3-7 練習の量と質

 練習の量と質については、割と話題になる事が多いように思います。それは私が競技として取り組んできたテニスでもそうでしたし、フットバッグでもそう思います。
 確かに練習の量と質は部分的にトレードオフの関係にあることは事実だと思います。
 しかし、どちらを重視したらよいか?という質問に対しては、その質問自体が適当ではないと私なら答えます。
 そんな風にどちらを取るかというような(あるいはどちらかを取れるというような)簡単な関係ではありませんし、単純に相反するものでもないからです。
 ただまあ、それでもどちらかをと言われたならば、ひとまず量を重視することを勧めるでしょう。

 そもそも、練習の質が高いとはどういう事かという事について、きちんと説明した上でこの話をする人はとても少ないように感じます。
 因みにこれは私の経験上の話ではありますが、練習量の確保の大切さを説く人には一定の説得力がありまたきちんと結果を出している人がそれなりにいましたが、練習量よりも質を大切にしなければならないという人で、まともな論理展開を行ったり結果を出している人は少なかったです。
 一応質を重視する人できちんとした説明を行う人がいましたが、その人達はいずれも基準がもの凄く高いため、質を重視して減らした後の練習量ですら普通の人からすれば想像を絶するような練習量であった事を付け加えておきます。
 練習量より練習の質の大切さを説く人は、苦しい練習をしたくない言い訳に使っているだけというのが、少なくとも私が直接出会った人では多かったです。
 このことについてこれ以上云々する前に、練習の質が高いというのがどういう事かについて、ある程度定義しておきたいと思います。

(1)単位時間当たりの練習量が多い(密度が濃い)
 これは例を挙げると分かりやすいと思います。
 例えば1時間の練習で同じ強度の練習を行っている人が二人いるとして、片方はトータルで45分間蹴って15分休憩、もう一方はトータルで30分蹴って30分休憩だとしたら、
 どう考えても前者の方が質が高い練習をしていることが分かると思います。
 あるいは、全く同じ練習内容を一方は30分かかり、もう一方は15分で終える、というようなケースもこちらに当てはまります。
 この方向性で練習の質を上げるには、持久力の最大値が高いこと、持久力の消耗量が少ないこと、技術的な安定性が高いこと(ドロップが少ないこと)が必要になります。

(2)下位互換性のある上位技術を練習できている
 こういう書き方をすると良く分からない人が居るかもしれませんので、例を挙げます。
 ある人はクリッパーのみ交互の練習を100回程度行ったとします。もう片方は、クリッパー交互を50回、クリッパーのストールとセットの感覚の延長線上でダッキングクリッパーを50回交互行ったとしましょう。
 そして、ダッキングクリッパーで得られた技術的気づきがクリッパーストールとクリッパーセットへフィードバック可能であったとします。
 どちらの練習が質が高いですかと聞いたら、多くの人は後者の人の練習が質が高いと思うのではないでしょうか。
 尚これはあくまで同系統の上位技術だから比較できる事であって、別系統の技術では一概に言えません。
 バタフライの練習よりパラドックスワールの練習の方が質が高いとは言えないという事ですね。
 この方向で練習の質を高めるためには、技術力の高さ(難しい事が出来る)と、技術に対する理解力が必要です。
 上記の例で言えば、ダッキングクリッパーはクリッパーストールの精度とクリッパーセットのコントロールが、通常のクリッパー交互の練習よりも高いレベルで求められると同時に、延長線上にある技術であるという事を理解しているかという事ですね。

(3)一度に多要素を含む練習を行う事が出来る
 これは(1)や(2)とかなり重なる部分があります。
 例えばクリッパー練習の構成要素は、クリッパーストールとクリッパーセットのみです。
 これがスピニングクリッパーだと、クリッパーストールからの始動、クリッパーセットとその応用としてのスピンのセット、スピンが終わった状態でのクリッパーストールが構成要素となります。
 メイルシュトロームなら大雑把にいえばクリッパーストールからの始動、スピニングダッキングセット、ダッキングからのパラドックスワール、クリッパーストールが構成要素となり、 スピニングダッキングセットやダッキングからのパラドックスワールは更に複数の要素から成り立っています。
 必ずしも多要素を含む技術を練習することが質の高い練習と言えるわけではありませんが、基本的には要素が多いほど一度に多くの要素を鍛えられるため質が高くなりやすいです。
 また、非常に多くの技術要素があるフットバッグにおいては、ある程度練習を統合する(別記事で詳しく触れます)ことをしないと、練習時間がいくらあっても足りません。
 今回は簡単にあげますが、例えばダッキングクリッパー交互100回と、バタフライ交互(インフィニティ)100回で合計200コンタクト練習しているとします。
 両方ある程度の実力が付いたら、これをダッキングバタフライ交互100回に統合します。これで、ダッキングクリッパーの練習とバタフライの練習を両方含んでいると解釈します(もちろんダッキングバタフライそのものの練習にもなります)。
 そしてその事により確保できた空き時間を、別の技術を練習することに回します。こうすることで、練習密度を高めつつなるべく練習量を減らさずに他要素を練習することが可能になります。
 ダッキングクリッパーとインフィニティそのものの練習と全く同じ効果が得られるわけではありませんが、近い効果は得られますしそれ以上に得られるメリットがかなり大きいです。
 但し、時々は基本に立ち返り、ダッキングクリッパーやインフィニティの感覚がどう変化したか確認することは必要になるでしょうが。
 この方向性で練習の質を高めるには、技術力の高さ、技術に対する理解、練習を工夫する意識が必要になります。、

(4)確かな練習を行っている
 例えばクリッパーの練習を100回行ったとします。
 特に深く考えずに100回やる事だけを念頭に、1回1回を軽く考えて行っていたならば、それは質の低い練習だと言わざるを得ません。
 1回1回のクリッパーに集中して取り組み、成功と失敗にそれぞれ理由を見つけ、常に自分の技術を改善するためのフィードバックを行い続けていれば、それは質の高い練習と言えるでしょう。
 このように、個々の練習をおろそかにせず、全ての練習に対してどれだけ深くやれるかという視点が確かな練習を行うという事です。
 この方向性で質を高めるには、技術に対する理解、精神的な成熟、問題解決意識(意識の高さ)が必要となります。
 特に成長速度が速い人は、このことを無意識に(自然に)できている人が殆どです。

(5)技術に対し多くの視点を持てる
 これは(4)とかなりの部分で重なります。
 例えばクリッパーの練習をするとして、どのくらいのポイントを意識して練習することができるか。
 ストールするための体の使い方、バッグの勢いの吸収、次のセットへの準備位の意識するといった程度、かなり少なく質が高くないと言わざるを得ません。
 セットしたバッグが落ちるタイミングとストールするタイミングの合わせ、軸足とストールポイントの位置関係、重心位置の遷移、ストール動作の最小化、無駄な力みの排除、ストール足の準備するタイミング、バッグの乗せる位置、ストールしたときの態勢とバランス、ストールを行うという動作と次のトリックの始動の融合など等。
 挙げるときりが有りませんのでこのあたりで止めますが、クリッパー一つとっても非常に多くの技術的なポイントがあるという事です。
 勿論、それぞれを厳密に一つ一つ動作の中で意識しながら動いているわけではなく、特に技術力が高まれば高まるほどそれらの大部分は無意識的に並行して処理されます。
 しかしこれらの意識ポイントが多ければ、失敗したときに何が悪かったのかに気付きやすくなりますし、自分の失敗パターンに気付くこともできるようになります。
 ひいては、自らの欠点に気付き、それを修正することも容易になるはずです。
 そして、今まで無意識に行っていた欠点を意識化して練習し、修正が終えたら再度無意識化するという流れで技術力を高めるとともに、その安定性も高めることが出来るでしょう。
 この方向性で練習の質を高めるには、技術力の高さ、技術に対する理解、問題解決意識、動作分析をする力が必要となります。

(6)練習する課題が明確であり、短いスパンで循環している(規律がある)
 人が技術を高める方法としては、基本的に何度も反復して練習するしかありません。
 ですが、何を練習するかという課題を明確にせずに練習していると、練習内容が一定に定まらず散漫な練習になってしまいます。
 例えば1週間のうち2日ピクシー関連の初メイク狙いの練習し、次の2日はアトミック関連、その次はステッピング、そういえばワールもやりたかったと次はワールに‥‥といった感じ。
 これでは仮にある程度の技術的な気付きが得られても反復されない為、技術が安定せず場合によっては退行する(もとに戻る)可能性すらあります。
 ですので、何を重点に練習するかをきちんと決め、どんなに長くとも1週間では循環するように練習計画を立てた方が質の高い練習になるでしょう。
 個人的には、ある程度のバリエーションを付けた上で2日~3日で循環する方が良いと思っています。
 また、基本的に技術は継続して練習し間をおかず反復する方が上達しやすいですし、忘れにくくなります。
 例えば練習が3日で循環するとして、ピクシー関連100、アトミック関連100、ステッピング関連100の量を練習するとした場合、1日目ピクシー関連100、2日目アトミック関連100、3日目ステッピング関連100の循環とするよりは、1日当たりピクシー関連33(34)、アトミック関連33(34)、ステッピング関連33(34)を3日間練習するとした循環の方がより高い効果が望めるでしょう。
 もっとも、これについてはあくまで基本的にその傾向があるというだけで、必ずそうした方が良いと言い切れるわけではない場合もありますが。
 この方向性で練習の質を高めるには、計画を立案・調整する力と、反復練習を厭わない精神的な強さが必要となります。

