幅があるという事ですね。
 もしこの段階において質の高いレベルまで到達できれば、心技体の体の面においてはほぼネックとなる事はなくなったと考えて良いでしょう。
 また、心の面においても相当なレベルに達しているはずです。なぜなら、心の面でも高いレベルに達しないと苦しい練習をこなせないからです。
 ここまで高い体力レベルにあるならば、技術的な進歩も相当な速度で進むことが期待されます。
 但し、第4段階以上に高い負荷がかかるため、更なる注意を必要とします。栄養学、運動学、生理学、体力学等の運動理論についての知識もある程度欲しい所です。
 また、この段階になると単に自らの身体を鍛えるという考えだけでは不足で、精神面での成長も重要になってきます。
 可能であればハートレートモニター(心拍数計測器)を始めとした、自らの運動を客観的に測ることのできるデバイスを併用した方が、より効果の高い練習を行う助けとなりますし、自らの感覚の精度を高めるのにも役に立ちます。
 これについてはいずれ別記事で。

 ここまで練習計画のプランニングについてみてきました。これ以降は、負荷の種類や練習の量と質についての考え方などについても説明していきたいと思っています。

3-3 回復を考慮したプランニング

 ここまで練習のプランニングについて簡単に説明してきました。
 ここで、「練習回数は5勤2休がよいのか、なら早速取り組もう!」と思った人はちょっと待ってください。あなたは、その練習プランを実行できる下地があるでしょうか。
 5勤2休で強度の高い練習やトレーニングも行うプランは、今まで競技者として練習やトレーニングに取り組んだことのない人が、いきなり取り組めるものではありません。
 一応1~2週間位なら何とかなるかもしれませんが、それを継続するのは非常に難しいはずです。
 それは持久力を含めた体力が低い事も然ることながら、自らの身体を回復させる力(以降回復力と言います)がまだ発達していないからです。


 以前の記事で、身体が回復しきってないときに高い負荷を加えてしまうと、オーバートレーニングになってしまうと述べました。
 そして、普段大して負荷の高い練習やトレーニングを行ってこなかった人が、いきなり上記のようなプランで練習したらオーバートレーニングまっしぐらです。
 実は最初に持久力を鍛えることを優先する方が良いと書いたのは、この回復力を高める事に大きく寄与するからでもあります。
 つまり、持久力を鍛えることが日々の練習の質と量を確保するのに必要なだけではなく、次の練習までに自らの身体を回復させるのにも必要だという事です。
 また、持久力をはじめとした一般的体力(回復力も含む)は、漸進的な成長しかしません。技術的な要素も大きい専門的体力は、きっかけがあったりコツをつかんだりすると一気に変化することもありますが、一般的体力はそうでは無いという事です。
 その代わり、やった分だけほぼ確実に結果が返ってくるものでもあるので、日々の積み重ねが大切になります。
 つまりは、自分の体力を把握したうえで、しっかりと回復できるペースで練習計画を立て、段階を踏んでステップアップしていかなければならないのです。

 回復力については練習していくうえで自然と高まっていくため、あまり深く考えない人もいるようですが、非常に大切な視点です。
 オーバートレーニングに陥ったり、急性・慢性を問わず怪我をしてしまうと、練習が大幅に滞り体力が低下するだけでなく、技術の退行も起こるからです。
 こういった視点から管理してくれる指導者やトレーナーを付けることが現実的に不可能なフットバッグでは、自分で管理せざるを得ません。
 ですので、自らの身体の管理については「過剰なくらいでちょうど良い」くらいに注意した方が良いでしょう。

 競技者としての練習を行うためには、まずはきちんとした下準備が必要だという事です。
 次回は、これまでの内容をまとめながら、更に具体的な練習のプランニングについて書きたいと思います。

3-2 休息の重要性

 休息は当然の話ですが、自分の体が受けたダメージを回復させ更にパフォーマンスを上昇させるという意味で、極めて重要です。特に体力については、休息時に成長していると言っても過言ではありません。
 その為にはどうすればよいかという事ですが、3つポイントがあります。
 適切な栄養を取る、適切な睡眠をとる、休息日に非常に軽めの運動をするの3つです。 

1.栄養について
 栄養については日々バランスの良い食事を行う事が非常に大切ですが、負荷の高い練習をした日と休息日には優先的に補給する必要がある栄養素が有ります。
 それは糖質とタンパク質です。また、この二つが重要ではありますが、糖質が最優先です。
 強度の高い練習をすれば、当然体内の糖(グリコーゲン)は大量に消費された状態です。
 回復のみならず生命維持活動において糖を使用しないという事はあり得ない為、なるべく早く補給する必要があります。
 これは、特に強度の高い練習を行った当日は、意識して摂ることをお勧めします。
 とは言え、栄養補給は基本的に食事からの摂取が望まれること、フットバッグにおける身体に対する負荷を考えれば、サプリメントの使用まではあまり考えなくてもよいでしょう。
 あくまで、通常の食事では疲労が抜けにくいと感じる、あるいは回復速度が追い付かずその理由が栄養面にあると感じる場合に、試しに摂ってみる程度に考えて良いでしょう。
 サプリメントとしては、市販のプロテインを取れば十分でしょう。あれには糖質も含まれている上に、吸収速度もかなり早いですし。
 また、サプリメントにおいて、科学的に効果が一定以上認められているものはプロテイン位しかないという事情もあります。
 そのあたりも含め、プロテインについては別記事でまたある程度詳しく取り上げます。ざっくりと推奨基準を挙げると、ホエイプロテインでタンパク質の含有量が70%以上あれば十分です。後は価格や味を考慮し、継続して使用できるものを選ぶこと。
 基本的に人の体の発達は、その大半がトレーニング内容によって決定され、ボディビルのような極端な筋肥大および維持を目的にしない限り、サプリメント等の摂取する栄養素の影響度は極めて限定的です。
 なので、吸収速度がどうとか求める効果に合わせたプロテイン選びとかは考えなくても問題ありません。
 また、あくまでサプリメントはその名の通り補助なので、通常の食事をおろそかにしないように注意しましょう。
 なお、糖質についてはすぐに枯渇するため補給する事が重要ですが、あまり溜め込めないという事に注意して下さい。
 糖質がエネルギー源となるからと言って、たくさんとってもグリコーゲンの貯蔵量は基本的に増えません。余剰となった分が脂肪に変わるだけです。
 ですので、確かに失ったグリコーゲンを補うための糖質の補給は重要ですが、大量にとれば良いってものでもありません。
 ある程度価格の安いプロテイン(但しタンパク質の含有割合が70%以上の物に限る)に含まれているもので約4g程度ありますが、その後さして時間をおかずに食事を摂るならばその程度でも十分です。
 運動後に食事まで時間があるのならば、おにぎり1個程度(炭水化物換算40g程度)が上限でしょうか。スポーツドリンクの500mlペットボトル1本分でも、概ね似たような量になります。

