今回は有機呼吸系の最後のテーマ、脂肪の燃焼についてです。
いかに好気呼吸が効率が良いと言っても、使用するエネルギー源がグルコースだけではすぐに体内に貯蔵しているグリコーゲンが尽きてしまいます。
グリコーゲンの貯蔵量はトレーニングなどによって増やすことがほとんどできません。
グリコーゲンは肝臓、血液中、筋肉などに存在しますが、それぞれに存在する限界があるためです。
筋肉量が増えればその分貯蔵量は増えますが、当然消費量も多くなりますのであまり持久力に効果的に働くわけではありません。
一時期グリコーゲンローディングという手法により通常時よりグリコーゲンを多くする手法がもてはやされましたが、メインストリームとはなっていないと思います。
その理由は、大きくはコンディショニングや食事量のコントロールがきわめてシビアであった事で、その割にはパフォーマンスへの寄与度が限定的であった為、多くのケースでそこまで推奨されるには至っていません。
しかしながら、先にも述べた通りグリコーゲンの貯蔵には限りがあるため、それならば別のエネルギー源が必要となるという事で、脂肪をエネルギー源とした好気呼吸の能力が重要になってくるわけです。
因みに、貯蔵されているグリコーゲンのみでどの程度運動できるかというと、概ねフルマラソンを走り切れるかどうか(ただしトップレベルの話)という程度の様です。
こう考えると、一般的な競技レベルだとそこまで問題ない様に感じるかもしれませんが、実はそうでもありません。
そもそもグリコーゲンが空になるほど運動するという事は極めて身体にとって危険なことですし、リカバリーも大変です。
また、確かに2時間以上を高速度で走り続けるというレベルの運動強度はそうそうないかもしれませんが、とは言え一日の運動がそれなりの強度で3時間程度に及ぶという事は普通に起こりえます。これをグリコーゲンのエネルギーだけで賄うというのは、なかなかに厳しいものがあるのです。
ですので、グリコーゲンの消耗を抑えられれば抑えられるほど、日々の練習やトレーニングに余裕が生まれ、また高頻度で繰り返すことができるようになります。
人はグリコーゲンを利用した好気呼吸が優位になりやすく、脂肪を利用する能力は意識的に鍛えないといけません。
もっとも、脂肪を利用する好気呼吸をどんなに鍛えたとしても、グリコーゲンを利用した好気呼吸より優位になる事は無いようです。
私が大学で学んでいた頃は、最も脂肪を利用している状態でも全体の50%程度がせいぜいだと言われていました。
脂肪を利用した好気呼吸の能力を鍛えるためには、その特性について知っておく必要があります。
それは、人は常にグルコースを利用した好気呼吸を使いたがるという事、そして代謝が安定しないと脂肪を利用した好気呼吸の比率は上がっていかないという事です。
その為、以下の2点を意識すると良いでしょう。
(1)普段の練習時に砂糖、ブドウ糖液等、果糖等の等類が入った飲料(スポーツドリンクなど)を飲まない
これは人がグリコーゲンを利用したがるという性質を考慮してのことです。
通常人の代謝は運動し始めは主にグリコーゲンが使用され、代謝が安定すると脂肪を利用する比率が上がっていきます。
しかし、そうやって脂肪の代謝比率が高まっても、そこで砂糖やブドウ糖液糖等が多量に含まれる飲料を取ると、すぐに血糖値が上がって糖を利用する代謝比率が高まってしまい、脂肪があまり使われなくなってしまいます。
それが最高のパフォーマンスを発揮しなければならない日(試合等)であればそれでもいいんですが、持久力を鍛えるという観点からすると平常の練習時に使用するのは好ましくありません。
スポーツドリンクというといかにも運動時の水分補給に最適というような宣伝がされ、またそういうイメージを持っている人も多いと思いますが、状況によっては全く適した飲料とは言えない(むしろ害も多い)為、使用する際は本当にそれが必要な状況かを適切に判断しましょう。
また、クエン酸入りの飲料も同様に好ましくないので注意です(結局糖利用の代謝回路が使われるため)。
多量に汗をかく場合において、運動時に適切なミネラル補給が重要になるケースもありますが、殆どのケースにおいて日頃の食生活がきちんとしていれば、単純に水を飲むだけで問題ないかと思われます。
基本的にただの水(ミネラルウォーターを含む)を摂るだけで問題ありませんし、むしろ日々の練習は可能な限りそうあるべきでもあります。
(2)食前あるいは食間(空腹時)に強度の低い運動(有酸素運動)を長時間行う
これは、体内のグリコーゲンが減少しているときにあえて運動を行う事で、脂肪の使用する能力を高めようという手法です。
但し、気を付けなければいけないのは、絶対に強度の高い運動(嫌気呼吸優位の運動)を行ってはいけないという事です。
常に有酸素運動が優位な運動を行う事が絶対条件で、目安としては心拍数130~140位の運動を心がけるとよいでしょう。
有酸素運動的な持久力が高い人は心拍数160くらいまでは大丈夫でしょうが、一般的な人であれば140くらいが無難だと思います。
尚この時に、なるべくペース変化を付けず一定の速度で走るようにしましょう。また、アップダウンの多いコースも避けるべきです。
空腹時に糖を多量に必要とする運動(≒嫌気呼吸優位の運動)を行う事はかなりリスクが高く、場合によってはトレーニング効果を得るどころか逆効果になってしまう事すらあります(これはまた別記事で書きます)。
ちょっと軽いかなというくらいの強度の運動を、30分から1時間程度行えば十分だと思われます。