(7)目的と合致した内容の練習やトレーニングを行っており、適切な負荷がかかっている
 フットバッグの練習だけを例に挙げるだけだと何なので、今度はトレーニングで例を挙げてみましょう。
 まず、目的に合致しているかどうかという視点から。
 持久力を鍛えるために心肺機能を強化するメニューを考えるならば、当然心肺機能に負荷をかけるトレーニングを選択しなければなりません。
 例えばそれはインターバルトレーニングであったり、速い速度でのランニングであったりするでしょう。
 しかし、その目的でトレーニングを行うのに、遅いスピードでのランニングを選択したとするならば、目的に合致しているとは言い難くなります。
 トレーニングは何を鍛えるかという意識と、鍛える手段が合致していなければ高い効果が見込めません。
 また、心肺機能に負荷をかける為にインターバルトレーニングを選択(ここでは200mのインターバルトレーニングを5本とする)したとして、適切な負荷がかかっていないと質が高い練習とは言えません。
 今回の場合においては、高い心拍数になるような負荷で走らなければなりません。具体的には、心拍数が170~180程度まで上がるような速度で走ることが必要です。
 この時、割と勘違いしている人が多いのですが、記録が良いことが質の高い練習となるわけではありません。
 例えばある人が200mを5本とも30秒に揃えて走れたとしても、心拍数が160前後までしか上がっていないならばあまり質の高いトレーニングとは言えませんし、逆に別の人がタイムは36秒程度でしか走れなかったとしても、全体的に心拍数が170を超えていくようなインターバルになっているならば、それは質の高いトレーニングと言えるでしょう。
 この方向性で練習の質を高めるには、技術や身体機能への理解、精神力の強靭さ(単なる強さとはちょっと違う)、計画を立案・調整する力が必要なります。

(8)練習内容が事前に作成され、定量的な内容となっている。
 これはとても基本的なことのようですが、非常に重要です。
 その日の練習内容を練習開始まで考えていないという事は、課題が何かという事を明確に考えていないという事であり、ひいては長期的なプランも策定できていないという可能性が高いからです。
 目標を達成するためには、長期的な視点と逆算する視点が欠かせません。
 どのような技術が必要か、その難易度はどのくらいまでか、安定度はどの程度か、そういった諸々を具体的に見積もり、その習得に向けて段階を踏まなければならないからです。
 つまり、きちんと必要な事が具体的に見積もられていれば、後はそれが必要な期日までの日数を考えて逆算することで、どの時期にどんな練習をするべきかは具体的に決まっていきます。
 逆にそのあたりが明確になっていなければ、どんなに日々の練習に力を注ぎこんだとしても、あまり上達へ結びつかず空回りの日々となるか、本来達成したいはずの目標とはベクトルがずれ、見当はずれの練習になる等質の低い練習になってしまうでしょう。
 もっとも、これらは厳密に数字で導き出し論理的に計画を立てる人もいれば、感覚的な理解をもとに大まかな工程をイメージで計画を立てる人もいます。
 どちらかと言えば前者のような方法が望ましいですが、後者のような方法が上手く行きやすい人もいますので、それぞれの個性によるでしょう。
 但し、後者の方法できちんとした計画を立てまた実践するには、かなり高いレベルの実力が必要です。
 少なくとも、きちんと目標達成のイメージが具体的にわかない人は、前者の方法で設定した方が良いと思います。

 また別の視点から見ると、まず練習中に練習内容を考えている時間そのものが無駄です(事前に考えておけばその分を練習に回せる)
 更に、練習中は当然疲労がある状態なわけで、その分思考力は落ち的確な練習が考えられない可能性が高まります。加えて、疲労がある状態では無意識に楽な練習を考えてしまいがちにもなるので、その面からみても好ましくありません。
 また、定量的というのは言い換えれば計測可能な練習を考えているか、という事です。
 例えばワールを上達させるための練習を行う、というのは計測可能ではありませんが、ワールを左右とも100回ずつ一日の練習の中で行う、というのは計測可能です。
 これはあくまで一つの例ですが、こういったように必ず定量的な練習にする必要があります。そうしないと、どの位の練習を行ったら自分がどれ位成長するのか、という点が可視化されないからです。
 自分の目標を定めたら、まずは必要な練習を暫定的にでいいので定量的に見積もってみます。後はそれに取り組む中で自分の成長を確認し、適宜修正や新たに思いついた工夫などを盛り込むことで、練習内容をブラッシュアップしていきます。
 この方向性で練習の質を高めるためには、計画を立案・調整する力、精神的な強靭さ、セルフコントロール能力、練習のモジュール化(別記事で詳しく説明します)等が必要となります。

(9)予想外のことに対応できるような柔軟なプランが立てられており、また自分のモチベーションを保つ工夫がされている
 (6)~(8)と関連しますが、人は計画を立てる際に理想を追い求めすぎて、遊びの無い計画を立ててしまいがちになります。
 しかし、そういった計画を立てると、ちょっとしたアクシデントでもリカバリーがきかず計画が崩れてしまい、最終的に計画自体を守らなくなってしまい結局練習の質を落としてしまいがちになります。
 その為、計画を立てるとき予想外のことが起こったり、計画通りに進捗しないことをあらかじめ織り込んでおく必要があります。
 そして、そういったことが起きたらどう対処するのかをあらかじめ決めておき、場合によっては計画の修正を行うなど柔軟な対応を行う事が必要となります。
 ちなみに修正を行う場合は、その修正は本当に必要なものかどうか厳しく見極めないといけません。単に苦しいことから逃げたいがために修正してしまう事も往々にあるからです。
 また、モチベーションを保つ工夫も非常に大切です。
 人は、何かに取り組むとき楽しんでやっているときが一番成長しやすいと言われています。人によってはモチベーションに頼ること自体が問題で、必要なのは規律だと言う人もいますし、その主張自体も理のあるものだとは思います。
 しかし、苦しいこと、辛いことに取り組めば必ずしも成長するわけではありませんが、どうしても負荷の高い練習が必要になる以上、精神的にも身体的にも非常につらく苦しい状況が繰り返されます。
 その時に、苦しいことを苦しい、やりたくないという意識のまま我慢して行うのは、悪いことではありませんが良いこととも言えないのです。
 理想は、そういった負荷の高い練習やトレーニングを、自らやりたいと思ってやる、楽しんでやるような工夫が出来ることです。
 言うは易し行うは難しで、これは非常に難しいことですが、この工夫が出来たり苦境を楽しめるような人は、本当に驚くべき速さで成長していきます。
 苦しい状況、辛い状況を、苦しい・辛いと感じたままその状況を続けられるような人はそうはいません。
 誰しも苦境からは逃げたくなるし、楽な方を選択したくなります。
 それをただ我慢する、頑張って乗り越えるというような考え方では練習の質は決して上がりませんし、どこかで折れてしまう人が大半でしょう。それは、その苦しさを乗り越えた先に得られる対価が分かっていたとしてもです。
 この方向で練習の質を上げるためには、計画を立案・調整する力、深い自己分析力、創意工夫する力(想像力)、精神的な強靭さ、セルフコントロール能力が必要となります。

 以上9点あげました。
 これらはあくまで私が経験したことや学んだことをもとに、現時点で気付けていることを挙げただけにすぎません。
 ですのでもっと様々なポイントがあって良いですし、統合したり別の視点を加えたりするのも十分ありです。但し、話を進めるためにひとまず今は以上の9点が必要な視点だとします。

 さて、これらのことを意識したとして、すぐに全ての点を意識し質を高められる人はいるでしょうか。また、上記のような観点から、質を上げようと思えばいくらでもあげられる人はいるでしょうか。
 勿論、すぐに意識して質を上げられるポイントや、改善できるポイントもそれなりにあるでしょう。しかし、それらの点はすぐ取り組めたとしても、やがてすぐに頭打ちになるはずです。
 むしろ上記の点の多くが、すぐには実現できない、あるいはやり方が分からない事ばかりという人も少なくないはずです。
 それではどうするかというと、これはもうひたすらに試行錯誤するしかないんです。
 現時点で出来る範囲で計画を立て、実行し、結果を検証しフィードバックを行い改善する。それは自分のフットバッグのパフォーマンスだけでなく、計画や練習内容の策定する能力など全てにおいて実践しなければなりません。
 その繰り返しを何度も行う事で、ようやく練習の質が上がるんです。

 これらの点から、練習の質を高めることは、自分のパフォーマンスを高める事そのものじゃないかと思った人もいるかもしれません。
 パフォーマンスを高めるために質を求めるのに、質を上げるためにパフォーマンスの向上が求められるのはおかしいのではないかと。
 しかし、それは少しもおかしいことではなく、むしろそう思うのは練習の質を高めるという事を勘違いしているだけです。
 練習の質を高めるという事は、フットバグのみならず自らのあらゆる面でのパフォーマンスの向上させる事とほぼ同義なんです。
 そして、その手段は絶えず試行錯誤と反復を行うしかないという事です。少なくとも、現時点でそれ以外の手法を編み出した人はいません。

 とても端的に言ってしまえば、練習の質は膨大な練習量をこなすことで(そして自らのあらゆるパフォーマンスを高める事で)しか上がらないという事です。
 また、よく勘違いしている人が居ますが、練習の質を上げても練習内容が楽にはなりません。
 そもそも、人は与えられた負荷に応じて、自らの身体なり技術なり精神なりを発達させていきます。つまり、質の高い練習(より成長する練習)とは、言い換えればより負荷の高い練習だという事です。
 もっとも、かける負荷にも種類があって、詳しくは別記事で解説しますが、例えば技術的な負荷が高くとも身体的な負荷が高くないという練習はあり得ます。
 そういった練習ならば、身体的な辛さはそこまで感じないけれど、目に見えて成長するという事は短期間においては起こり得ます。ですけどそれにも限界はあって、結局は練習の質を上げることを考える限り、練習内容(様々な負荷)が厳しいものになることは避けられません。
 練習の質を上げれば楽に効率的に上手くなれるというような、まるで魔法のような事を主張する人が居ますが、そんな事はあり得ません。
 質を上げると効率的になるという面は一致しますが、負荷の点から見れば楽になるどころか厳しさがどんどん増していき、それは際限がないからです。
 また、これらのことを考えれば、よく「実力が劣るものは実力が勝るものよりも多くの練習をしなければならない」と言われるのは、根性論などではなく実に理にかなった言葉だという事もわかります。
 上記のことを考えれば、基本的に実力が勝る者の方が実力が劣る者よりも高い質の練習を行えることになりますし、実際に殆どの場合においてその傾向が見られます。
 実力の劣るものは練習の質で追いつくことが非常に困難なのに、練習量すら確保できないとなれば、追いつくどころか引き離される一方になるでしょう。
 練習量の確保の大切さを説く人は、上記のようなことを意識的にしろ無意識的にしろ理解していることが殆どです。
 また、往々にして練習量の大切さを説く人が、練習の質の大切さを説く人よりも質の高い練習をしている事が多かったりもします。
 これも、上記のことを考えれば当然の事です。