2.睡眠について
 基本的に身体のダメージを回復する主な時間帯は、睡眠時という事になります。
 その為、どんなに質の良い練習を行い食事をきちんととったとしても、睡眠の量と質が悪ければ回復は遅れます。それも、結構致命的に。
 また、睡眠において最優先は量の確保だと言われています。どんなに質が良かろうが、それで睡眠時間を短縮することは原則としてできません。
 例えば8時間の睡眠が必要な人が、質が悪く9時間必要になるあるいは追加で昼寝が必要になるという事はあっても、質の良い睡眠がとれたから7時間で良いなんて事は起こらないという事です。
 必要な睡眠時間は人によってある程度幅があると言ますが、ショートスリーパーやロングスリーパーと言われる特殊な体質でない限り、基本的には概ね7~8時間の間に収まるようです。
 この各個人における最適な睡眠時間は、訓練によって短くする事は出来ないと言われています。
 短時間睡眠を繰り返すと、人によってはその状態に慣れてしまい、主観的に問題ないように感じる場合も有る様です。しかし、それは決して適応したわけではなく、ダメージ自体は蓄積していくと言われています。
 もちろん最適な睡眠時間は先にも述べた通り人それぞれですが、大半の人は7~8時間の間程度に収まると言われている事を考えれば、7~8時間程度の睡眠を心掛けなければならないでしょう。
 もちろん日によって多少の変動はあったとしても、最適睡眠時間から30分以内の誤差にとどめないと、負荷の高い練習を続けることは厳しいはずです。
 また、どれだけ削ってもこれ以下にしてはならないという最低ラインとして、6時間の睡眠時間を切ることが無いようにしてください。それ以下になってしまうと、身体に及ぼす悪影響が、一般的な生活を送る人であっても甚大になると言われているからです。
 ましてや強度の高い練習を行う人にとっては猶更危険なので、どんな都合が悪かろうが強制的かつ即時に6時間は確保しましょう。
 もしそれが無理だというならば、競技者として生活を送ることを諦めるよう勧めます。
 これは、「絶対に譲ってはいけないラインの一つ」であり、優先順位で言えば最優先にすべき項目です。どれだけ練習日を確保するとか、練習内容をどうするという様なことは、この適切な睡眠時間を確保した後の話なのです。
 それすら確保できないというのは、「物事に優先順位を付けて判断する事が出来ない」か、「競技者として生活することが許される立場にない」かどちらかでしょう。
 どちらにせよ、その様な状態で競技者として高みを目指そうとしても、自分や周囲に不幸しか生まないと思います。怪我をしたりオーバートレーニングに陥る、あるいは精神的な不調をきたす可能性もぐっと高くなりますしね。
 因みに、睡眠時間が長くなってしまう方の誤差は心配する必要はありません。なぜなら、人は最適な睡眠時間を超えて眠ることはできないからです。これが、いわゆる寝だめが出来ないと言われている理由です。
 仮に半日とか眠ってしまうという場合は、ロングスリーパーである等の体質的なものか、睡眠時無呼吸症候群等の睡眠障害により実はちゃんと眠れていないか、睡眠不足によって睡眠負債を抱えており、その解消に充てられているかのいずれかです。
 体質や睡眠障害があるのでもない限り、休みは昼まで寝てしまうとか、いつでもどこでも眠ることが出来るという状態は、典型的な寝不足の状態だと言われていますので、心当たりがある方は気を付けた方が良いでしょう。

3.軽めの運動をする
 これは結構よく言われることなので知ってる人も多いかと思いますが、疲労を取るためには完全に休養を取るよりも軽い運動をした方が良いと言われています。
 いわゆるアクティブレストというやつですね。
 軽い運動というのがピンとこない人が居るかもしれませんが、要はとても運動強度の低い有酸素運動を15分から30分程度行いましょうという事です。
 軽い強度というのは心拍数が100~120程度、目安としては普通に会話しても問題ない程度に軽い運動という事になるでしょうか。
 一番分かりやすい例としてはとてもスピードの遅いランニングだと思います。
 なお、ランニングなら速度の変化を極力行わず一定のスピードで走り、勾配があまりないコースを走りましょう。
 あるいはウォーキングでも構わないと思われます。
 特に体力が低い場合には軽いランニングすら結構な負荷になる事もありますので、その場合にウォーキングは非常に適した運動となるでしょう。
 練習回数について5勤2休が良いとは言っても、その2休は全く体を動かさないという日ではないという事です。