 但し、練習量のみを重視し練習の質を改善しようとしない姿勢もまた、戒めるべきものであることは常に心のおいておかなければなりません。
 練習の質が上がっていくという事は、練習の密度が高くなることや内容が深くなること、あるいは負荷が高まることを意味し、言い換えれば実質的な練習量やトレーニング量を増やすのと同等の意味を持つからです。
 例えば質の高い練習3時間を行っている人と、質の低い練習を3時間行っている人では、時間としての練習量は同じでも、実質的な練習量では明らかな差が出ます。
 一日の長さは決まっており、更にその中で純粋に練習やトレーニングに割り当てられる時間は限られています。ですので、単純に練習量を時間の面で確保するのは限界がある以上、その限られた時間の中でどれだけの負荷がかけられるのか、という事が重要になるのです。
 練習の質を高める事ができない人は、一定以上は実質的な練習量を増やすことが出来ないことを意味し、結局は練習量の不足を招いてしまいます。

 つまり、練習の量と質はお互いに密接に関係しており、どちらもおろそかにして良いものでは無いという事です。
 多くの練習量をこなすことで練習の質を高め、質が高まる事でまた実質の練習量が増える、その結果また質が上がり……という循環を形成することが、成長速度を高めることに必須だからです。

 但し、一般的に練習の質を高めることを、意識的にしろ無意識的にしろ、行わない人はまずいないと言ってよいと思います。
 そもそも練習をすること自体が上手くなるためであり、その為に試行錯誤することは自動的に練習の質を高めることに結び付くからです。
 もっとも、一定以上のレベルに達するためには意識的に自分の練習を見つめなおす必要が出てくることも事実であり、また無意識にやるだけではどうしても偏りが出ることも避けれません。そしてこの部分を意識的に改善出来るかどうかが、中級車と上級者を分かつ壁になります。
 一方で、練習量を多く確保するという事は、意識的に行わないとおろそかにしてしまう事が多くなります。
 基本的に人は楽をしたい、言い換えれば苦しいことしたくないと考える人が多く、そして練習量を増やすという事は端的に自分に対して負荷が高まることを意味するからです。

 先にも述べたとおり、いきなり練習の質を高めようとしても限界があり、そこに達した時点で更なる質の改善を考えても徒労に終わります。
 なぜなら、それは泳げない人間を海に放り込んでさあ泳げというようなものだからです。また、仮に改善点を見出せたとしても、それを実行可能かどうかはまた別の話です
 自分が意識して質を高められる限界、あるいはその近くまで来たと感じたのならば、後は可能な範囲で量を確保するしかありません。その繰り返しの先に自分の成長があり、そうして成長して初めて更なる質を追求できるようになっていることに気付くはずです。
 この循環を形成することができれば、成長速度はどんどん増していきます。
 逆にこの循環を形成できなければ、いつまでも成長速度を高められず、いずれは成長が頭打ちとなるでしょう。

 練習の質について本質を理解しないまま練習の質を求める行為は、上記の循環形成の阻害要因となることでしょう。
 練習の質を求めるという事は、基本的に練習量を減らすことや楽にする事ではありません。
 むしろ、より多くの練習量(試行錯誤)を必要とし、負荷の質も厳しさを増すという事を、理解しなければならないのです。

3-6 プロテインサプリメントについて

 今回はサプリメントのプロテインについて説明します。なお、プロテインとはもともとタンパク質の事を指しますが、以降は日常的に使われているプロテインサプリメントの意味で使用します。
 サプリメントの中で取り上げるのはプロテインのみの予定です。理由としては、各種身体の発達に関するメタ研究により、摂取することで効果があると認められる(摂取が推奨される)サプリメントは、プロテイン(アミノ酸系)位しかないからです。
 世の中には様々な効果をうたうサプリメントで溢れていますが、実際の所有意差のある結果をもたらすものは非常に限られており、スポーツにおいてはほぼプロテイン位と考えて良いです。後は、ビタミンやミネラルなどが不足している場合のビタミン・ミネラル材位でしょうか。

 一定以上の競技レベルになるとプロテインを取る人はかなり増えますし、ウエイトトレーニングを行っている人は殆どの人が飲んでいるでしょう。
 これには当然いくつかの理由があるのですが、その根源にどんな運動であれ出力を司るのは筋肉のみであり、筋肉を主に構成するのがタンパク質(アミノ酸)だからという事があります。
 これは上腕二頭筋や広背筋、大腿直筋などの随意筋(意識して動かせる筋肉)に限った事ではなく、内臓等を動かす不随意筋(条件に応じて自動的に動く筋肉)なども含みます。
 そして、身体に負荷をかけるという事は、神経系の改善によるパフォーマンス向上もありますが、基本的には負荷をかける部分の筋肉を損傷させるという事であり、それを回復させることでその部位がより強くなるのです。
 その為、高い負荷の運動を続ければ当然筋肉の損傷が大きくなり、その分回復にもより多くのタンパク質が必要になります。
 しかし、タンパク質を多くとると言っても、主なたんぱく質源である肉や魚を多量にとるというのは、なかなか厳しい物があります。
 また、タンパク質を取る際にはよほど気を使わないと一緒にそれなりに脂質もとってしまうため、タンパク質を食物からたくさん取ろうとすると脂質過多(あるいはカロリーオーバー)になる可能性も高まります。
 加えて、負荷の高い運動の後は素早くタンパク質を補給することが推奨されていますが、運動直後に肉や魚を食べろと言われても、無茶言うなって人が多いのではないのでしょうか。
 更に、タンパク質はそのままでは吸収できず、体内でアミノ酸まで分解してから吸収することになるのですが、この分解に時間がかかります。
 ですので、どんなに運動後すぐにタンパク質が豊富な食物を食べても、吸収されるまでに時間がかかってしまいます。
 こういったもろもろの問題点を解決するために作られたのがプロテインであり、サプリメントとして摂取することが推奨されるわけです。

 プロテインはタンパク質がある程度分解吸収しやすい大きさまで加工されており、製品によってはペプチドやアミノ酸のレベルまで分解されているために、非常に速く吸収できます。
 なおプロテインには、主にウイダーインゼリープロテインやプロテインバーのような補助食品タイプと、水や牛乳に溶かして飲むパウダータイプがあります。
 基本的に前者はプロテイン含有量が少なく、余計なものが色々と入っていたりするので、後者のタイプに絞って取った方が良いでしょう。
 以前までは味が非常に悪く、水に溶かしたものは飲むのに覚悟がいるほどだったのですが、最近ではだいぶ改善されそこまで気にならないレベルになっています。
 但し、プロテインを取ればタンパク質はこれだけでオッケーというような万能食ではないので、あくまで補助として考えることが大切です。あくまで栄養摂取の基本は食事であり、それで足りない部分を補うという意識が極めて大切です。
 摂取タイミングとしては運動直後にとれば十分だと思いますが、回復に量が足りていないと感じる場合は、朝食後や就寝前等の摂取も検討すると良いでしょう。
 

 パウダータイプのプロテインをスポーツショップやネット通販で探すと、実にさまざまな種類が売られています。
 その中で、持久力、瞬発力、ウエイトアップ等の効果による種類の分類については殆ど気にしなくて良いです。
 私が大学時代にある授業の担当だった教官(当然体育が専門)は、鼻で笑ってましたね。
 というのも、その人の体がどういう方向性で発達するかは、どのような練習あるいはトレーニングを行ったかの影響が支配的だからです。
 摂取する栄養素の種類(アミノ酸の種類)で変わるような部分は無いとは言いませんが、ほぼ無視して構わないレベルでしか影響しないからというのがその理由のようです。
 また、吸収性に違いをうたう高価なプロテインもありますが、そもそも一般的な食物の摂取からプロテインの摂取に変える事による吸収速度の改善が非常に大きく、それに比べればプロテインの種類による吸収速度の差はあまり大きくないので、そこまで気にしなくても良い(普通のプロテインで十分)です。
 何由来かという分類については、とりあえずホエイ(動物由来)を選んでおけば良いと思います。
 プロテインを取る理由自体が素早く補給したいという目的が大きいので、そこであえて吸収の遅いプロテインを取る理由が無いからです。もしその目的でタンパク質が撮りたいなら、普通に食事から摂れば良い話ですし、サプリメントという考えからも逸脱してしまっていると思います。
 また、必須アミノ酸がすべて含まれているという意味でもホエイが適しています。但し乳由来なので、アレルギー等で問題がある人は別の(例えばソイ)プロテインを探すとよいでしょう。

 一番注意しなければならないのは、タンパク質の含有割合です。これは、製品によってかなりの差があります。
 中には、成分の7割強を炭水化物が占め、タンパク質(アミノ酸)の含有割合は2割にも満たないという、それはプロテインなのかと疑問に感じるような製品もかなりある(安価な製品に多い)からです。
 成分の目安として、タンパク質の含有割合が7割を超えてれば問題ないでしょう。中には8割や9割に達するものもありますが、それらは非常に高価になることが多く、また7割程度の製品との差もそんなに大きくないので、あまり気にしなくて良いです。
 それ以外は殆ど気を付けることはなく、安価であったり味が良いと評判のもの(これも結構大事です)を選べばよいです。
 プロテインの質を求めたい人は、グルタミンが入っているかどうかまでは気にしてよいかもしれません。但しそれ以上を求めるととてもコストパフォーマンスが悪いですし、プロテインはあくまでサプリメントという観点からも外れ気味になってきます。
 お金に糸目は付けないのでとにかく最高の物が欲しいというなら、それはその人の自由なので止めませんが、最低限食事をおろそかにするような事は避けてください。
 プロテインは非常に高価という訳ではありませんが、決して安価なものでもありません。
 また、継続して取り続ける必要もあるので、そのあたりはよく考えて選択した方が良いでしょう。
 
 また、これは別視点からの注意となりますが、国内で正規品として流通している、あるいはアンチドーピング認証を受けている製品から選ぶようにしてください。
 日本国内での食品関連の流通に慣れていると、成分表示と中身は一致しているというのが普通だと思いがちですが、海外だと違っていることが多いようです。しかも、割とえげつないものが混じっているケースも耳にします。
 海外で飲んだら筋肉が良く発達すると話題のプロテインを飲んでいたら、ドーピング検査に引っかかった(筋肉増強剤、ステロイドなどが含まれていた)なんて話が冗談抜きでありますので。

3-5 クールダウンの効用

 負荷の高い練習やトレーニングを行ったときに、疲労を回復するには栄養補給と休息が大事である事は以前に述べました。
 クールダウンはその名の通り、運動を行った体を鎮めるために行うもの、言い換えるとスムーズに回復する状態に移行するための行為と言えます。
 ですが、意外とその効用については何となくで理解されている部分も多いと感じるために、きちんと記事にしておきたいと思います。
 クールダウンというと、とてもゆったりとした運動やストレッチを思い浮かべる人が多いかと思います。実際、私が所属していた大学のテニス部では軽いランニングとストレッチを行っていました。
 軽いランニングや同等のゆったりとした運動は、極めて強度の低い有酸素運動という事が出来ます。
 これとストレッチは実は効果が違い、どちらかを行うのではなく両方行う必要があります。

(1)軽いランニング等の低強度の運動(有酸素運動)の効果
 低強度の運動によるクールダウンには二つの効果があります。まず一つ目は乳酸の蓄積を減らすという事です。
 激しい運動を行うと、乳酸系の運動によって生み出された大量のピルビン酸が乳酸に変わり体に蓄積します。これは、有機呼吸でエネルギーを生み出すのが間に合わないため、増え続けるピルビン酸を処理できないためです。
 疲労物質ともいわれる乳酸ですが、実は生み出されてそのままという訳でもありません。実は乳酸はその後再処理され、エネルギー源に代わります。
 以前に乳酸は単なる疲労物質というだけではないというのはこういう事です。つまり、乳酸もエネルギー源として利用できるわけですね。とは言えそれには条件があり、有気呼吸が優位の運動下、つまりは運動負荷が高くない条件での運動が行われる場合です。
 行う練習やトレーニング内容にもよりますが、少なくともフットバッグにおいては乳酸系の運動強度を多く含みます。ですので結果として練習後にどうしても乳酸がある程度たまった状態になるのですが、これをクールダウンを行うことである程度消費するイメージです。
 休息日には完全に休むよりも軽い運動をした方が良いというアクティブレストも、この仕組みがあるからです。
 もう一つの効果は、身体の代謝を回復する代謝優位にするのスムーズに切り替えるという働きです。
 負荷の高い練習やトレーニングは、嫌気呼吸優位となる運動が多分に含まれます。そういった運動をしていれば、当然身体もそれに備えた代謝系を活発に働かせます。
 一方で身体を回復させる代謝は、当然好気呼吸系の代謝で、更に生み出されたエネルギーは主に運動ではなく身体の回復に使われます。
 つまり、強度の高い運動の代謝系と回復するための代謝系が違いすぎて、急には上手く切り替わらないのです。
 そこで、極めて低強度の運動を間にはさむことで、嫌気呼吸優位の代謝系を好気呼吸優位の代謝系に切り替えさせます。
 その後に運動を止めれば、好気呼吸系の代謝が活発になっている為エネルギーを生産する代謝は変える必要が無く、あとは主なエネルギーの使い先が運動から回復に切り替わるだけです。
 こうすることで、いきなり練習やトレーニングを終了して休むよりも、スムーズに回復に移る事が出来るのです。
 つまり低強度の運動を行えば、乳酸の蓄積を最小限に抑える事が出来て、更に乳酸を利用して生み出されたエネルギーが身体の回復にも利用できるという、一石二鳥な仕組みなわけです。
 さして負荷の高い運動を行っていなければあまり実感できませんが、高い負荷の運動を日常的に行うようになると覿面に違ってきます。

(2)ストレッチあるいは類似の運動の効用
 ストレッチや類似の運動を行う目的は、低強度の運動とは目的が異なっています(多少重なる部分はありますが)。
 フットバッグに限らず、様々なスポーツにおいて身体の全ての部位が均等に使用されるという事はまずありません。
 必ずどこかに疲労が偏りますし、様々な部位において捻じれや歪み、アライメントのずれなどが発生します。
 この状態を放置すると、筋に余計な負荷がかかり続けたり正常な血流を阻害するなど、回復を遅らせる障害となり得ます。
 その為、そういった偏りや歪みを矯正し、身体の状態を正常に戻すのがストレッチ等の効果です。
 ですので、これは「運動後にこういうストレッチを行えばよい」という事を提示する事が出来ません。
 それは、その日行った運動やその人の運動のくせ等により、いくらでも変化しうるからです。
 ですので、適切にストレッチを行うためには、自分の身体の状態を把握する感覚が欠かせません。
 これはすぐに身につくものではないので、毎日の中で自分の体の内面を感じ取ることを心がけながらストレッチ等を行う事で、徐々に身に着けるしかありません。
 しかし、これが身につけば身体の回復力が高まるだけでなく、怪我しにくい体作りにも非常に役立ちますので、常に意識して行う事を心がけましょう。
 なお、こういった感覚が全くなくてどうしていいか分からない人は、とりあえず股関節回り、腰回り、肩甲骨回りをほぐすことから始めてみるのも手です。
 勿論自分のゆがみにあったストレッチを行えることが理想ですが、上記部位をほぐすとある程度体全体がほぐれ、歪みやアライメンと等を矯正する効果が見込めるからです。体の中心部、そして体の中でも大きな筋肉を緩めることで、連鎖して末端も緩むイメージです。


 以上クールダウンの効果について説明しました。
 前回の記事で述べた練習の第3段階~最終段階は、クールダウンを行わないと継続するのがかなり難しいと思います。
 そうでなくても日々パフォーマンスを落とさずに練習を続けるには欠かせないことなので、面倒くさがらずきちんと行った方が後々自分のためになるかと思います。

3-4 練習計画のステップバイステップ

 さて、これまで練習計画のプランニングについて説明してきたことについて、実際にどのように段階を踏むかをまとめていきましょう。
 因みに以下で述べるプランは、これまでそこそこフットバッグを練習してきたけど、あまり本格的に取り組んでなかった程度の体力レベルからスタートすることを目安としています。
 ですので、例えば1年以上まともに運動もしてなかったような体力レベルの人はもう1段階程度軽い段階(それこそ週2~3回程度)から取り組む必要があるでしょう。

(1)第1段階~フットバッグのみ、あるいはフットバッグ+低強度の持久力トレーニング~
 この段階は、基礎的な持久力を身に着ける事とフットバッグの動きにある程度習熟する(動作の最適化を行う)ことを主眼に置きます。
 フットバッグの動きをある程度効率的に行わないと、どんなに持久力を身に着けてもすぐに練習を続けられなくなってしまうからです。これを言い換えると、専門的体力を身に着けるという事にもなります。
 またこの段階においては、単純にフットバッグを行うだけである程度持久力トレーニングとして効果も期待できます。
 ですので、まずはフットバッグのみを練習し、ある程度身体的に余裕があるなら遅いランニング等のあまり強度の高くない持久力トレーニングを行えばよいでしょう。
 練習は週4回を目安に取り組み、1回の練習時間は大体1時間30分から長くとも2時間程度を目安にスタートします。
 そして、なるべく早く1日の練習時間をある程度の質を保ったうえで、2時間からそれ以上(上限は3時間程度)できるようになることを目指します。。
 練習回数を週4回より少なくすることは非推奨ですが、どうしても疲労が抜けない場合は週3回と週4回を行ったり来たりしながら体を慣らしていきましょう。
 また、この段階で栄養補給やアクティブレストについてきちんと理解し、自分の体を回復させるために必要な行動に慣れて感覚をつかみましょう。
 安定して週4回、最低でも2時間以上の練習を行ったうえで、問題なく週4回の練習がこなせるようになれば、次の段階に移ります。

(2)第2段階~専門的な持久力トレーニングを段階的に取り入れる~
 この段階では、フットバッグだけを行う事にプラスして、専門的な持久力トレーニングに取り組み始めます。
 持久力トレーニングは、嫌気呼吸的な持久力も当然含みますし、嫌気呼吸を短い休息で断続的に反復する持久力(≒短い休息で回復する力)も含みます。
 考えられるトレーニングは100m~300m程度の短距離走、100m~200mのインターバルトレーニング、低強度のランニング(心拍数120~140程度で1時間程度)、高強度のランニング(心拍数140~160程度で30分~45分程度)等です。
 一番必要な道具が少なく、またある程度場所を問わず行えるという事で陸上の走る系のトレーニングを例に出していますが、もちろん他の方法(例えば自転車トレーニングなど)でも問題ありません。
 週4回の練習の内、フットバッグのみを行う日を2回、フットバッグ+トレーニングの日を2回が目安となるでしょうか。
 場合によってはトレーニングのみの日を設けても構いませんが、あまり推奨されることではありません。
 どうしてもフットバッグを行う場所や時間が確保できないときに、代替的に行うくらいの意識で問題ないと思われます。
 なお、週4回の練習だと2日連続で練習する日が必ずどこかにありますが、その1日目にトレーニングを入れないようにして下さい。
 特にトレーニングを取り入れた初期段階においてはかなり身体にダメージを負う事が予想されるので、翌日に休息日が無いとかなり危険です。
 また、短距離走やインターバルトレーニングは、これまで取り組んだことが無いのならかなり軽め(それでも負荷は高いですが)に行いましょう。
 回数的には、5回を目安にすればよいと思います(それでも負荷が高すぎる場合は3回に減らしても良い)。
 具体的なトレーニングの行い方は別記事である程度詳しく取り上げます。まずは持久力を鍛えるというよりも、トレーニングの行い方になれるくらいの感覚でちょうど良いくらいだと思います。
 後は自分の体と相談しながら、少しずつ量を増やしていきます。一気に数を増やすことはお勧めできません。
 例えば100mのインターバル5本になれたら、次は6本に増やしてみる、というような具合です。
 この時、フットバッグのみの練習は2時間30分~3時間、フットバッグ+トレーニングの場合合計で3時間程度(フットバッグ2時間+トレーニング1時間)というの一つの目安になるでしょう。
 そういった形で徐々に自らの持久力を高めていき、インターバルトレーニングで100mを10本あるいは200mを5本程度こなせる、ランニングにおいて30分間でキロ5分程度で走ってもそれなりに余裕がある程度まで達したら、次の段階に移って良いと思います。
 なお、この段階において自らの身体の変化に対する感覚を磨いておきましょう。
 例えば負荷の高いトレーニングを行った後に、自分の体がダメージをどれくらい負うのか、その状態ではどのような感覚になるのか。
 体の中で疲労が偏ってはいないか、偏っているとすればどのようにその疲労を抜くのか。
 体がきついと感じているのは、本当に身体的なダメージが深いのか、それとも単に苦しいトレーニングから逃げたがっているだけなのかなど等。
 それらの感覚の精度を高めなければ、今後取り組む5勤2休の練習プランで効果的な内容を行うのは難しいですし、ましてやその中で強度の高いトレーニングを行うのは至難の業です。
 トレーナーなどが居てきちんと体の状態とトレーニングの負荷を管理してくれるなら話は別ですが、それは非常に難しいと思われますので、自分でしっかりと自分の状態を精度よく判断できるようになる必要があります。