3-1 練習内容の考え方と練習回数

 さて、これまで代謝の仕組みの説明を踏まえて持久力について色々と説明してきました。
 この章ではより具体的に、実際にどのようにして練習計画を立てていくのか、という点について順に解説していきます。

1.練習は週に何回すべきか
 この点については、人によっていろいろと意見があるように思います。
 練習は毎日するべきだ、いや休息日を設けなければならない、練習の量よりも質を重視すべきだなど等。
 この最後の練習の量と質については個人的にかなり思うところがあるので、後に単独の記事で詳しく触れます。
 まず、競技者としてパフォーマンスを高めるために、確保すべき必須の練習回数から考えましょう。
 結論から先に言うと、週に4回の練習は最低限確保しましょう。
 もし週に3回以下の練習しか確保できないなら、競技者としてのレベルを獲得するのは非常に難しい事を覚悟すべきです。
 まあ、週4回でもかなり厳しいものが有りますが、週4回と週3回には非常に大きな差が存在します。
 これは、練習プランを立てるとすぐにわかります。
 週3回で均等に練習を配置(一般的にその方が効果的)すると、「連続して練習する日がなく、2日空く日が1回ある」プランになります。
 これが週4回になると、「練習しない日が2日以上連続して存在せず、週に1回は2日連続して練習する日がある」プランになります。
 この練習しない日が2日以上連続しないという点が、技術習得と持久力を含めた体力の向上の両面から見て非常に大きな差となります。
 基本的に、人が技術を身に着けるにしろ体力を向上させるにしろ、継続的な反復以外の方法はありません。そしてそれは、一定以上の頻度を保つ方がとても効果的です。
 よくフィットネスやダイエットにおける運動処方において、週に一回重い練習(例えば2~3時間程度のランニング等)を行うよりも、同じ時間を複数回に分散させた方が良いとされていると思いますが、同じ考え方に基づきます。
 特に競技レベルでのパフォーマンス向上を考えたときに、やはり二日休息日が連続する、ましてやそれが毎週あるというのはかなり罪が重いのです。
 週に1回、月に4回しか変わらないじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、この差は単純にその回数以上の差となって現れます。
 イメージとしては、週4回もしくはそれ以上の練習を行っている場合は常に前進している、週3回以下の練習であればトータルでは前進しつつも後退が含まれるという感じです。
 因みに週2回になるとかなり維持に近くなりますし、週1回になってしまうと維持が最大の成果になってしまうと言えるでしょう。
 

2.ならば毎日練習すればよいか
 先ほどの事を踏まえた上で、練習の量のみを重視すると毎日練習することが最も効果的と考えてしまう人もいると思いますし、実際にこの考え方のスポーツ指導者もまだそれなりに存在するように思います。
 しかし、人の体の仕組みを考えた時に、特に体力向上の観点から毎日練習するのはあまり良くないという事が分かります。
 人の体力が向上するのは、超回復の原理もしくは負荷に対する適応の概念に基づきます。
 人の体に負荷をかけるとダメージを受け一時的に体力が低下しますが、そのダメージを回復する際にダメージを受ける前よりも高い水準まで回復させるというのが超回復の原理です。
 そして、この高い水準まで回復したときに次の練習を行うようにすれば、体力が向上していくという訳です。
 この超回復はそれなりの休息が必要であり、かかる時間は体へのダメージ(負荷の高さ)に応じて変化します。
 負荷に対する適応に関しても、負荷をかけたその時にすぐに体力等が向上する訳ではなく、やはり日々の休息の中(特に睡眠中)にパフォーマンスが向上します。
 あまり負荷が高くない内容なら、適切な栄養を摂った上で一晩寝れば大体回復しますが、高い負荷がかかった場合は2日程度の休息を必要とする(練習の合間に丸1日の休息日が必要になる)ことが多いですし、場合によっては更に休みが必要になったりもします。
 もし高い負荷をかけた後に、元の水準に戻らない状態でさらに負荷をかけると、体力はむしろ低下していきます。
 この状態が続くと、慢性的な疲労によりパフォーマンスが低下するのみならず、様々な障害が発生しやすくなってしまいます。いわゆるオーバートレーニングというやつですね。
 そういった訳で、毎日練習すると休息日が無いため、どうしても高い負荷の練習は行えないことになります。
 そうなると、どんなに量は確保していると言っても質で著しく劣るため、結局は非効率な練習になってしまうでしょう。
 毎日練習していると凄く頑張っているように聞こえるかもしれませんが、実際の所は毎日こなせるような練習しかできない(≒割とぬるい練習である)という事です。

(3)理想の練習回数
 ここまで説明してきたことを踏まえて、じゃあ何回の練習が理想なのでしょうか。
 まだ議論の余地はあると思いますが、現状では「5勤2休」が良いのではないかとされています。週に5日の練習およびトレーニング、2日が休息日という事です。仮に増やすとしても6回まで、毎日はタブーです。
 週5日の練習の場合で考えて、大抵の場合は均等配置にするので、2日練習して1日休み、3日練習して1日休みという事ですね。もっとも、このあたりはプランの立て方によって色々と変化しますが。
 そして、休息日前日の練習は身体的に負荷の高い練習を行い体力向上を主目的とし、それ以外の日は体力向上よりも技術習得に重きを置くとよいでしょう。
 こうすると、技術習得と体力向上の両面から練習量とその質を確保しやすく、効率的な練習となりやすいです。
 目安として、土日連続して練習(日曜に負荷の高い練習)、月曜休み、火水木連続して練習(木曜に負荷の高い練習)、金曜休みという事になるでしょうか。
 これは、一般に土日が休みの人が多く時間を取りやすいため、2日連続でも平日の3日連続に匹敵するような量を確保しやすいためです。
 ですので、土日より平日に時間が取りやすい人はこの限りではありません。
 また、休息の取り方はその人の回復する能力によって変わるので、機械的に上記のスケジュールで行えばよいというものでもありません。
 特に非常に負荷の高い練習を取り入れた当初などは、1日の休息日だけでは回復しきれないことも十分考えられます。
 その場合は休息日をもう1日取ったり、練習するにしても内容を軽めにするなどの調整を行いましょう。規律は大事ですが、柔軟性を持たせることもまた重要なのです。