(3)第3段階~5勤2休に慣れる~
 この段階に達しているという事は、持久力を含めた体力レベルがそれなりに高い段階まで上がってきていることを示しています。5勤2休のプランに取り組める準備が整ったと考えて良いでしょう。
 以前にも述べましたが5勤2休の内訳は、2日練習して1日休み、3日練習して1日休みというペースが一つの基準となります。
 休息日の前日はフットバッグ+持久力トレーニング、それ以外の日はフットバッグのみという形が基本です。
 なお、1日の練習時間は目標としては1日2時間30分~3時間が目安ですが、移行したばかりの時期は短くすることも選択肢として有りです。それでも、2時間程度は行う必要がありますが。
 また、あまりにもつらいと感じる場合は、週4回+トレーニングのサイクルと行ったり来たりしたり、あるいは一時的に週5回でトレーニングは無しにするなどの対応も考えられます。
 5勤2休の練習プランは、自分の体をきちんと管理する意識が無いと続けられません。また、機械的に2日練習1日休み、3日練習1日休みのサイクルを繰り返せばよいというものでもありません。
 自分の体を的確に把握し、場合によっては休息日を1日増やし練習を週4回に減らしたり、あるいは練習回数を減らさないまでも強度を落としたりと柔軟な対応が必要になります。
 これは前段階で言及した自らの身体の感覚がある程度育っていないと難しいです。
 まだこのあたりの感覚が不安な人は、基本的に安全側に練習内容をシフトさせる方が無難です。
 結果的に練習内容の質が低下するだけなら自分の成長速度が多少遅くなるだけで済みますが、もしオーバートレーニングに陥いったり怪我をしたりすると、大きな停滞を生むことになります。
 それで済めばましな方で、場合によっては取り返しのつかない状態(競技継続が不可能など)に陥る可能性すらあります。
 特に一人で練習のプランニングから栄養管理まで行わなければいけない現状では、どうしても全ての面で完璧を期すというのは難しい面があります。
 殊更に、5勤2休に取り組み始めた初期においては、過剰なくらい自らの身体に注意を払いましょう。
 練習の強度については、場合によっては前段階で取り組んでいた内容から落としても構いません。
 それで5勤2休に慣れ、その上で徐々に練習とトレーニングの強度を上げてゆきましょう。

(4)第4段階~5勤2休で高い負荷の練習及びトレーニングを行う~
 第4段階です。5勤2休の内容で高い負荷の練習やトレーニングを行います。
 フットバッグの練習においては技術的な課題の方が壁になるでしょうが、トリプレス中心のシュレッドやビースト、あるいは単発のトリックでは7ADD以上の練習などが考えられるでしょう。
 持久力トレーニングにおいては300mダッシュを完全休息をはさみながら全力で5本、100mインターバルを20本あるいは200mインターバルを10本およびその組み合わせ、キロ4分~4分30秒程度のペースでのランニングを1時間(ペース変化有り)などがメニューとして考えられます。
 なお、強度が上がるだけで練習スケジュールについては前段階とほとんど同じと考えて構いません。
 更に300m走やインターバルトレーニングにおいては、個々の記録についても高いレベル(300mなら45秒以内、100mインターバルなら最後の1本を16~15秒以内、200mなら最後の1本を36~34秒以内等)にすることを意識します。
 この段階は練習時間そのものがあまり変わらないのですが、練習内容の強度が非常に上がり質の面でかなりの違いが出ます。
 また、確かに非常に高い効果が見込める練習やトレーニングを行えますが、人の身体的な限界に近づいていることを意識しなければなりません。
 ですので、自らの身体の変化に対しても最大限の注意を払う必要があります。
 非常に高い負荷の練習やトレーニングを行うという事は、それだけオーバートレーニングや障害を負う可能性が高まるという事だからです。
 また、免疫力も相応に落ちるため、病気で体調を崩す事にも注意しなければなりません。
 食事や睡眠についてもかなり注意を払う必要があり、感覚としては生活の大部分が練習やトレーニング及びそのコンディショニングを中心に回るようになります。
 様々な点でストレスのかかる生活になるので、身体の管理のみならず精神的なコンディショニングも行う必要があります。

(5)最終段階~5勤2休で練習を行いそのほぼ毎回にトレーニングを追加して行う~
 最終段階です。練習日のほぼ全てでフットバッグ+トレーニングの形となり、更にそこに高強度のトレーニングなどを取り入れます。
 時間的にはフットバッグ2時間30分+トレーニング30分~1時間やフットバッグ3時間+トレーニング30分程度となります。
 また、休日など1日時間が取れる場合には、午前3時間練習+午後3時間練習といったような2部練も必要となるでしょう。
 あくまで連続して3時間を超えるような練習を行うと質が落ちるだけで、間に長めの休息を入れたり栄養補給を行えば、2部練という形で6時間程度の練習時間を確保することは可能です。
 例えば朝9時から12時まで練習、12時から14時まで昼食と休憩、14時~17時まで練習というような具合ですね。
 その中で、もっとも強度の高い内容となる日は休息日の前日に設定します。
 疲労がある程度たまっても5勤2休を崩すことはせず、練習しながら身体を回復させるということが出来るようにならなければなりません(限度はありますが)。
 体力的な面でも技術的な面でも極めて高いレベルにあるために、本人はアクティブレストのつもりで行っている運動が、一般人から見るとガチ練にしか見えない、という事が起こり得ます。それゆえに毎日練習しているように見えるのですが、実際には休息日をはさんでいるのです。
 他のメジャーな競技ならば、アマチュアの最上位レベルから、実業団所属やプロとして活動しているレベルまでここに含まれます。それだけ幅があるという事ですね。
 もしこの段階において質の高いレベルまで到達できれば、心技体の体の面においてはほぼネックとなる事はなくなったと考えて良いでしょう。
 また、心の面においても相当なレベルに達しているはずです。なぜなら、心の面でも高いレベルに達しないと苦しい練習をこなせないからです。
 ここまで高い体力レベルにあるならば、技術的な進歩も相当な速度で進むことが期待されます。
 但し、第4段階以上に高い負荷がかかるため、更なる注意を必要とします。栄養学、運動学、生理学、体力学等の運動理論についての知識もある程度欲しい所です。
 また、この段階になると単に自らの身体を鍛えるという考えだけでは不足で、精神面での成長も重要になってきます。
 可能であればハートレートモニター(心拍数計測器)を始めとした、自らの運動を客観的に測ることのできるデバイスを併用した方が、より効果の高い練習を行う助けとなりますし、自らの感覚の精度を高めるのにも役に立ちます。
 これについてはいずれ別記事で。

 ここまで練習計画のプランニングについてみてきました。これ以降は、負荷の種類や練習の量と質についての考え方などについても説明していきたいと思っています。

3-3 回復を考慮したプランニング

 ここまで練習のプランニングについて簡単に説明してきました。
 ここで、「練習回数は5勤2休がよいのか、なら早速取り組もう!」と思った人はちょっと待ってください。あなたは、その練習プランを実行できる下地があるでしょうか。
 5勤2休で強度の高い練習やトレーニングも行うプランは、今まで競技者として練習やトレーニングに取り組んだことのない人が、いきなり取り組めるものではありません。
 一応1~2週間位なら何とかなるかもしれませんが、それを継続するのは非常に難しいはずです。
 それは持久力を含めた体力が低い事も然ることながら、自らの身体を回復させる力(以降回復力と言います)がまだ発達していないからです。


 以前の記事で、身体が回復しきってないときに高い負荷を加えてしまうと、オーバートレーニングになってしまうと述べました。
 そして、普段大して負荷の高い練習やトレーニングを行ってこなかった人が、いきなり上記のようなプランで練習したらオーバートレーニングまっしぐらです。
 実は最初に持久力を鍛えることを優先する方が良いと書いたのは、この回復力を高める事に大きく寄与するからでもあります。
 つまり、持久力を鍛えることが日々の練習の質と量を確保するのに必要なだけではなく、次の練習までに自らの身体を回復させるのにも必要だという事です。
 また、持久力をはじめとした一般的体力(回復力も含む)は、漸進的な成長しかしません。技術的な要素も大きい専門的体力は、きっかけがあったりコツをつかんだりすると一気に変化することもありますが、一般的体力はそうでは無いという事です。
 その代わり、やった分だけほぼ確実に結果が返ってくるものでもあるので、日々の積み重ねが大切になります。
 つまりは、自分の体力を把握したうえで、しっかりと回復できるペースで練習計画を立て、段階を踏んでステップアップしていかなければならないのです。

 回復力については練習していくうえで自然と高まっていくため、あまり深く考えない人もいるようですが、非常に大切な視点です。
 オーバートレーニングに陥ったり、急性・慢性を問わず怪我をしてしまうと、練習が大幅に滞り体力が低下するだけでなく、技術の退行も起こるからです。
 こういった視点から管理してくれる指導者やトレーナーを付けることが現実的に不可能なフットバッグでは、自分で管理せざるを得ません。
 ですので、自らの身体の管理については「過剰なくらいでちょうど良い」くらいに注意した方が良いでしょう。

 競技者としての練習を行うためには、まずはきちんとした下準備が必要だという事です。
 次回は、これまでの内容をまとめながら、更に具体的な練習のプランニングについて書きたいと思います。