2-2 脂肪を活かす

 今回は有機呼吸系の最後のテーマ、脂肪の燃焼についてです。
 いかに好気呼吸が効率が良いと言っても、使用するエネルギー源がグルコースだけではすぐに体内に貯蔵しているグリコーゲンが尽きてしまいます。
 グリコーゲンの貯蔵量はトレーニングなどによって増やすことがほとんどできません。
 グリコーゲンは肝臓、血液中、筋肉などに存在しますが、それぞれに存在する限界があるためです。
 筋肉量が増えればその分貯蔵量は増えますが、当然消費量も多くなりますのであまり持久力に効果的に働くわけではありません。
 一時期グリコーゲンローディングという手法により通常時よりグリコーゲンを多くする手法がもてはやされましたが、メインストリームとはなっていないと思います。
 その理由は、大きくはコンディショニングや食事量のコントロールがきわめてシビアであった事で、その割にはパフォーマンスへの寄与度が限定的であった為、多くのケースでそこまで推奨されるには至っていません。
 しかしながら、先にも述べた通りグリコーゲンの貯蔵には限りがあるため、それならば別のエネルギー源が必要となるという事で、脂肪をエネルギー源とした好気呼吸の能力が重要になってくるわけです。

 因みに、貯蔵されているグリコーゲンのみでどの程度運動できるかというと、概ねフルマラソンを走り切れるかどうか(ただしトップレベルの話)という程度の様です。
 こう考えると、一般的な競技レベルだとそこまで問題ない様に感じるかもしれませんが、実はそうでもありません。
 そもそもグリコーゲンが空になるほど運動するという事は極めて身体にとって危険なことですし、リカバリーも大変です。
 また、確かに2時間以上を高速度で走り続けるというレベルの運動強度はそうそうないかもしれませんが、とは言え一日の運動がそれなりの強度で3時間程度に及ぶという事は普通に起こりえます。これをグリコーゲンのエネルギーだけで賄うというのは、なかなかに厳しいものがあるのです。
 ですので、グリコーゲンの消耗を抑えられれば抑えられるほど、日々の練習やトレーニングに余裕が生まれ、また高頻度で繰り返すことができるようになります。

 人はグリコーゲンを利用した好気呼吸が優位になりやすく、脂肪を利用する能力は意識的に鍛えないといけません。
 もっとも、脂肪を利用する好気呼吸をどんなに鍛えたとしても、グリコーゲンを利用した好気呼吸より優位になる事は無いようです。
 私が大学で学んでいた頃は、最も脂肪を利用している状態でも全体の50%程度がせいぜいだと言われていました。

 脂肪を利用した好気呼吸の能力を鍛えるためには、その特性について知っておく必要があります。
 それは、人は常にグルコースを利用した好気呼吸を使いたがるという事、そして代謝が安定しないと脂肪を利用した好気呼吸の比率は上がっていかないという事です。
 その為、以下の2点を意識すると良いでしょう。

(1)普段の練習時に砂糖、ブドウ糖液等、果糖等の等類が入った飲料(スポーツドリンクなど)を飲まない

 これは人がグリコーゲンを利用したがるという性質を考慮してのことです。
 通常人の代謝は運動し始めは主にグリコーゲンが使用され、代謝が安定すると脂肪を利用する比率が上がっていきます。
 しかし、そうやって脂肪の代謝比率が高まっても、そこで砂糖やブドウ糖液糖等が多量に含まれる飲料を取ると、すぐに血糖値が上がって糖を利用する代謝比率が高まってしまい、脂肪があまり使われなくなってしまいます。
 それが最高のパフォーマンスを発揮しなければならない日(試合等)であればそれでもいいんですが、持久力を鍛えるという観点からすると平常の練習時に使用するのは好ましくありません。
 スポーツドリンクというといかにも運動時の水分補給に最適というような宣伝がされ、またそういうイメージを持っている人も多いと思いますが、状況によっては全く適した飲料とは言えない(むしろ害も多い)為、使用する際は本当にそれが必要な状況かを適切に判断しましょう。
 また、クエン酸入りの飲料も同様に好ましくないので注意です(結局糖利用の代謝回路が使われるため)。
 多量に汗をかく場合において、運動時に適切なミネラル補給が重要になるケースもありますが、殆どのケースにおいて日頃の食生活がきちんとしていれば、単純に水を飲むだけで問題ないかと思われます。
 基本的にただの水(ミネラルウォーターを含む)を摂るだけで問題ありませんし、むしろ日々の練習は可能な限りそうあるべきでもあります。

(2)食前あるいは食間(空腹時)に強度の低い運動(有酸素運動)を長時間行う

 これは、体内のグリコーゲンが減少しているときにあえて運動を行う事で、脂肪の使用する能力を高めようという手法です。
 但し、気を付けなければいけないのは、絶対に強度の高い運動(嫌気呼吸優位の運動)を行ってはいけないという事です。
 常に有酸素運動が優位な運動を行う事が絶対条件で、目安としては心拍数130~140位の運動を心がけるとよいでしょう。
 有酸素運動的な持久力が高い人は心拍数160くらいまでは大丈夫でしょうが、一般的な人であれば140くらいが無難だと思います。
 尚この時に、なるべくペース変化を付けず一定の速度で走るようにしましょう。また、アップダウンの多いコースも避けるべきです。
 空腹時に糖を多量に必要とする運動(≒嫌気呼吸優位の運動)を行う事はかなりリスクが高く、場合によってはトレーニング効果を得るどころか逆効果になってしまう事すらあります(これはまた別記事で書きます)。
 ちょっと軽いかなというくらいの強度の運動を、30分から1時間程度行えば十分だと思われます。