3-2 休息の重要性

 休息は当然の話ですが、自分の体が受けたダメージを回復させ更にパフォーマンスを上昇させるという意味で、極めて重要です。特に体力については、休息時に成長していると言っても過言ではありません。
 その為にはどうすればよいかという事ですが、3つポイントがあります。
 適切な栄養を取る、適切な睡眠をとる、休息日に非常に軽めの運動をするの3つです。 

1.栄養について
 栄養については日々バランスの良い食事を行う事が非常に大切ですが、負荷の高い練習をした日と休息日には優先的に補給する必要がある栄養素が有ります。
 それは糖質とタンパク質です。また、この二つが重要ではありますが、糖質が最優先です。
 強度の高い練習をすれば、当然体内の糖(グリコーゲン)は大量に消費された状態です。
 回復のみならず生命維持活動において糖を使用しないという事はあり得ない為、なるべく早く補給する必要があります。
 これは、特に強度の高い練習を行った当日は、意識して摂ることをお勧めします。
 とは言え、栄養補給は基本的に食事からの摂取が望まれること、フットバッグにおける身体に対する負荷を考えれば、サプリメントの使用まではあまり考えなくてもよいでしょう。
 あくまで、通常の食事では疲労が抜けにくいと感じる、あるいは回復速度が追い付かずその理由が栄養面にあると感じる場合に、試しに摂ってみる程度に考えて良いでしょう。
 サプリメントとしては、市販のプロテインを取れば十分でしょう。あれには糖質も含まれている上に、吸収速度もかなり早いですし。
 また、サプリメントにおいて、科学的に効果が一定以上認められているものはプロテイン位しかないという事情もあります。
 そのあたりも含め、プロテインについては別記事でまたある程度詳しく取り上げます。ざっくりと推奨基準を挙げると、ホエイプロテインでタンパク質の含有量が70%以上あれば十分です。後は価格や味を考慮し、継続して使用できるものを選ぶこと。
 基本的に人の体の発達は、その大半がトレーニング内容によって決定され、ボディビルのような極端な筋肥大および維持を目的にしない限り、サプリメント等の摂取する栄養素の影響度は極めて限定的です。
 なので、吸収速度がどうとか求める効果に合わせたプロテイン選びとかは考えなくても問題ありません。
 また、あくまでサプリメントはその名の通り補助なので、通常の食事をおろそかにしないように注意しましょう。
 なお、糖質についてはすぐに枯渇するため補給する事が重要ですが、あまり溜め込めないという事に注意して下さい。
 糖質がエネルギー源となるからと言って、たくさんとってもグリコーゲンの貯蔵量は基本的に増えません。余剰となった分が脂肪に変わるだけです。
 ですので、確かに失ったグリコーゲンを補うための糖質の補給は重要ですが、大量にとれば良いってものでもありません。
 ある程度価格の安いプロテイン(但しタンパク質の含有割合が70%以上の物に限る)に含まれているもので約4g程度ありますが、その後さして時間をおかずに食事を摂るならばその程度でも十分です。
 運動後に食事まで時間があるのならば、おにぎり1個程度(炭水化物換算40g程度)が上限でしょうか。スポーツドリンクの500mlペットボトル1本分でも、概ね似たような量になります。

2.睡眠について
 基本的に身体のダメージを回復する主な時間帯は、睡眠時という事になります。
 その為、どんなに質の良い練習を行い食事をきちんととったとしても、睡眠の量と質が悪ければ回復は遅れます。それも、結構致命的に。
 また、睡眠において最優先は量の確保だと言われています。どんなに質が良かろうが、それで睡眠時間を短縮することは原則としてできません。
 例えば8時間の睡眠が必要な人が、質が悪く9時間必要になるあるいは追加で昼寝が必要になるという事はあっても、質の良い睡眠がとれたから7時間で良いなんて事は起こらないという事です。
 必要な睡眠時間は人によってある程度幅があると言ますが、ショートスリーパーやロングスリーパーと言われる特殊な体質でない限り、基本的には概ね7~8時間の間に収まるようです。
 この各個人における最適な睡眠時間は、訓練によって短くする事は出来ないと言われています。
 短時間睡眠を繰り返すと、人によってはその状態に慣れてしまい、主観的に問題ないように感じる場合も有る様です。しかし、それは決して適応したわけではなく、ダメージ自体は蓄積していくと言われています。
 もちろん最適な睡眠時間は先にも述べた通り人それぞれですが、大半の人は7~8時間の間程度に収まると言われている事を考えれば、7~8時間程度の睡眠を心掛けなければならないでしょう。
 もちろん日によって多少の変動はあったとしても、最適睡眠時間から30分以内の誤差にとどめないと、負荷の高い練習を続けることは厳しいはずです。
 また、どれだけ削ってもこれ以下にしてはならないという最低ラインとして、6時間の睡眠時間を切ることが無いようにしてください。それ以下になってしまうと、身体に及ぼす悪影響が、一般的な生活を送る人であっても甚大になると言われているからです。
 ましてや強度の高い練習を行う人にとっては猶更危険なので、どんな都合が悪かろうが強制的かつ即時に6時間は確保しましょう。
 もしそれが無理だというならば、競技者として生活を送ることを諦めるよう勧めます。
 これは、「絶対に譲ってはいけないラインの一つ」であり、優先順位で言えば最優先にすべき項目です。どれだけ練習日を確保するとか、練習内容をどうするという様なことは、この適切な睡眠時間を確保した後の話なのです。
 それすら確保できないというのは、「物事に優先順位を付けて判断する事が出来ない」か、「競技者として生活することが許される立場にない」かどちらかでしょう。
 どちらにせよ、その様な状態で競技者として高みを目指そうとしても、自分や周囲に不幸しか生まないと思います。怪我をしたりオーバートレーニングに陥る、あるいは精神的な不調をきたす可能性もぐっと高くなりますしね。
 因みに、睡眠時間が長くなってしまう方の誤差は心配する必要はありません。なぜなら、人は最適な睡眠時間を超えて眠ることはできないからです。これが、いわゆる寝だめが出来ないと言われている理由です。
 仮に半日とか眠ってしまうという場合は、ロングスリーパーである等の体質的なものか、睡眠時無呼吸症候群等の睡眠障害により実はちゃんと眠れていないか、睡眠不足によって睡眠負債を抱えており、その解消に充てられているかのいずれかです。
 体質や睡眠障害があるのでもない限り、休みは昼まで寝てしまうとか、いつでもどこでも眠ることが出来るという状態は、典型的な寝不足の状態だと言われていますので、心当たりがある方は気を付けた方が良いでしょう。

3.軽めの運動をする
 これは結構よく言われることなので知ってる人も多いかと思いますが、疲労を取るためには完全に休養を取るよりも軽い運動をした方が良いと言われています。
 いわゆるアクティブレストというやつですね。
 軽い運動というのがピンとこない人が居るかもしれませんが、要はとても運動強度の低い有酸素運動を15分から30分程度行いましょうという事です。
 軽い強度というのは心拍数が100~120程度、目安としては普通に会話しても問題ない程度に軽い運動という事になるでしょうか。
 一番分かりやすい例としてはとてもスピードの遅いランニングだと思います。
 なお、ランニングなら速度の変化を極力行わず一定のスピードで走り、勾配があまりないコースを走りましょう。
 あるいはウォーキングでも構わないと思われます。
 特に体力が低い場合には軽いランニングすら結構な負荷になる事もありますので、その場合にウォーキングは非常に適した運動となるでしょう。
 練習回数について5勤2休が良いとは言っても、その2休は全く体を動かさないという日ではないという事です。

3-1 練習内容の考え方と練習回数

 さて、これまで代謝の仕組みの説明を踏まえて持久力について色々と説明してきました。
 この章ではより具体的に、実際にどのようにして練習計画を立てていくのか、という点について順に解説していきます。

1.練習は週に何回すべきか
 この点については、人によっていろいろと意見があるように思います。
 練習は毎日するべきだ、いや休息日を設けなければならない、練習の量よりも質を重視すべきだなど等。
 この最後の練習の量と質については個人的にかなり思うところがあるので、後に単独の記事で詳しく触れます。
 まず、競技者としてパフォーマンスを高めるために、確保すべき必須の練習回数から考えましょう。
 結論から先に言うと、週に4回の練習は最低限確保しましょう。
 もし週に3回以下の練習しか確保できないなら、競技者としてのレベルを獲得するのは非常に難しい事を覚悟すべきです。
 まあ、週4回でもかなり厳しいものが有りますが、週4回と週3回には非常に大きな差が存在します。
 これは、練習プランを立てるとすぐにわかります。
 週3回で均等に練習を配置(一般的にその方が効果的)すると、「連続して練習する日がなく、2日空く日が1回ある」プランになります。
 これが週4回になると、「練習しない日が2日以上連続して存在せず、週に1回は2日連続して練習する日がある」プランになります。
 この練習しない日が2日以上連続しないという点が、技術習得と持久力を含めた体力の向上の両面から見て非常に大きな差となります。
 基本的に、人が技術を身に着けるにしろ体力を向上させるにしろ、継続的な反復以外の方法はありません。そしてそれは、一定以上の頻度を保つ方がとても効果的です。
 よくフィットネスやダイエットにおける運動処方において、週に一回重い練習(例えば2~3時間程度のランニング等)を行うよりも、同じ時間を複数回に分散させた方が良いとされていると思いますが、同じ考え方に基づきます。
 特に競技レベルでのパフォーマンス向上を考えたときに、やはり二日休息日が連続する、ましてやそれが毎週あるというのはかなり罪が重いのです。
 週に1回、月に4回しか変わらないじゃないか、と思う人もいるかもしれませんが、この差は単純にその回数以上の差となって現れます。
 イメージとしては、週4回もしくはそれ以上の練習を行っている場合は常に前進している、週3回以下の練習であればトータルでは前進しつつも後退が含まれるという感じです。
 因みに週2回になるとかなり維持に近くなりますし、週1回になってしまうと維持が最大の成果になってしまうと言えるでしょう。
 

2.ならば毎日練習すればよいか
 先ほどの事を踏まえた上で、練習の量のみを重視すると毎日練習することが最も効果的と考えてしまう人もいると思いますし、実際にこの考え方のスポーツ指導者もまだそれなりに存在するように思います。
 しかし、人の体の仕組みを考えた時に、特に体力向上の観点から毎日練習するのはあまり良くないという事が分かります。
 人の体力が向上するのは、超回復の原理もしくは負荷に対する適応の概念に基づきます。
 人の体に負荷をかけるとダメージを受け一時的に体力が低下しますが、そのダメージを回復する際にダメージを受ける前よりも高い水準まで回復させるというのが超回復の原理です。
 そして、この高い水準まで回復したときに次の練習を行うようにすれば、体力が向上していくという訳です。
 この超回復はそれなりの休息が必要であり、かかる時間は体へのダメージ(負荷の高さ)に応じて変化します。
 負荷に対する適応に関しても、負荷をかけたその時にすぐに体力等が向上する訳ではなく、やはり日々の休息の中(特に睡眠中)にパフォーマンスが向上します。
 あまり負荷が高くない内容なら、適切な栄養を摂った上で一晩寝れば大体回復しますが、高い負荷がかかった場合は2日程度の休息を必要とする(練習の合間に丸1日の休息日が必要になる)ことが多いですし、場合によっては更に休みが必要になったりもします。
 もし高い負荷をかけた後に、元の水準に戻らない状態でさらに負荷をかけると、体力はむしろ低下していきます。
 この状態が続くと、慢性的な疲労によりパフォーマンスが低下するのみならず、様々な障害が発生しやすくなってしまいます。いわゆるオーバートレーニングというやつですね。
 そういった訳で、毎日練習すると休息日が無いため、どうしても高い負荷の練習は行えないことになります。
 そうなると、どんなに量は確保していると言っても質で著しく劣るため、結局は非効率な練習になってしまうでしょう。
 毎日練習していると凄く頑張っているように聞こえるかもしれませんが、実際の所は毎日こなせるような練習しかできない(≒割とぬるい練習である)という事です。

(3)理想の練習回数
 ここまで説明してきたことを踏まえて、じゃあ何回の練習が理想なのでしょうか。
 まだ議論の余地はあると思いますが、現状では「5勤2休」が良いのではないかとされています。週に5日の練習およびトレーニング、2日が休息日という事です。仮に増やすとしても6回まで、毎日はタブーです。
 週5日の練習の場合で考えて、大抵の場合は均等配置にするので、2日練習して1日休み、3日練習して1日休みという事ですね。もっとも、このあたりはプランの立て方によって色々と変化しますが。
 そして、休息日前日の練習は身体的に負荷の高い練習を行い体力向上を主目的とし、それ以外の日は体力向上よりも技術習得に重きを置くとよいでしょう。
 こうすると、技術習得と体力向上の両面から練習量とその質を確保しやすく、効率的な練習となりやすいです。
 目安として、土日連続して練習(日曜に負荷の高い練習)、月曜休み、火水木連続して練習(木曜に負荷の高い練習)、金曜休みという事になるでしょうか。
 これは、一般に土日が休みの人が多く時間を取りやすいため、2日連続でも平日の3日連続に匹敵するような量を確保しやすいためです。
 ですので、土日より平日に時間が取りやすい人はこの限りではありません。
 また、休息の取り方はその人の回復する能力によって変わるので、機械的に上記のスケジュールで行えばよいというものでもありません。
 特に非常に負荷の高い練習を取り入れた当初などは、1日の休息日だけでは回復しきれないことも十分考えられます。
 その場合は休息日をもう1日取ったり、練習するにしても内容を軽めにするなどの調整を行いましょう。規律は大事ですが、柔軟性を持たせることもまた重要なのです。

2-2 脂肪を活かす

 今回は有機呼吸系の最後のテーマ、脂肪の燃焼についてです。
 いかに好気呼吸が効率が良いと言っても、使用するエネルギー源がグルコースだけではすぐに体内に貯蔵しているグリコーゲンが尽きてしまいます。
 グリコーゲンの貯蔵量はトレーニングなどによって増やすことがほとんどできません。
 グリコーゲンは肝臓、血液中、筋肉などに存在しますが、それぞれに存在する限界があるためです。
 筋肉量が増えればその分貯蔵量は増えますが、当然消費量も多くなりますのであまり持久力に効果的に働くわけではありません。
 一時期グリコーゲンローディングという手法により通常時よりグリコーゲンを多くする手法がもてはやされましたが、メインストリームとはなっていないと思います。
 その理由は、大きくはコンディショニングや食事量のコントロールがきわめてシビアであった事で、その割にはパフォーマンスへの寄与度が限定的であった為、多くのケースでそこまで推奨されるには至っていません。
 しかしながら、先にも述べた通りグリコーゲンの貯蔵には限りがあるため、それならば別のエネルギー源が必要となるという事で、脂肪をエネルギー源とした好気呼吸の能力が重要になってくるわけです。

 因みに、貯蔵されているグリコーゲンのみでどの程度運動できるかというと、概ねフルマラソンを走り切れるかどうか(ただしトップレベルの話)という程度の様です。
 こう考えると、一般的な競技レベルだとそこまで問題ない様に感じるかもしれませんが、実はそうでもありません。
 そもそもグリコーゲンが空になるほど運動するという事は極めて身体にとって危険なことですし、リカバリーも大変です。
 また、確かに2時間以上を高速度で走り続けるというレベルの運動強度はそうそうないかもしれませんが、とは言え一日の運動がそれなりの強度で3時間程度に及ぶという事は普通に起こりえます。これをグリコーゲンのエネルギーだけで賄うというのは、なかなかに厳しいものがあるのです。
 ですので、グリコーゲンの消耗を抑えられれば抑えられるほど、日々の練習やトレーニングに余裕が生まれ、また高頻度で繰り返すことができるようになります。

 人はグリコーゲンを利用した好気呼吸が優位になりやすく、脂肪を利用する能力は意識的に鍛えないといけません。
 もっとも、脂肪を利用する好気呼吸をどんなに鍛えたとしても、グリコーゲンを利用した好気呼吸より優位になる事は無いようです。
 私が大学で学んでいた頃は、最も脂肪を利用している状態でも全体の50%程度がせいぜいだと言われていました。

 脂肪を利用した好気呼吸の能力を鍛えるためには、その特性について知っておく必要があります。
 それは、人は常にグルコースを利用した好気呼吸を使いたがるという事、そして代謝が安定しないと脂肪を利用した好気呼吸の比率は上がっていかないという事です。
 その為、以下の2点を意識すると良いでしょう。

(1)普段の練習時に砂糖、ブドウ糖液等、果糖等の等類が入った飲料(スポーツドリンクなど)を飲まない

 これは人がグリコーゲンを利用したがるという性質を考慮してのことです。
 通常人の代謝は運動し始めは主にグリコーゲンが使用され、代謝が安定すると脂肪を利用する比率が上がっていきます。
 しかし、そうやって脂肪の代謝比率が高まっても、そこで砂糖やブドウ糖液糖等が多量に含まれる飲料を取ると、すぐに血糖値が上がって糖を利用する代謝比率が高まってしまい、脂肪があまり使われなくなってしまいます。
 それが最高のパフォーマンスを発揮しなければならない日(試合等)であればそれでもいいんですが、持久力を鍛えるという観点からすると平常の練習時に使用するのは好ましくありません。
 スポーツドリンクというといかにも運動時の水分補給に最適というような宣伝がされ、またそういうイメージを持っている人も多いと思いますが、状況によっては全く適した飲料とは言えない(むしろ害も多い)為、使用する際は本当にそれが必要な状況かを適切に判断しましょう。
 また、クエン酸入りの飲料も同様に好ましくないので注意です(結局糖利用の代謝回路が使われるため)。
 多量に汗をかく場合において、運動時に適切なミネラル補給が重要になるケースもありますが、殆どのケースにおいて日頃の食生活がきちんとしていれば、単純に水を飲むだけで問題ないかと思われます。
 基本的にただの水(ミネラルウォーターを含む)を摂るだけで問題ありませんし、むしろ日々の練習は可能な限りそうあるべきでもあります。

(2)食前あるいは食間(空腹時)に強度の低い運動(有酸素運動)を長時間行う

 これは、体内のグリコーゲンが減少しているときにあえて運動を行う事で、脂肪の使用する能力を高めようという手法です。
 但し、気を付けなければいけないのは、絶対に強度の高い運動(嫌気呼吸優位の運動)を行ってはいけないという事です。
 常に有酸素運動が優位な運動を行う事が絶対条件で、目安としては心拍数130~140位の運動を心がけるとよいでしょう。
 有酸素運動的な持久力が高い人は心拍数160くらいまでは大丈夫でしょうが、一般的な人であれば140くらいが無難だと思います。
 尚この時に、なるべくペース変化を付けず一定の速度で走るようにしましょう。また、アップダウンの多いコースも避けるべきです。
 空腹時に糖を多量に必要とする運動(≒嫌気呼吸優位の運動)を行う事はかなりリスクが高く、場合によってはトレーニング効果を得るどころか逆効果になってしまう事すらあります(これはまた別記事で書きます)。
 ちょっと軽いかなというくらいの強度の運動を、30分から1時間程度行えば十分だと思われます。

2-1-3 好気呼吸的な持久力について

 さて今回は好気呼吸的な持久力の話です。一般的な方が持久力と言われた場合、ほぼこの持久力を想像するでしょう。
 今回も、好気呼吸によるエネルギー(ATP)生産という観点から考えます。
大事な能力は二つあり、「酸素を体内(細胞内)に取り込む能力」と「酸素を用いてATPを生産する能力」に分けて考えられます。