2-1-3 好気呼吸的な持久力について

 さて今回は好気呼吸的な持久力の話です。一般的な方が持久力と言われた場合、ほぼこの持久力を想像するでしょう。
 今回も、好気呼吸によるエネルギー(ATP)生産という観点から考えます。
大事な能力は二つあり、「酸素を体内(細胞内)に取り込む能力」と「酸素を用いてATPを生産する能力」に分けて考えられます。

(1)酸素を取り込む能力
 こちらは読んで字のごとくですが、好気呼吸によりエネルギーを生産したいならば、各細胞にきちんと酸素が供給されなければなりません。
 この能力が低いと細胞に酸素が供給されず、低い運動強度ですらすぐに嫌気呼吸優位になってしまいます。
 分かりやすい症状としては、すぐに「息が切れる」という事でしょうか。ですので、この能力を鍛えることを心肺機能の強化と言う事も良くあります。
 これは更に分けると「肺が酸素を取り込む能力」と「取り込んだ酸素を各細胞に運搬する能力」に分けられます。
 前者については肺機能に高い負荷をかけることで鍛えることが出来ます。インターバルトレーニングはその代表と言えるでしょう。
  ランニングについてある程度学んだ人であれば、VO2MAXを鍛えるという言葉を知っているでしょうが、それともほぼ同じ意味となります。
 酸素を運搬する能力については、心臓の能力を鍛えることと血液による酸素の運搬能力そのものを鍛える事が挙げられます。
 心臓の能力については肺の能力を鍛えることとほぼ一緒のトレーニング内容となり、インターバルトレーニングなどで鍛える事が出来ます。
 もっとも、インターバルトレーニングと言っても多くの種類がありますが、フットバッグに適しているものとして一例を挙げると、200mのインターバルでしょう。
 やり方としては、ある程度高強度(心拍数が160を超える強度)で200mを走り、2分~2分30秒程度休息後また200mを高強度で走る、というルーティーンを5~10回程度行います。休息は止まって休んでもいいですし、200mをゆっくりジョグするのも良いでしょう。
 フットバッグそのものでインターバルトレーニングを行いたい場合は、高強度のシュレッドを30~40コンタクト程度、20秒~30秒程度休息、高強度のシュレッドといったルーティーンを5~10セット程度繰り返してみてください。
 フットバッグで行う場合、どうしても200m走ほどには強度を上げられないので、その分休息を短くすることで心肺に負荷をかけます。
 血液による酸素運搬能力について鍛えることはかなり難しいです。一応、マラソン等の長距離種目の選手が行う高地トレーニングは、その代表と言えるでしょうか。
 高地トレーニングはあえて酸素が薄い状況下でトレーニングすることで、血液中に含まれる赤血球の酸素と結びつく能力を高めるというのが、一般にその効果の根拠となっています。
 但し、先にも言った通り一般的なトレーニング手法としてあまり現実的でない、それこそ数週間単位で高地トレーニング合宿に行くとかしないと無理なので、心肺機能を鍛える方法をトレーニングの中心に据えることとなるでしょう。

(2)酸素を用いてエネルギーを生産する能力
 どんなに酸素が上手く供給されても、それを用いてエネルギーを生産する能力がおいつかなければ嫌気呼吸優位に傾いてしまいます。そうなると結局は長い運動が続けることが不可能になります。
 こちらの場合症状としては、フットバッグなら「足が動かなくなる」感覚が一般的でしょうか。
 この能力は好気呼吸がミトコンドリアで行われることから、ミトコンドリアの能力などと言ったりもしますね(あまり一般的ではないですが)。
 こちらの能力は、一定の強度の運動を長時間行う事で鍛える事が出来ます。
一般的は、心拍数140~160程度の運動を少なくとも30分以上、なるべくなら1時間あるいはそれ以上行う事が良いとされています。
 フットバッグで同様の練習を行う場合は、技の難易度や強度を落として、コンタクト数を増やす練習が必要となります。まずは100コンタクトを目安に、連続して蹴ることを目指してみると良いでしょう。
 もちろんノードロップが理想ではありますが、ドロップしても問題ありません。その代わりに、息をつかずに拾い上げ、シュレッドを継続してください。
 とは言え、フットバッグのシュレッドでは、どれだけ強度を落としてもせいぜい2~3分程度が限界と言え、これは好気呼吸系の運動においては、最も高い強度に属します。
 ですが、これより強度を落として長時間というのは難しいので、やはりフットバッグ以外で長距離・長時間のランニングを取り入れることが、最も効率が良いと思われます。

 さて、好気呼吸によるエネルギー生産という観点から持久力について考えてきました。
 ここで注意したいのは、インターバルトレーニングを行うことは確かに心肺系を鍛えることをメインとしますが、ではエネルギー生産能力のトレーニングにならないかと言われればそんなことは無いです。
 また、低い強度で長距離・長時間走るトレーニングが、心肺系のトレーニングにならないという事も、同様にありません。あくまでどちらに比重があるかという話です。
 ですが上記のことを考えると、インターバルトレーニングのような心肺機能に負荷をかけるトレーニングだけでも、ランニングのような長距離走だけでも十分でないことが分かります。
 どちらも重要なトレーニングであり、両方をバランスよく行っていかなければならないでしょう。
 しかしながら、フットバッグの練習そのものがそれなりに強度が高く、どちらかと言えばインターバル的なトレーニング内容を多く含むので、まずはどちらか一方を取り入れるとなれば、艇~中強度で長距離・長時間のランニングを取り入れた方が効果が出やすいと思われます。

 おそらく、フットバッグを行うだけでは、特に上級者においては十分な負荷を得られなくなることが多くなるでしょう。
 心肺機能に負荷をかけるという面では、単純に強度が不足します。
 そのことを考慮した内容の練習を行えば負荷をかけることは可能ですが、そういった練習だけではなく、技術習得をメインとした練習も行わなければなりません。
 特にフットバッグは技術要素が占める割合が非常に多い競技特性なので、身体的な負荷の高い練習ばかりを多くするわけにはいきません。
 また、酸素を用いてエネルギーを生産する能力については、フットバッグ自体がペース変化が激しくまた長時間一定の強度で行うような運動でもない(嫌気呼吸優位に傾きやすい)ことから、こちらの面で鍛えることはあまり現実的ではありません。
 もちろん一日の練習が1~2時間となればそれなりに好気呼吸系の持久力は鍛えられますが、限界があるのです。
 フットバッグを始めた段階、要は各種体力が低い状態においてはフットバッグだけを行うことで十分に鍛えられますが、ある程度競技力が向上してきた段階においては、フットバッグのみで持久力を鍛えることはかなり難しくなります。
 そのため、やはりフットバッグ以外の運動を取り入れることが、総合的に見れば持久力を含めた体力の向上には効率が良く、競技力を高めるという点でも有効だと言えます。

※注意すべきこと
 確かに自分が取り組む競技以外のトレーニングを取り入れることは、やり方さえ間違えなければ非常に高い効果を生みます。
 しかしながら、当然そこには守らなければならない大原則があり、「自分の競技そのもの(ここではフットバッグ)の練習時間を、それ以外の運動系によるトレーニング時間が超えてはならない」という事です。
 基本的に一般的体力を鍛えるために取り入れるトレーニングは、やればやるだけ確実に結果が返ってくることが多く、それが楽しくて、気づけば自分の専門種目の練習以上にトレーニングに時間を費やしてしまうという事態に陥る人が少なくありません。
 あくまで、何のためにトレーニングをしているかという目的(自分の専門種目のレベルを高める為)を明確にし、その手段であるはずのトレーニングが目的となってしまわないように気を付ける必要があります。

2-1-2 乳酸系の持久力について

 前回からの続きです。
 これまで述べてきた内容を踏まえた上で、各種持久力を身に付ける為にはどうしたらよいでしょうか。


 まず、乳酸系の持久力の話からしましょう。
 乳酸系の運動については長くとも30~40秒程度と書きましたが、これは厳しいトレーニングを積んだ人の話で、そうでない人は20秒持てばよい方です。200mを最後までスピードを維持して走りきれない感じですね。何なら、100mであっても最後の方は大幅にスピードが落ちるかもしれません。
 つまり、乳酸系の運動においても、持久力はあるわけです。人によってはスピード(短距離的スピード)の持久力と呼んだりもします。
 先の説明にのっとって言えば、「解糖系やATP-CP系でエネルギーを生産できる能力の高さ」と言う事が出来ます。
 これを鍛えるためには、「40秒程度全力で動く」ことを目指してトレーニングを繰り返すしかありません。フットバッグで言えば、概ね40コンタクトで激しめ(例えば全てシャッフルなど)のシュレッドをするのが該当するかと思われます。
 ですが、ここでフットバッグの厄介な問題が顔を出します。
 それは、身体的な負荷の強度を上げようすればするほど、技術的なレベルの高さが要求されるという事です。理由は単純で、身体的な負荷を高めるためには全力の動作を続ける必要があり、それは可能な限りドロップをしてはいけないことを意味するからです。
 鍛えたい能力を考えれば、せいぜい1ドロップか多くても2ドロップ程度で、それ以上になるとどうしても身体にかかる負荷が落ちてしまいます。かと言って、じゃあノードロップで行ける範囲でとやってしまうと、運動強度そのものが上がりません。
 この要求は技術的にかなり厳しく、それこそワールズ基準ですら上位層並の技術の高さが求められてしまいます。しかしながら、では先に技術レベルを高めることに専念する方が良いかと言えば、それも問題があります。
 精神力、技術力、体力のいわゆる心技体を鍛える際に、何を優先した方が良いかと言えば圧倒的に体力が先だと言われています。理由としては、やればやるだけ確実に効果が上がるからです。
 また、技術力を鍛える際にも体力の素地があった方が習得が早くなりますし、上記のような技術力を身に着けるには時間がかかりすぎてしまいます。体力的な素地が鍛えられていないなら猶更なので、様々な点からみてもトレーニング効率が良くありません。
 
 その為に、フットバッグ以外のトレーニングの追加を検討する方が現実的でしょう。
 例を挙げると、200m走や300m走、縄跳びで二重跳びを連続50回程度といったあたりでしょうか。
 運動強度的に200mでもかなり厳しい(100mたどり着く前に急激にスピードが落ちる)人は、100mから開始しても良いと思います。
 因みに、400mの世界記録ですら40秒を超えてしまうので、300m全力で走るという距離がトレーニング上限として考えて良いでしょう。と言いますか、300mを40秒で走りきれるのなら相当に速い部類に入ります。
 また、たとえシャッフルで40コンタクトノードロップのような練習がこなせる上級者でも、強度として例えば300m全力走に近づけることはかなり難しいので、やはり上級者でもフットバッグ以外のトレーニングとして取り組むことを考えた方が良いでしょう。
 因みにこのフットバッグでのトレーニングを行う時、ドロップしても止まってしまってはいけません。即座に拾い40コンタクトまで何としてでもたどり着きましょう。
勿論ノーミスが理想ですが、ミスの度に止まって休憩しててはトレーニングになりません。
 その代わりに、セット間の休息は長めに取り、次に開始する際に十分回復した状態で取り組めるようにします。これは、200mや300m等のトレーニングでも考え方は同じです。