(1)酸素を取り込む能力
 こちらは読んで字のごとくですが、好気呼吸によりエネルギーを生産したいならば、各細胞にきちんと酸素が供給されなければなりません。
 この能力が低いと細胞に酸素が供給されず、低い運動強度ですらすぐに嫌気呼吸優位になってしまいます。
 分かりやすい症状としては、すぐに「息が切れる」という事でしょうか。ですので、この能力を鍛えることを心肺機能の強化と言う事も良くあります。
 これは更に分けると「肺が酸素を取り込む能力」と「取り込んだ酸素を各細胞に運搬する能力」に分けられます。
 前者については肺機能に高い負荷をかけることで鍛えることが出来ます。インターバルトレーニングはその代表と言えるでしょう。
  ランニングについてある程度学んだ人であれば、VO2MAXを鍛えるという言葉を知っているでしょうが、それともほぼ同じ意味となります。
 酸素を運搬する能力については、心臓の能力を鍛えることと血液による酸素の運搬能力そのものを鍛える事が挙げられます。
 心臓の能力については肺の能力を鍛えることとほぼ一緒のトレーニング内容となり、インターバルトレーニングなどで鍛える事が出来ます。
 もっとも、インターバルトレーニングと言っても多くの種類がありますが、フットバッグに適しているものとして一例を挙げると、200mのインターバルでしょう。
 やり方としては、ある程度高強度(心拍数が160を超える強度)で200mを走り、2分~2分30秒程度休息後また200mを高強度で走る、というルーティーンを5~10回程度行います。休息は止まって休んでもいいですし、200mをゆっくりジョグするのも良いでしょう。
 フットバッグそのものでインターバルトレーニングを行いたい場合は、高強度のシュレッドを30~40コンタクト程度、20秒~30秒程度休息、高強度のシュレッドといったルーティーンを5~10セット程度繰り返してみてください。
 フットバッグで行う場合、どうしても200m走ほどには強度を上げられないので、その分休息を短くすることで心肺に負荷をかけます。
 血液による酸素運搬能力について鍛えることはかなり難しいです。一応、マラソン等の長距離種目の選手が行う高地トレーニングは、その代表と言えるでしょうか。
 高地トレーニングはあえて酸素が薄い状況下でトレーニングすることで、血液中に含まれる赤血球の酸素と結びつく能力を高めるというのが、一般にその効果の根拠となっています。
 但し、先にも言った通り一般的なトレーニング手法としてあまり現実的でない、それこそ数週間単位で高地トレーニング合宿に行くとかしないと無理なので、心肺機能を鍛える方法をトレーニングの中心に据えることとなるでしょう。

(2)酸素を用いてエネルギーを生産する能力
 どんなに酸素が上手く供給されても、それを用いてエネルギーを生産する能力がおいつかなければ嫌気呼吸優位に傾いてしまいます。そうなると結局は長い運動が続けることが不可能になります。
 こちらの場合症状としては、フットバッグなら「足が動かなくなる」感覚が一般的でしょうか。
 この能力は好気呼吸がミトコンドリアで行われることから、ミトコンドリアの能力などと言ったりもしますね(あまり一般的ではないですが)。
 こちらの能力は、一定の強度の運動を長時間行う事で鍛える事が出来ます。
一般的は、心拍数140~160程度の運動を少なくとも30分以上、なるべくなら1時間あるいはそれ以上行う事が良いとされています。
 フットバッグで同様の練習を行う場合は、技の難易度や強度を落として、コンタクト数を増やす練習が必要となります。まずは100コンタクトを目安に、連続して蹴ることを目指してみると良いでしょう。
 もちろんノードロップが理想ではありますが、ドロップしても問題ありません。その代わりに、息をつかずに拾い上げ、シュレッドを継続してください。
 とは言え、フットバッグのシュレッドでは、どれだけ強度を落としてもせいぜい2~3分程度が限界と言え、これは好気呼吸系の運動においては、最も高い強度に属します。
 ですが、これより強度を落として長時間というのは難しいので、やはりフットバッグ以外で長距離・長時間のランニングを取り入れることが、最も効率が良いと思われます。

 さて、好気呼吸によるエネルギー生産という観点から持久力について考えてきました。
 ここで注意したいのは、インターバルトレーニングを行うことは確かに心肺系を鍛えることをメインとしますが、ではエネルギー生産能力のトレーニングにならないかと言われればそんなことは無いです。
 また、低い強度で長距離・長時間走るトレーニングが、心肺系のトレーニングにならないという事も、同様にありません。あくまでどちらに比重があるかという話です。
 ですが上記のことを考えると、インターバルトレーニングのような心肺機能に負荷をかけるトレーニングだけでも、ランニングのような長距離走だけでも十分でないことが分かります。
 どちらも重要なトレーニングであり、両方をバランスよく行っていかなければならないでしょう。
 しかしながら、フットバッグの練習そのものがそれなりに強度が高く、どちらかと言えばインターバル的なトレーニング内容を多く含むので、まずはどちらか一方を取り入れるとなれば、艇~中強度で長距離・長時間のランニングを取り入れた方が効果が出やすいと思われます。

 おそらく、フットバッグを行うだけでは、特に上級者においては十分な負荷を得られなくなることが多くなるでしょう。
 心肺機能に負荷をかけるという面では、単純に強度が不足します。
 そのことを考慮した内容の練習を行えば負荷をかけることは可能ですが、そういった練習だけではなく、技術習得をメインとした練習も行わなければなりません。
 特にフットバッグは技術要素が占める割合が非常に多い競技特性なので、身体的な負荷の高い練習ばかりを多くするわけにはいきません。
 また、酸素を用いてエネルギーを生産する能力については、フットバッグ自体がペース変化が激しくまた長時間一定の強度で行うような運動でもない(嫌気呼吸優位に傾きやすい)ことから、こちらの面で鍛えることはあまり現実的ではありません。
 もちろん一日の練習が1~2時間となればそれなりに好気呼吸系の持久力は鍛えられますが、限界があるのです。
 フットバッグを始めた段階、要は各種体力が低い状態においてはフットバッグだけを行うことで十分に鍛えられますが、ある程度競技力が向上してきた段階においては、フットバッグのみで持久力を鍛えることはかなり難しくなります。
 そのため、やはりフットバッグ以外の運動を取り入れることが、総合的に見れば持久力を含めた体力の向上には効率が良く、競技力を高めるという点でも有効だと言えます。

※注意すべきこと
 確かに自分が取り組む競技以外のトレーニングを取り入れることは、やり方さえ間違えなければ非常に高い効果を生みます。
 しかしながら、当然そこには守らなければならない大原則があり、「自分の競技そのもの(ここではフットバッグ)の練習時間を、それ以外の運動系によるトレーニング時間が超えてはならない」という事です。
 基本的に一般的体力を鍛えるために取り入れるトレーニングは、やればやるだけ確実に結果が返ってくることが多く、それが楽しくて、気づけば自分の専門種目の練習以上にトレーニングに時間を費やしてしまうという事態に陥る人が少なくありません。
 あくまで、何のためにトレーニングをしているかという目的(自分の専門種目のレベルを高める為)を明確にし、その手段であるはずのトレーニングが目的となってしまわないように気を付ける必要があります。

2-1-2 乳酸系の持久力について

 前回からの続きです。
 これまで述べてきた内容を踏まえた上で、各種持久力を身に付ける為にはどうしたらよいでしょうか。


 まず、乳酸系の持久力の話からしましょう。
 乳酸系の運動については長くとも30~40秒程度と書きましたが、これは厳しいトレーニングを積んだ人の話で、そうでない人は20秒持てばよい方です。200mを最後までスピードを維持して走りきれない感じですね。何なら、100mであっても最後の方は大幅にスピードが落ちるかもしれません。
 つまり、乳酸系の運動においても、持久力はあるわけです。人によってはスピード(短距離的スピード)の持久力と呼んだりもします。
 先の説明にのっとって言えば、「解糖系やATP-CP系でエネルギーを生産できる能力の高さ」と言う事が出来ます。
 これを鍛えるためには、「40秒程度全力で動く」ことを目指してトレーニングを繰り返すしかありません。フットバッグで言えば、概ね40コンタクトで激しめ(例えば全てシャッフルなど)のシュレッドをするのが該当するかと思われます。
 ですが、ここでフットバッグの厄介な問題が顔を出します。
 それは、身体的な負荷の強度を上げようすればするほど、技術的なレベルの高さが要求されるという事です。理由は単純で、身体的な負荷を高めるためには全力の動作を続ける必要があり、それは可能な限りドロップをしてはいけないことを意味するからです。
 鍛えたい能力を考えれば、せいぜい1ドロップか多くても2ドロップ程度で、それ以上になるとどうしても身体にかかる負荷が落ちてしまいます。かと言って、じゃあノードロップで行ける範囲でとやってしまうと、運動強度そのものが上がりません。
 この要求は技術的にかなり厳しく、それこそワールズ基準ですら上位層並の技術の高さが求められてしまいます。しかしながら、では先に技術レベルを高めることに専念する方が良いかと言えば、それも問題があります。
 精神力、技術力、体力のいわゆる心技体を鍛える際に、何を優先した方が良いかと言えば圧倒的に体力が先だと言われています。理由としては、やればやるだけ確実に効果が上がるからです。
 また、技術力を鍛える際にも体力の素地があった方が習得が早くなりますし、上記のような技術力を身に着けるには時間がかかりすぎてしまいます。体力的な素地が鍛えられていないなら猶更なので、様々な点からみてもトレーニング効率が良くありません。
 
 その為に、フットバッグ以外のトレーニングの追加を検討する方が現実的でしょう。
 例を挙げると、200m走や300m走、縄跳びで二重跳びを連続50回程度といったあたりでしょうか。
 運動強度的に200mでもかなり厳しい(100mたどり着く前に急激にスピードが落ちる)人は、100mから開始しても良いと思います。
 因みに、400mの世界記録ですら40秒を超えてしまうので、300m全力で走るという距離がトレーニング上限として考えて良いでしょう。と言いますか、300mを40秒で走りきれるのなら相当に速い部類に入ります。
 また、たとえシャッフルで40コンタクトノードロップのような練習がこなせる上級者でも、強度として例えば300m全力走に近づけることはかなり難しいので、やはり上級者でもフットバッグ以外のトレーニングとして取り組むことを考えた方が良いでしょう。
 因みにこのフットバッグでのトレーニングを行う時、ドロップしても止まってしまってはいけません。即座に拾い40コンタクトまで何としてでもたどり着きましょう。
勿論ノーミスが理想ですが、ミスの度に止まって休憩しててはトレーニングになりません。
 その代わりに、セット間の休息は長めに取り、次に開始する際に十分回復した状態で取り組めるようにします。これは、200mや300m等のトレーニングでも考え方は同じです。

 好気呼吸的な持久力についての解説もそれなりに長くなるので、更に次回の記事に続きます。