 好気呼吸的な持久力についての解説もそれなりに長くなるので、更に次回の記事に続きます。

2-1-1.生理学的な観点から持久力を考える

 今回は生理学的な観点から持久力について考えます。
 そんなに細かい内容までは触れませんが、重要な部分だけでも知っているとだいぶ違いますので。

 まずは呼吸の話からですが、生理学的には呼吸とは「エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を生産する仕組み」を指します。生理学を学んだ事が無くても、高校で生物を取った人ならば、解糖系やTCA回路(クエン酸回路)等を思い出すかもしれません。
 そして、そのATPをADP(アデノシン二リン酸)とPi(リン酸)に分解する過程でエネルギーが発生します。
 詳しい化学式などについて知りたい方は専門書をあたるか、ウェブ上でも情報がありますので各自で調べてください。ですが、基本的にスポーツに活かすだけならば、細かい所までは追わなくてもざっくりした理解で問題ありません。
 このエネルギーの生産の仕組みについて知る事が、持久力を考えるうえで非常に役に立ちます。
 さて、その呼吸(エネルギー源生産)ですが、大まかに分けると酸素を使わない嫌気呼吸と、酸素を使用する好気呼吸に分けられます。
 それぞれについて更に解説します。

(1)嫌気呼吸について
 嫌気呼吸によるATP生産が主となる運動は、一般的に無酸素運動などと呼ばれる運動です。
 嫌気呼吸によるATP生産は、更に二つに分ける事が出来ます。
 一つはクレアチンリン酸を使用してATPを生産するATP-CP系、もう一つは解糖系と呼ばれるグルコースを使用してATPを生産する仕組みです。
 ATP-CP系は最も素早くATPを生産出来ますが、最も持久力に乏しく、10秒程度が人間の生理的な限界だと言われています。
 瞬間的に力を発揮するような運動に向いており、特にウエイトトレーニングなどで重い重量を上げる際等に優位になります。
 良く筋力トレーニング用のサプリメントでクレアチンが売られていますが、この仕組みを根拠にしているわけですね。
 スポーツにおいては100m走や走り幅跳び、あるいウエイトリフティングなどの極めて短時間で爆発的な力を生み出す必要がある競技で最も重要になります。
 解糖系については、クレアチンを利用したエネルギー生産には一歩ゆずりますが、それでも非常に素早くエネルギーを生産できます。
 しかしこちらもやはり持久力には乏しく、最長でも40秒程度が人間の生理的限界と言われています。
 因みに、あくまで生理的限界が40秒程度というだけであり、鍛えてない人間に取ってはその半分程度、20秒程度でもパフォーマンスは急激に落ちていくでしょう。
 なお、解糖系によるATP生産の結果乳酸が生産されます(厳密にいうとちょっと違うけど)。よく疲労物質として語られる乳酸です。その為に、解糖系が主になる運動を乳酸系と言ったりもします。
 乳酸は実は単なる疲労物質というだけではないのですが、こちらについては別記事で詳しく触れます。

(2)好気呼吸について
 好気呼吸については、一般的に有酸素運動などと呼ばれる運動で優位になります。
 非常におおざっぱにいうと、グルコースや脂肪を源として酸素を用いてATPを生産します。
 まず先にグルコースの方から説明します。
 グルコース好気呼吸は解糖系やATP-CP系と比べるとATPの生産過程が長く複雑であり、ATPを生産するのに時間がかかりますが、とても効率の良く生産できます。
 例として解糖系に比べると、同じグルコース1単位から実に20倍近いATPを生産する事が出来ます。主に使用されるのはTCA回路と水素伝達系です。
 なお、解糖系と好気呼吸を別の仕組みのような書き方をしていますが、実際には解糖系は好気呼吸にっても重要です。まずは解糖系においてグルコースが分解され、その結果生産される物質をTCA回路(クエン酸回路)に送り込み、そこで多くのATPを生産する反応を起こしているからです。
 疲労回復をうたうサプリメントによくクエン酸が含まれていると思いますが、このTCA回路に直接クエン酸を送り込むことで、疲労回復を行うためのエネルギー生産を促進する事を目的としています。
 先にも述べた通り水素伝達系もありますが、ここでは省略します。運動における持久力を考える場合は、さして問題ではないので。
 次に、脂肪を利用してATPを生産する仕組みも好気呼吸に分類されます。
 こちらはグルコースを用いた好気呼吸よりも更にエネルギー生産速度が遅いです。但しさらに燃費は良いです。
 一単位からのエネルギー生産ではグルコースの好気呼吸よりも3倍以上のATPを生産できます。もっとも、1単位と言っても脂肪とグルコースの重さが違うので厳密に比較はできません。
 一般的に重さを同じ1gとすると、グルコースなら4kcal、脂肪なら9kcalのエネルギーが生産できるとされています。これでも2倍以上燃費がいいですね。
 あと、タンパク質も実はエネルギー源になりうるのですが、これについては体重管理やコンディショニングの回で詳しく説明します。少なくとも持久力を考える上では、特に気にしなくて問題ありません。

 さて、嫌気呼吸と好気呼吸について説明してきました。
 ここで勘違いしてはいけないのは、無酸素運動だから嫌気呼吸だけ、有酸素運動が好気呼吸だけ働いているわけではないと言う事です。
 運動の種別によってどの仕組みが優位になるかという事であり、どれか特定の仕組みだけが働いているという事はほぼ無いと言ってよいです。

 ここで改めて簡単にまとめます。人のエネルギー生産はスポーツ的な観点からみると主に4つの系があり、

1.ATP-CP系:10秒程度が生理的限界。爆発的なエネルギーを発生させる必要がある運動や競技で主になる
2.乳酸系:40秒程度が生理的限界。こちらもエネルギー生産は非常にはやく、速いスピードや大きなパワーが必要とされる競技で主となる。
3.有酸素系(グルコース):エネルギーの生産は上記二つに比べれば遅いが、その分効率が良く、長時間エネルギーを発生させる必要がある競技で主になる。
4.有酸素系(脂肪):最も効率が良い。長時間の運動で上記グルコースを利用した有酸素系とともに主となる。

 これらを考える上で非常に重要なことは、ATP-CP系の10秒や乳酸系の40秒といった生理的限界は、どれほどトレーニングをつもうが伸ばせないという事です。
 たとえ世界トップレベルのアスリートですら、それは例外ではありません。
 しかし実際に比較してみると、5000mの男子の世界記録ペースは1kmあたり2分31秒程度ですが、一般的な成人男性なら同ペースで200m(タイムとしては30秒程度)ついていく事すら困難でしょう。
 言い換えれば、一般人が200mを全力疾走するよりも速いか同程度のペースで、5000mも走ってしまう(タイムは12分35秒程度)訳です。
 これは、5000mの選手が乳酸系の運動を12分以上も出来るようになったわけではありません。厳しいトレーニングを積むことにより、一般人なら乳酸系に属するような運動強度を、有酸素系の運動として行えているという事なのです。

 この考え方は、一見当たり前のようでいて、非常に重要です。
 例えばフットバッグを初めてそんなに時間が経っていない頃ならば、2ADDや3ADDのトリックですら乳酸系が優位になりかねません。
 ですが、仮にフリースタイルに出場したいと考えたとき、2分間の演技構成を考えなければなりません。
 この時に、「いや、俺はトレーニングして乳酸系のトリックをたくさん入れて2分間蹴り続けてみせる」と考えても、それは無理筋なのです。むしろこの方向性でトレーニングしたら、実力があまり伸びない割に怪我の危険性が増すばかりです。
 大切なのは、2ADDや3ADDあるいはフリースタイルに取り入れたいトリックの大部分を、好気呼吸系の運動として行えるように取り組むことなのです。
 長くなりましたので、記事を二つに分けます。次回は、各系の持久力をどのように鍛えていくか具体的に解説していきます。

1-2.フットバッグにおいて競技力に関連する体力とは

 前回生理学的な知識を中心に解説をしていくと書いたのですが、その前にもう一つだけ記事をはさみます。


 今回は、フットバッグという競技において必要な体力の要素は何かを考えていきます。
 現在、フットバッグに置ける競技は概ねフリースタイル、シュレッド30、シック3、シック1、サークル、リクエストコンテスト、ラストマンスタンディング(リッピンラン)と言ったあたりでしょう。
 これらの中で最も持久力が必要となるのは、2分間の演技種目であるフリースタイル、次いでラストトマンスタンディング、その次にシュレッド30、サークルの順になるでしょう。
 シック3とシック1については持久力はほぼ関係ありませんが、代わりに一つ一つの技の難度が上がるために、筋力、スピード、敏捷性、調整能力辺りがより必要となるでしょう。
 しかしながら、フットバッグの競技的な特性上、シック3やシック1においても、短距離走や跳躍種目、投擲種目のような爆発的な筋力やスピードが必要とされる事はほぼありません。その代わりに動きが複雑なために、制御能力や柔軟性(可動域の広さ)等がより重要となります。
 持久力については、概ね陸上競技の中距離種目である800m走に求められる持久力が最も近いと思われます。
 運動を観察する限りフィギュアスケートもかなり近そうではありますが、私自身に全く経験が無いの確たることは言えません。

 では、そういった必要な要素を鍛えるためにどうするかという話ですが、実は最初の頃はあまり難しく考える必要はありません。
 なぜならば、単純にフットバッグを練習するだけで、一般的体力も専門的体力もある程度同時に鍛えられるからです。
 より具体的言うと、フットバッグを行うことで一般的体力である心肺系の能力やエネルギー生産の能力等が改善されますし、フットバッグの技術を習得することでより効率的な動きを覚え、スタミナの消費を抑えられたりタイミングよく動けるといったような各種専門的体力も鍛えられるという事です。


 とは言え、その中で何をまず優先すべきかと言えば、やはり持久力という事になるでしょう。
 これはフットバッグの競技的な観点からも重要なのですが、何よりも持久力が無いと一定以上の練習時間をこなすことが出来ないからです。
 目標の目安としては、集中してそこそこ負荷の高い内容で、間の休息を含めまずは1時間以上、望ましくは2~3時間程度の練習がこなせるようになることです。
 競技に必要な持久力を考えるのは、まずは練習に必要な持久力を身に付けた後の話です。
 なお、人の身体的及び精神的な持久力の限界から、3時間を超えて連続4時間とか5時間の練習をこなせるようなる必要があるかと言えば、そうではありません。
 むしろ、そんな長時間連続で練習する位なら、練習内容の負荷を上げて、3時間程度で限界になるよう練習を組む方が良かったりします。そのあたりについては追々記事にしていきます。
 そして、持久力と言っても細かく見ればまた様々に分かれていくのですが、そのあたりについては生理学的な知識が必要になってくるので、次回以降説明していきたいと思います。